米震撼イチローのレーザービーム〈4〉ボールが「ピシュー!」と音立て飛んだ

スポーツ報知
「レーザービーム」の名付け親のリック・リズ氏(左)と握手するイチロー(3月17日・東京ドーム)

 イチローはとんでもない強肩らしい―。地元シアトルでは、開幕前からある程度、うわさにはなっていた。

 それはキャンプが始まる前の01年2月3、4日、セーフコ・フィールド隣のコンベンション・センターで開催されたファンフェスタでの出来事だ。イチローへの期待も相まって例年の倍以上、約5000人が集まる盛況ぶりだった。

 イチローはトークショーで檀上に登場。即席サイン会で、何と2000人近いファンにペンを走らせた。この会場で流されていたのが、オリックス時代に見せた代表的な打撃、走塁、守備の映像だ。中でも外野からのバックホームのシーンには、多くの人だかりができ、ファンが驚きの表情を見せていた。

 「レーザービーム」の名付け親でもあるラジオ実況のリズさんは、キャンプでのあるシーンが忘れられないという。

 「私がチームスタッフの誰かと話しながら野手の守備練習を見ていたとき、突然私の横を『ピシュー!』という音とともにボールが飛んでいった。それまで本塁への送球がそんな音を立てるのを聞いたことがなかったので、ふり返って外野を見ると、イチローが立っていたんだ」

 メジャーの選手から見れば180センチの体は大きくはない。あれほどのボールが繰り出されるなんて思ってもいなかったそうだ。

 イチロー自身は開幕前「メジャーのファンを驚かせることができるとすれば、守備と肩でしょう」と豪語していた。それをありのままに示したわけだ。

 イチローが「レーザービーム」を披露した時、一塁走者に三塁進塁を指示し、はからずも“引き立て役”となってしまったアスレチックスのワシントン三塁コーチは「(今度)イチローのところに打球が飛んだら、私は(走者に)ゴーサインは出せない」と笑いながら言った。

 この年のマリナーズはメジャー最多タイ116勝を挙げてア・リーグ西地区で独走優勝。モイヤー20勝、ガルシア18勝、アボット17勝、シーリー15勝の「15勝カルテット」を形成した。球威のあったガルシア以外は、いずれも打たせて取るタイプ。イチローが好守を見せるシーンも多かった。ベテラン左腕のモイヤーは「イチローを始めとした守備陣のおかげで、いい仕事ができた」と感謝するほどだった。

(構成・蛭間豊章)

 ◆イチロー外野手の補殺 イチローが送球で刺した補殺数はオリックス時代66、メジャーで123。リーグ最多は日本時代の95年と98年の2度。早々と強肩を見せつけたメジャーでは、相手が自重してか最多でも12個。リーグトップは1度もなかった。日米合計189は、NPB記録の山内一弘の175を上まわる。ちなみにメジャー記録は今よりも守備位置が前だった1900年代初期にプレーしたT・スピーカーの449。

 

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