初代イチロー番記者が振り返る「割り算より足し算理論」

スポーツ報知
ベンチへ下がるイチローを抱擁で迎えるマリナーズナイン

◆MLB日本開幕戦 アスレチックス4―5マリナーズ=延長12回=(21日・東京ドーム)

 マリナーズは21日、イチロー外野手(45)の現役引退を発表した。イチローは東京Dでのアスレチックスとの開幕第2戦の前に、球団側に第一線を退く意向を伝えた。「50歳までプレー」を宣言していたが、昨年5月に会長付特別補佐でフロント入りし、プレーから離れていた。今年のキャンプで選手復帰したが、オープン戦から調子が上がらず、日本での開幕シリーズも2試合で5打数無安打だった。メジャー通算3089安打を誇るレジェンドが、バットを置いた。

 日本に到着してからの表情や発言を画面、紙面で見て、覚悟を決めているように見えれば見えるほど、イチロー自身には引退する気はないと思っていたが…。その時が来てしまった。

 努力することの天才だったと思う。94年、60試合目で100安打を記録した6月下旬あたりから、20歳の彼の周囲はその全てを見逃さないようにするメディアとの攻めぎ合いに。ただ合宿所での練習は取材陣が帰ったあと。「イチロー」でいることの努力は見せないし、ほとんど語ることはなかった。25年前のことだが、当時から明確に語っていた「足し算」の理論は、最後まで変わることはなかったと思う。この年、前人未到だったシーズン200安打と打率4割。2つの数字を追うことになったが、イチローは「打率はどうでもいい。割り算は考えても仕方ない。(打率を考えて)精神的に苦しむのは嫌だから」。その思考とたゆまぬ努力が4367という数字まで安打数を積み上げたのだろう。

 最近は「最低50歳まで」とプレーヤーとしての目標を語っていたが、20歳の頃は「45歳まではやりたい」と話していた。たまたま、その年でピリオドを打った選手人生。これからは何を足し続け、積み重ねていくのか。まだ、イチローに期待したいと思う。(93、94年オリックス担当・中野達哉)

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