【担当記者が見た矢野謙次】阿部から強い気持ち勉強

スポーツ報知
サヨナラ本塁打を放ち雄叫びを上げる矢野(2012年10月7日)

 16年間の現役生活にピリオドを打った日本ハム・矢野謙次外野手(38)。巨人時代の“担当記者”が、矢野の人柄と魅力をつづった。

 曲がったことが大嫌いな、実直な男。それが矢野だ。育ってきた環境に誇りを持ち、群れることを嫌った。プライドもあった。ドラフト6巡目で巨人入り。当時、大学球界で騒がれていた木佐貫洋と久保裕也が自由枠で入団。いつも周りにいたのは、ドラフト順位が高くない、同じ境遇の選手たちだった。不器用な男だな、と心配した。

 そんな矢野が変わったのは13年1月だった。阿部、坂本勇、長野らドラ1たちとグアムで自主トレを行った。技術はもちろん、気持ちを学ぼうと動いた。

 「今までは『俺みたいな下位指名の気持ちなんて分かるわけない』と思っていた。でも、違うんですよね。逆に活躍して当たり前のドラフト上位選手の気持ちは俺には分からない。そこで活躍している人たちが、どんな精神状態で試合に臨んでいるかを聞きたかった」

 1年目から主力として活躍した先輩・阿部から気持ちの強さを吸収。20代でも年下選手の面倒を見る坂本勇、長野からは責任感を学んだ。「自分とは違う境遇の人間と交流することで、今後の自分の人生が大きく変わると思うんです。野球選手としてだけではなく、ね。僕は人として成長したいですから」

 選手、記者関係なく、周囲の和を乱す人間を真剣に叱れる数少ないプロ野球選手だった。今後、どんな第二の人生を送るのかは分からないが、人として魅力の塊のような謙次なら、絶対に成功する。(元巨人担当・高田 健介)

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