【ヒルマニア】イチロー、守備位置から交代はファンへのサービス かつては野手にとって屈辱

スポーツ報知
試合開始直前、場内のファンにサインするイチロー

◆MLB日本開幕戦 アスレチックス7―9マリナーズ(20日・東京ドーム)

 マリナーズのイチローは4回、いったん右翼の守備に就いてから交代となった。両軍ベンチもファンも拍手を送ったこのワンシーンを「ヒルマニア」で掘り下げる。

 4回裏、アスレチックスの攻撃が始まる前。右翼の守備位置に就いていたイチローがベンチへ戻され、ブルースと交代となった。

 メジャーでは“守備に就いてからの交代”は野手にとって屈辱とされている。

 思い出すのが1999年、メッツ・ブレーブスのリーグ優勝決定シリーズ第4戦だ。メ軍が3―2でリードした8回先頭、一度は左翼の守備に就いていたのが、この日始球式のバッターボックスに立ったリッキー・ヘンダーソン。そのベテラン外野手をバレンタイン監督は交代を命じた。ヘンダーソンは「自分の守備を信じられないのか」と言わんばかりに激怒。そのままロッカーに姿を消して自宅へ帰ってしまった。

 このシリーズでは、第6戦で、試合に出ていないヘンダーソンが試合中にロッカーで他のベテラン選手とカードをやるなど、指揮官と遺恨のきっかけとなった出来事として知られ「守備に就いてからの交代は屈辱」といわれることにつながったともいえる。

 しかし、この日のイチローの交代に関しては、趣が違う。サービス監督が「(イチローに)敬意を表した」と語ったように、東京Dに集まったファンへのサービスだったといえる。巨人とのプレシーズンゲームは2試合とも3打席立たせた。この日は公式戦ということもあり、2打席だけ。ファンには寂しかろうと指揮官が気遣ったのだろう。

 20年前のヘンダーソンの屈辱シーンは現地で間近に見た。チームメートは、この日のイチローに対するような握手やハグは、ヘンダーソンにはしなかった。

 最近のメジャーでは、選手が現役を終えるシーズンの終盤に、今回のようなシーンを見ることが多くなった。それを開幕戦から見ることになるとは、驚くばかりだ。

 ※「ヒルマニア」は、スポーツ報知でメジャーリーグを担当し続けて41年の蛭間豊章記者が、マニアックなメジャーネタをお送りします。

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