金足農・吉田輝星、横浜14K斬り「自分の力以上のものを、仲間が引き出してくれた」

スポーツ報知
8回1死一、二塁、逆転3ランを放った高橋(手前)をベンチ前で抱きしめる金足農・吉田(カメラ・泉 貫太)

◆第100回全国高校野球選手権記念大会第13日 ▽3回戦 金足農5―4横浜(17日・甲子園)

 みちのくのドクターKが、今度は名門・横浜斬りだ! 金足農(秋田)の150キロ右腕・吉田輝星(こうせい・3年)は、横浜(南神奈川)相手に3試合連続2ケタ奪三振となる14Kで4失点完投勝ちした。3回には自ら2ラン。味方に逆転3ランが飛び出した直後の9回には、自己最速タイの150キロを計測するなど驚異のスタミナで3者連続空振り三振締め。チームを23年ぶりの8強に導いた。18日の準々決勝では、34年ぶりの4強入りをかけて近江(滋賀)と激突する。

 白いマウスピースをむき出しにして、吉田は何度も絶叫した。1点を勝ち越した直後の9回2死。1ボール2ストライクからの161球目に、自己最速タイの150キロ。フルカウントからは146キロの直球で、3者連続空振り三振に斬った。「1点で十分という気持ちだった。3者連続三振で決めようと思った」。“有言実行”の3K締めで、3試合連続完投勝利。大粒の汗を拭い、ナインと横浜撃破の歓喜を味わった。

 “吉田劇場”で甲子園の大観衆を魅了した。2点を追う8回先頭で中前打。逆転3ランは、二塁走者として生還した。「ガッツポーズはしたけど、次をどう抑えるかを、べーラン中から考えていた」。9回先頭の4番・万波中正の勝負球は、外角のカットボール。続く内海貴斗は直球で粘られた後、ツーシームで連続三振に斬った。トップギアに入れ直して大台に乗せる余力を残しながら、多彩な変化球で巧みに料理。3試合連続で13奪三振以上を記録するのは、06年の早実・斎藤佑樹以来で、甲子園春夏33度目出場の横浜から14三振を奪ったのは、吉田が初めて。「自分の力以上のものを、仲間が引き出してくれた」と笑顔を見せた。

 秘策が奏功した。スプリットと、タテのスライダーを解禁。さらに、相手打者と球種によって、ピッチャープレートの立ち位置を変えた。ボールの見え方を変えて、打者を幻惑する狙いだった。「めったにしない。でも調子も悪かったし、プライドを捨てないと抑えられないと思った」。阪神・藤川を思わせる“火の玉ストレート”で押すだけではなく、100キロ台のカーブとの緩急も生かした。3番打者としても、2点を追う3回2死三塁で中越え2ランを放つなど、3安打2打点。高校通算7号での生還時には、試合前にナインと約束していた“敬礼ポーズ”で盛り上げた。

 チームは23年ぶりの8強入り。きょうの準々決勝では、近江(滋賀)と激突する。3戦27イニングで41三振を奪い、475球を投げ抜いた鉄腕は「どういうピッチングするかを考えて、自由自在なピッチングができるように心掛けたい。毎回言っているんですけど、次こそは自分が完封したい」と連投にも意欲を見せた。初出場で4強入りした1984年以来の旋風を、みちのくの新星が巻き起こそうとしている。(青柳 明)

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