バーランダーの再現、大型トレード注目…MLB移籍候補&ペナント占う
オリオールズのマニー・マチャド内野手のドジャース移籍が18日(日本時間19日)、発表された。7月はメジャーにとって、ポストシーズン進出可能なチームが補強し、低迷しているチームは来季以降を見据えてオフにFAとなる主軸を放出する時期だ。今季の移籍候補を挙げ、今後のペナントレースを占う。また、5月に会長付特別補佐となったマリナーズ・イチローの近況をお伝えする。
昨年、球団初のワールドチャンピオンに上り詰めたアストロズ。その要因としてはハイレベルな選手層に加え、タイガースのエースとして183勝をマークしていたジャスティン・バーランダーを8月末に獲得したことが大きかった。
タ軍では10勝8敗、防御率3・82の成績だった。2011年にサイ・ヤング賞&MVPを受賞した右腕も、34歳になる年齢から衰えを指摘されていたが、ア軍の水に合ったのか、移籍後は5戦全勝の活躍。ポストシーズンも4勝1敗と奮闘し、リーグ優勝決定シリーズではMVPにも輝いた。
バーランダーの再現とばかりに、今季も勝ち越してポストシーズンに進出する可能性のあるチームが、負けが込んだチームのトレード候補獲得を狙っている。
メジャーでは、シーズン中の大型トレードに関して「フラッグデール」(ペナントを狙うための補強)という言葉をよく使う。ウェーバーにかけずにトレードができる期限の7月末に、駆け込みトレードが多いのもそれが理由だ。もちろん、バーランダーのようにポストシーズン出場権利のある8月末の移籍組も含む。
18日にはその第1号ともいうべき、オリオールズの主砲、M・マチャド内野手のドジャース移籍が発表された。4月末、ナ・リーグ西地区5連覇中のド軍は、一昨年の新人王シーガーが右肘の手術で今季絶望となった。そこで遊撃手の穴が開いたため、早くからオ軍がマチャドの放出を決断する際には、ド軍が獲得に乗り出すと伝えられていた。
フィリーズなどとの争奪戦に勝利したド軍のザイディGMは「この時期に補強する必要性を感じており、一番の選手だと評価した」と胸を張った。昨年はレンジャーズからダルビッシュ有を獲得しており、2年連続で大物ゲット。前田健太を擁するド軍は今後も救援陣の補強を目指し、その成否が2年連続ワールドシリーズ進出のカギを握る。
田中将大所属のヤンキース、ダルビッシュ所属のカブスはともに、先発投手の補強をもくろんでいる。
別表に挙げている先発投手はハップ、デグロムを除くと今季成績はいま一つだが、前記のバーランダーや、かつてのR・ジョンソン、サバシアらのように新天地で心機一転、完璧な数字を残してチームをけん引する可能性は十分ある。
この“フラッグデール”で、オフにFAとなる大物を放出するチームにも、実は大きなメリットがある。それは数年後、チームの柱となる若手有望選手を獲得できることだ。
最も顕著だった例は別表のジョンソンを放出したマリナーズだ。獲得したのは当時、アストロズのマイナーに所属していたF・ガルシア、J・ハラマ両投手にC・ギーエン遊撃手。3年後の01年にガルシアが18勝、ハラマも先発とリリーフで10勝、ギーエンは正遊撃手となって116勝したチームの大きな戦力になった。
日本プロ野球では見られない夏場の大型トレード。移籍選手に加え、交換要員で放出される選手の名前を覚えておくのも、メジャー観戦の楽しみの一つである。(蛭間 豊章=報知新聞ベースボール・アナリスト)
★主な移籍成功例
◆96年ヤンキース タイガースで2年連続本塁打王になったC・フィルダー内野手(元阪神)を7月31日、2対1のトレードで獲得。ヤ軍では4番に座り、ワールドシリーズでも勝負強さを見せ、18年ぶりの世界一に貢献した。
◆98年アストロズ マリナーズの左腕エース、R・ジョンソンを3対1のトレードで7月31日に獲得。マ軍では9勝10敗、防御率4・33と低迷していたが、ア軍移籍後は10勝1敗、1・28の快投で地区優勝に貢献。
◆08年ブルワーズ インディアンスの左腕C・C・サバシアを7月7日に4対1のトレードで獲得。イ軍では6勝8敗、3・83と調子が上がらなかったが、ブ軍移籍後は11勝2敗、1・65と大車輪の活躍で26年ぶり地区優勝の立役者に。