【阪神】矢野監督が金村義明さんに新春の誓い 超積極的な「チャレンジ野球」

スポーツ報知
金村氏と対談を行った矢野監督(左)

 阪神・矢野燿大新監督(50)が金村義明氏(55)=スポーツ報知評論家=と新春対談を行い、超積極的な「チャレンジ野球」の実現を約束した。1995年からの2年間、中日でチームメートだった2人。17年ぶりの最下位だった昨季からの立て直しへ、「僕のサインを無視したらすごい」と“暴走”すらOKとした。金村氏は「強い覚悟を感じる」と巻き返しに太鼓判を押した。

 金村(以下・金)「監督就任、おめでとうございます。最初から僕は大賛成だった。絶対に監督をやるべきだと思っていた」

 矢野(以下・矢)「ありがとうございます。正直、まさか僕が(監督を)やることになると思っていなかったです。(今年は)ヘッドコーチをやるつもりだったので」

 金「最下位から立て直すというのは、本当に難しい仕事。金本前監督とは話をしたの?」

 矢「今まで、そこはあまり触れずにいたんですけどね…。僕から喋ると、何か違うと思って。金本監督と一緒に(コーチとして)僕と片岡(篤史)コーチが来て、僕だけ残るのに違和感を感じていたんです」

 金「金本監督は同い年で東北福祉大の先輩後輩。片岡コーチともずっと、苦楽をともにしてきたわけやからね」

 矢「こういう状況になって『俺だけ残るのってどうなの?』って…。球団から監督就任の要請をいただいて、実際に考える時間もなかった。『どうする?』となった時に、一番最初に金本監督と話をしておきたかった」

 金「金本監督は『来年以降、きれいな花を咲かせてほしい』と言葉を残して、チームを去っていった」

 矢「『矢野にやってほしい』と言ってもらえたんです。根本的な野球観は、全くズレるところがないので。『脱・金本』と言われることもありますけど、僕の中では『続』です。続いているので」

 金「強い覚悟を感じるよ。今は優しさが前面に出ている感じがするけど、やる時はやる。若い時も本当によく練習していた」

 矢「金村さんとは中日で2年間、一緒でした。しんどい時期でしたよね」

 金「95年は5位で、96年は2位。僕が西武に移籍した翌年は最下位だった」

 矢「僕、なぜか最下位に縁があるんですよ。98年に阪神にトレードされてからも最下位。(2001年まで所属球団が)5年連続最下位って…。そんな監督、いますか?(笑い)」

 金「おらへんやろ…(笑い)。当時の印象は足が速くて、打撃はいい。パワーもあった。外野もやっていた」

 矢「外野はひと通り、やりましたね。1番で先発したり。いい経験ですね」

 金「僕は9人の監督の下でプレーして、多くのコーチに教わったけど、中でも島野さん(※1)はすごかった」

 矢「レギュラーというより、控えとか裏方さんをすごく大事にしてくれる方でしたよね」

 金「チームが連敗している時なんか、主力だけ練習っていう日があった。普通なら控えを叱るのに。コーチも教育していたよね。ウォーミングアップから目を離すな、と。その島野さんが一番、矢野監督を評価していた。『テル、テル』って呼んで」

 矢「言葉は悪くなりますけど、監督として(の姿勢は)パクらせてもらっています。考えるという部分では、野村(克也)さん。野球は能力だけでやるものではない、と。島野さんのおかげで、折れそうな気持ちをつなげられた選手は多かったですよね。もちろん、そこには星野(仙一)さんの存在があるんですけど。(星野さんには)ハートの部分を教わりましたから。『投手を絶対に守れ!』と。残念なのは亡くなられているということ。生きておられたら、話は聞かせてもらいたかったですね…」

 金「星野さんなら絶対に背中を押してくれてるよ。『やれ! やらんかい!』って。『悩んだ時は一歩前に出ろ!』ってね」

 矢「若い時は星野さんが怖かった。『怒られないように』とばかり考えていました。アウトのなり方をイメージして、振らないでおこうという選択をしていた。でも、それでは野球がうまくならないんですよね」

 金「だから、2軍では若手に積極性を教え込んだ。初球を打って、27球で試合が終わってもいいと。その言葉に選手は勇気が出る」

 矢「『振らな分からへんやろ?』って。選手たちの可能性を広げるために。1軍でも、基本的にそれは変わりません。弱い自分と強い自分と、打席には両方がいるんです。でも、『打ってやろう』という気持ちを少しでもでも勝たせた方がいい。投手もそう。『打たれたらどうしよう…』と思うより『打てるもんなら打ってみろ!』と思う方を選択してほしいですね。どうせ結果は出るんですから」

 金「『オレがヤル!』っていうチームスローガンもいいね。具体的なメンバーも頭には浮かんでるの?」

 矢「今のところは楽しみだけですね。誰が出て来るのか、と。孝介(福留)と嘉男(糸井)は、まだまだ頑張るでしょう。センターは(ドラフト1位の)近本が入って、俊(高山)とか苦しんだ選手も楽しみ。投手も言い出したらいっぱいいます」

 金「昨年はとにかく甲子園で勝てなかった(※2)。ファンを喜ばせるためには本拠地で勝たないと」

 矢「本当は西武のような野球をしたいですけどね。とにかく打って(星野監督でリーグ優勝した)03年の阪神みたいに、逆転勝ちが多い試合。甲子園が一番、盛り上がりますから。ただ、冷静に今のチームを見た時には、そう簡単ではない。投手力をしっかりとして、足の使える選手がどれだけ出てくるか。動きのある野球が、今のチームに合っているかなと思います」

 金「広島は丸の穴が大きい。最大のライバルは巨人になりそうかな?」

 矢「カープは現実として3連覇していますし、外野手はいますからね。やっぱり巨人、広島を意識してしっかり戦っていけば、上がっていけると思います」

 金「期待してるよ。せっかくだから約束というか、何か公約してよ」

 矢「一緒に2軍でやってきた選手が多いですからね。彼らがある意味、僕のサインを無視したらすごいと思っています。サインが出てないのに走るとか。そういうヤツが出てくるんじゃないかな? と実は期待しているんです」

 金「ノーサインで? なかなか4万人の前でスタートは切れんやろ」

 矢「それは僕らの指導でね(笑い)。接し方だと思います。積極的な、チャレンジをする姿。そこの部分は必ず、約束できます」

 【※1】島野育夫さんは中日、阪神などでプレー。コーチ時代は星野監督の名参謀として活躍した。中日で若手だった矢野監督を指導し、95年には中日で1軍監督代行。07年に胃がんのため亡くなった。

 【※2】昨季は本拠地・甲子園で21勝39敗2分け。95年の38敗(23勝)を超えるシーズン最多敗戦。

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