吉田輝星、侍で金メダルへ「どんな起用法でもいい」…金農フィーバー寄付金1億9000万円

スポーツ報知
学校での報告会に登場した吉田輝星

 第100回全国高校野球選手権記念大会で準優勝した金足農(秋田)の吉田輝星(こうせい)投手(3年)らナインは23日、始業式に続いて開かれた準優勝報告会に臨んだ。約1億9000万円の寄付が集まったことが判明するなど「金農フィーバー」が続いている。また、U18アジア野球選手権大会(9月3~9日・宮崎)に出場する高校日本代表に初選出された吉田は、起用法について、先発にこだわらない考えを明かした。

 すがすがしい表情だった。吉田は大歓声を気持ち良さそうに受けとめた。「応援のおかげで、甲子園では力以上のものを出せました。感謝の気持ちでいっぱいです」。凱旋から連日の報告会にもかかわらず、市民ら約500人が駆け付けた。全校生徒と合わせて約1000人を前に、中泉一豊監督(45)は「多くの人たちに集まってもらって大変うれしい。頑張って諦めなかった結果」とナインを頼もしそうに見つめた。

 熱狂ぶりは数字にも表れた。一時は資金枯渇問題も浮上していたが、渡辺勉校長(55)は21日時点で寄付金が1億9000万円集まったと発表。会場が騒然とする中「これからも声援をよろしくお願いします」と頭を下げ続けた。金額が2億円に達している可能性もある。

 始業式は当初、決勝と同じ21日の予定だった。想定外の快進撃を受けて、この日の報告会前に延期された。報告会では佐々木大夢主将(3年)が、渡辺校長に準優勝の盾を贈呈。大挙したマスコミの撮影に配慮して、贈呈シーンを2度、繰り返す一幕も。主将は「いろんな人の支えがあって、ここに立てていると思う。日本一の応援をありがとう」と感謝。同校によると、寄付金は甲子園へ応援に行った生徒の旅費や野球用品の購入などに充てる方針だ。

 報告会後、記者会見が行われた。22日に将来的な目標として巨人に「行きたい」と話した吉田に対して、進路についての質問が飛び、指揮官と目を見合わせて相談する場面も。「準優勝できたことは一生の宝物。決勝で大敗したが、次のステージへ成長する土台としたい」と具体的な言及は避けた。

 学校からは渡辺校長名で「本日を最後に生徒、保護者への取材を控えていただければ幸いです(要約)」とする文書がメディアに配布された。甲子園開催中には、訪問者が無断で同校の敷地内に侵入。校舎をスマートフォンで撮影する事態も起きた。

 フィーバーが続くなか、吉田の「侍デビュー」が迫る。全国から選ばれた18人の精鋭は25日、都内に集合し全体練習が始まる。秋田大会から甲子園準決勝まで10試合で完投し、決勝も含めた全11試合で1517球を投げ抜いた右腕は「日本が勝つためなら、どんな起用法でもいい。任された役割を全うしたい」とフル回転の覚悟を示した。甲子園で成し遂げられなかった頂点。今度こそ“金メダル”をつかみ取る。(増田 寛)

 長年にわたって名門・横浜高の野球部長を務めた小倉清一郎氏(74)に甲子園大会の寄付金事情について聞いた。

 ―甲子園期間中はどんな経費がかかるんですか?

 「私が部長をしている頃、主催者側からはベンチ入りの選手18人と監督、部長に1日9000円の手当が出ていました。宿泊代や朝晩の食事はこれでまかなえますが、昼の弁当代1000円は別ですし、移動バス代は1日10万円がかかる。さらにはベンチ外の選手の宿泊代、食費もかかります。部員30人とすると、1日当たり100万円がかかる計算です」

 ―応援部隊にも経費がかかりますよね。

 「98年夏、松坂らが春夏連覇を成し遂げた時には、野球部自体で約2000万円、学校合計で約6000万円かかりました。金足農は距離が遠いですから、8000万円から1億円近くかかっているでしょう」

 ―金足農は1億9000万円の寄付金が集まったそうです。

 「それはすごいね。以前、ある林業高校が甲子園に出た時、林業を営む地元の実力者がヒノキの一番いい木を切って、1億円を用立てて寄付したと聞いたことがあるよ(笑い)」

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