【大谷翔平、二刀流の真実】〈5〉手術勧告動じず2発「鬼のメンタル」

スポーツ報知
新人王を獲得したエンゼルス・大谷(左)の言葉を通訳する水原通訳(球団提供)

 二刀流・大谷を支えたのが、驚異的な「メンタル」だ。最も全米を驚かせたのは、医師から右肘手術を勧められながらも、動じることなく放った9月5日レンジャーズ戦の2本塁打。日本ハム時代から大谷を知り、今年1月から通訳、運転手、練習パートナーとして新人王受賞を後押しした水原一平通訳(33)が、舞台裏を明かした。

 衝撃的なニュースはどこ吹く風。試合前に医師から右肘内側側副じん帯再建術(トミー・ジョン手術)を勧められた大谷は、5回無死から2戦連続の17号ソロを放つと、8回1死一塁では18号2ラン。今季2度目の1試合2発で、2006年の城島健司(マリナーズ)が持つ日本人1年目の最多本塁打記録に並んだ。医師からの手術勧告に、「かなりショックを受けた」という水原通訳だったが、大谷の姿を見て元気づけられたという。

 「6週間しっかりリハビリして、やっと戻ってきたのに。翔平が一番ショックを受けたはずなのに、翔平を見ると笑顔でいつも通りで…。自分がクヨクヨしててもしょうがないなって」

 右肘の異常が明らかになったのは6月8日。6日のロイヤルズ戦後に右肘の違和感を訴え、7日にロサンゼルスで組織の修復や回復を図る多血小板血漿(しょう)=PRP=治療と幹細胞注射を受けていたと、球団が発表した。故障者リスト(DL)入りして3週間ノースロー。当初は引きこもることもあったが、同時期にDL入りしていたシモンズから食事に連れ出されたりするうちに自分を取り戻したという。

 「シンバ(シモンズの愛称)も一緒にリハビリしていたので、その時に結構、ご飯に誘ってくれていた。焼き肉とか。本人がかなり落ち込んでいる時期だったので、すごく助かったと思います」

 9月、肘に新たな損傷が見つかった後は、ソーシア監督に打者としての出場を志願。「打者一本で臨めるのは、それはそれで楽しみ」と言ってのけたという。

 「『どっかでおかしいな』というのがあって、もう(手術の)覚悟はできていたのかなと。(手術勧告は)すんなり受け入れていた。それにしても2発って。『持っている』というか、鬼のメンタルですよね」

 「1月から翔平と毎日会ってます」という水原通訳。日頃の大谷は「普通の24歳。ユーモアもあって、冗談も言う」という。日本ハム時代から素顔を知るが、いまだに不思議な感覚に襲われる。

 「本当にスーパースターじゃないですか。でも、全くそれを感じさせない。家でテレビとか見ると、いつも『すごい人と一緒にいるんだな』と。いろいろありすぎて山あり谷ありでしたが、単純に『すごいな』と思わされます」

 新人王を一番近くで支えた功労者も、大谷には驚かされるばかりだ。(特別取材班)

 ◆エ軍の番記者も「驚いた」

 大谷が放った手術勧告後の2本塁打は、エ軍の番記者をもうならせた。地元紙「オレンジカウンティ・レジスター」のJ・フレッチャー記者は、「(6月に)右肘を故障してから(手術の)心の準備もできていたんだと思う。それでも、手術勧告を受けた日を、デビュー以来、打者として最高の日にしたのには驚いた」と目を丸くした。大リーグ公式サイトのM・ゴーダド記者も、「チームメートは口をそろえて『彼はプロだ。自分の仕事を全うしている』と言っていた。打者一本となった9月に彼が成し遂げたこと、不屈の精神には目を見張ります」と話した。

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