センバツ当確の札幌大谷、守備力強化へ「ステップ&スロー」徹底を…名将・小池啓之氏観戦記

スポーツ報知
円山球場を背に、笑顔を見せる小池氏

◆秋季高校野球 北海道大会決勝 札幌大谷9―6札幌第一(8日・札幌円山)

 秋季全道高校野球大会は8日に決勝が行われ、札幌大谷が札幌第一を9―6で破って初優勝。明治神宮大会(11月9日開幕)の出場権をつかみ、来年3月のセンバツ甲子園切符を確実なものにした。過去に旭川龍谷、鵡川、旭川南の3校を指導者として計4度の甲子園に導いた小池啓之氏(66)がこのほど、スポーツ報知に決勝の観戦記を寄稿。40年もの指導歴を持つ高校球界の“ご意見番”が試合を分析し、甲子園へのアドバイスなどを送った。

 両校とも、自分たちの野球を最後まで貫いた。札幌大谷は前半でリードされても、攻撃で先頭打者が出塁すれば確実に進める。その姿勢が際立ったのは6、8回で、2番・釜萢くんが1球で送りバントを決め、流れをチームにもたらして大逆転につながった。

 高校野球にヒーローはいらないが、この試合では札幌大谷の2番手投手・太田くんの投球が見事だった。まず、テンポが良い。ストライクを先行させ、それも低めに丁寧に投げていた。さしもの札幌第一の強力打戦もフルスイングさせてもらえず、ゴロの山を築いた。

 その太田くんも、最終回は2死満塁のピンチに。そこで投じたボールに「弱気」が見えた。すかさず主将の捕手・飯田くんがタイムを取り、マウンドでひと呼吸。これで太田くんは元に戻り、三振に仕留めてゲームセットとなった。投手陣をうまくリードしながら、ちょっとした変化を見逃さない。さすが主将だ。

 これで札幌大谷は、11月の明治神宮大会出場を決め、来年3月のセンバツ甲子園も有力候補となった。試合後に船尾監督も守備力の強化を口にしていたが、これからの練習は基本になる「ステップ&スロー」を徹底してほしい。それができれば、目立っていた“高投”もなくなるはずだ。

 加えて、走塁面もワンランク上を目指してほしい。準決勝では好走塁で相手チームのエラーを誘発させるなど、スピードはある。二塁からワンヒットでホームインできる走塁を磨けば、攻撃力はさらにアップ。二塁でのシャッフル(第2リード)の工夫でも向上する余地はあると思う。

 何より心強いのは、五十嵐部長の存在だ。ご存じの方もいると思うが、駒大苫小牧が夏の甲子園を連覇(04、05年)した時の正三塁手。“香田野球”が骨の髄まで染みこんでいる部長が指導しているのだから、必ず変わってくると思う。

 両チームのエース番号をつけた西原くん(札幌大谷)と野島くん(札幌第一)は威力ある直球を投げることができるのに、なぜか変化球が多かった。春までに直球の制球力をアップさせ、「弱気は最大の敵」という言葉を胸に刻んでほしい。どんな場面でも強い気持ちで投げられる真のエースになることを期待している。

 ◆秋季全道決勝VTR

 初回は札幌第一が1点を先制。3回には失策絡みなどで加点し、4点リードした。札幌大谷は3回に2番・釜萢からの6連打で同点に。5回に勝ち越しを許すも、8回1死二塁で、3番・石鳥の左越え適時二塁打で再び追いつき、さらに5番・佐藤颯の右中間への2点適時二塁打で勝ち越し。最後は3回途中から救援した横手投げ右腕・太田が、7回2失点(自責1)の粘投で逃げ切った。

 ◆小池 啓之(こいけ・ひろゆき)1951年11月15日生まれ。66歳。東京・品川区生まれ。兵庫県の市立尼崎から駒大を経て77年から旭川龍谷コーチ。甲子園は78年夏にコーチ、83年夏には監督で出場。98年から鵡川に赴任。02年は部長としてセンバツ出場。同年8月に旭川南の監督に就任。07年は元日本ハムの浅沼寿紀(現・紋別市職員)を擁してセンバツ出場。昨年7月で勇退した。家族は妻と1男2女。

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