大谷翔平、新人王争いへ後半14発で反撃…メジャー担当蛭間記者が占う

スポーツ報知
ア・リーグの新人王候補

 エンゼルスの大谷翔平選手(24)がア・リーグの新人王になれるか、との報道がメジャーでも多くなった。1年目の日本人最多本塁打記録を更新中の大谷は二刀流として投手としても4勝2敗の成績を残しており、日本人選手では2001年マリナーズ・イチロー外野手以来17年ぶり4人目となるか注目だ。昨年は両リーグの本塁打新人記録をマークしたヤンキースのA・ジャッジ外野手とドジャースのC・ベリンジャー外野手がそろって満票で選出されたが、今年はどうなるか占ってみた。(構成・蛭間 豊章)

 【ア・リーグ】

 ア・リーグの新人王争いは、6、8月に2度の月間最優秀新人となったヤンキースのM・エンドゥハー内野手がトップを走り、2番目にオールスター戦にも選出されたチームメートのG・トーレス内野手が追走すると思われたが、後半戦だけで14本塁打を放った大谷翔平が一気に巻き返してきており、これに投手ではレイズのリリーフ陣が先発するシステムで、ロングリリーフとして計15勝(6敗)をマークしている左腕R・ヤーブローが加わって、面白くなってきた。

 1918、19年、レッドソックス時代のベーブ・ルース以来メジャー史上2人目となる10先発&50投球回で2ケタ本塁打をマークした大谷。二刀流としての驚きは序盤だけだったが、後半戦になってからの量産で14・6打数に1本という本塁打率。この数字は03年、1年目の松井秀喜(ヤンキース)の626打数で換算するとシーズン42・7本と本塁打王争いに加われる数字となる。

 ただし、2003年に106打点を挙げて本命視されていたヤンキースの松井秀喜外野手が打点で33点も上回り、打率、本塁打でもほぼ同じながら、21盗塁したA・ベロア内野手(ロイヤルズ)に惜しくも4ポイント差で逃した例がある。NPB出身の日本人選手には圧倒的な数字が必要。序盤戦4勝を挙げた豪快なピッチングを加味されるとしても、打率3割、本塁打は20本台半ばくらいに乗せなければ、史上初の“二刀流”での新人王当確とは言えないだろう。

 一方、ポストシーズンを目指すヤンキース・コンビ。8月に2ケタの10本塁打を放ったエンドゥハーは安打、長打、本塁打、打点などア・リーグNO1。中でも25本塁打を放ち長打合計は65本。過去、この2つの数字を残した新人選手は16人いるが、全員新人王に輝いているという。このデータを初の二刀流・大谷が塗り替えられるかどうか注目だ。

 21歳でデビューしたトーレスは最初の75打数で18本塁打を放った22歳未満の打者としては球団史上初。5月9本塁打をマークして月間最優秀新人に選出。また、9番で12本塁打は今季のメジャー最多だけでなく、球団最多アーチ。前半戦の活躍でオールスター戦に新人でただ一人選出された強打の持ち主。2人に関してはチームの好成績への貢献などを、投票者がどこまで考慮するだろうか。

 レイズは、先発投手不足を補うため、リリーフ投手が先発する試合がある。ヤーブローは、その試合でリードした展開になると起用されるロングリリーフ役として脚光を浴びている。リリーフで5イニング以上投げた試合が11試合もあり、メジャー32年ぶりのリリーフで13勝し計15勝など、軒並み今季メジャーの新人投手ではNO1。面白い存在でどこまで票を伸ばすかも楽しみだ。

 【ナ・リーグ】

 ナ・リーグは、シーズン前から評判の高かった20歳のR・アクーニャ外野手(ブレーブス)と、5月に昇格したばかりの19歳、ナショナルズのJ・ソト外野手の一騎打ちの様相だ。

 父親がメッツのマイナーでプレーしていたアクーニャ。オープン戦で打率4割3分2厘、4本塁打をマークしながらも、6シーズンが必要なFA権行使を1年延ばさせる球団の意図で昇格したのは4月25日。2試合目に初アーチを放った。中でも1番に座った後半戦は先頭打者アーチを連発。8月13日のマーリンズ戦で史上4人目のダブルヘッダーで打ち、続く試合も打ってメジャー22年ぶりの3試合連続。前の2試合も打っており5試合連続アーチを放った最年少記録も作った。3戦連続先頭弾を浴びたマーリンズは15日に先発したJ・ウレーニャがいきなりアクーニャにぶつけて退場となるほど相手にとって脅威のルーキー。脚力、強肩、広い守備範囲と三拍子そろって、5年ぶりの地区優勝を果たしたブレーブスを先導する。

 一方、万能選手のH・ケンドリックの故障で5月20日に19歳と207日の若さでデビューしたJ・ソトは左打ちのパワーヒッター。初スタメンとなった2試合目に1号3ランを放つと、メジャーを代表する選手B・ハーパーが「スペシャルなプレーヤーになる」と絶賛。6月18日、同点でサスペンデッドゲームとなっていた5月15日ヤンキース戦の続行試合を行ったが、その試合で本塁打。何と記録上は「デビュー戦より前に本塁打を打った史上初の選手」にもなった。10代では史上3人目のシーズン20号。歴代最多アーチは1964年のT・コニグリアロ(Rソックス)の24本。この数字を超えるようならアクーニャとのマッチレースもはね返す可能性は十分だ。

 34歳のオールドルーキー、Dバックスの平野佳寿投手も4勝2セーブにリーグ3位の32ホールドと内容は濃いだけに注目したい。(数字は9月24日現在)

 ◆日本人は過去3選手 日本人選手の新人王受賞は、1995年、13勝も奪三振王となって1位票18票で118ポイント(2位に14ポイント差)を獲得したドジャースの野茂英雄投手、2000年にリーグ3位の37セーブを挙げ、同17票で104ポイント(同21ポイント差)のマリナーズ・佐々木主浩投手、01年には首位打者&盗塁王に輝いたマリナーズ・イチロー外野手は惜しくも満票に1票足りない27票で138ポイント(同65ポイント差)だった。2位に入ったのは2人おり、03年ヤンキースの松井秀喜外野手が4ポイント差、04年にWソックス・高津臣吾投手が94ポイント差だった。なお、3位を列挙すると04年パドレス・大塚晶則投手、12年レンジャーズ・ダルビッシュ有投手、16年ドジャース・前田健太投手の3人。

 ◆新人王投票 毎年11月にMVP、サイ・ヤング賞、最優秀監督賞とともに発表される。日本同様にレギュラーシーズンで選考、ポストシーズンは含まない。ア・リーグ、ナ・リーグ各15球団のフランチャイズ都市の全米野球記者協会員各2人の計30人が投票。3人連記で1位は5ポイント、2位が3ポイント、3位が1ポイント。その合計ポイントで争う。

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