【イチロー引退の真実】(中)NYでクビになるんじゃないか

スポーツ報知
試合後会見を終え引き揚げるイチロー

 イチローにとって引退の二文字はいつ頃、実感するようになったのだろうか。デビューから2012年までのマリナーズ時代は、押しも押されもしないスーパースターだった。その年7月にヤンキースに移籍した際、「ボクなりに考えた結論は、20代前半の若い選手が多いこのチームの未来に自分がいるべきではない。自分も環境を変えて刺激を求めたい。それなら早く去るべきだ」と理由を話していた。

 マリナーズでの打率2割6分1厘から、ヤンキース移籍後は、言葉通りに新天地で刺激を受け、67試合の出場で3割2分2厘と復活。地区優勝してポストシーズン進出に貢献し、オフに初のFAとなって2年契約を結んだ。

 ところが、翌年に打撃が下降したこともあって、イチローに待っていたのは、渡米後初めて、試合前のラインアップカードを見るまで先発出場が分からない立場だった。その時だ。「ニューヨークに行ってからは、引退というよりは、(毎日)クビになるんじゃないか(という心配が)、いつもありました。そんなメンタリティーで過ごしていたんです」と会見で当時の心境を吐露した。

 ヤンキースとの契約が切れると2014年オフに再びFAとなって、無所属のまま新年を迎えた。1月にマーリンズが4番目の外野手として獲得も年俸は渡米後最低の200万ドル(約2億2000万円)。マーリンズの3年間ではシーズン100安打に届かず、近年のイチローは、「50歳までプレーする」と公言していたのとは裏腹に日々、クビの心配をする年老いたベテラン選手という存在になっていた。そんな彼を最後に救ったのが古巣のマリナーズだった。(特別取材班)

野球

×