激闘制した西田選手新名人…第48期報知グレ釣り名人戦

スポーツ報知
笑顔で名人杯を掲げる西田新名人

 「第48期報知グレ釣り名人戦」が10月21日、愛媛・宇和島の立石バエで行われた。直前の「第48回報知グレ釣り選手権」を初制覇した西田智之選手(47)=松山市、釣闘会=が、史上最年少28歳の池田翔悟名人=八尾市、青波会=に挑戦。23センチ以上の総重量で2時間(1時間で釣り座交代)競い、前半に数、型ともリードを広げた西田選手が、わずか180グラム差で逃げ切って新名人の座に就いた。

 澄んだ秋空に両手の拳を突き上げた。僅差で逃げ切り、あこがれの名人位をつかんだ西田選手。「やったー!」という心からの叫びが、ギャラリーの温かい拍手とシンクロした。

 左の釣り座に入った前半、序盤からエビのむき身を餌にキープサイズを連発。竿3本分ほど沖を狙って池田名人を数、型ともに引き離した。9尾リードで折り返した後半は、アジの猛攻をかわすために途中から竿下に狙いを変更。ペースは落ちたが着実に数を伸ばした。「ハリに餌を付けたときに指がつって…。最後の5分間は何もできなかった」。2日間、合計600分の戦いを経て辿り着いた大一番。体は限界だったが、気力を振り絞った。

 苦い経験が生きた。今回の舞台である立石バエは、昨年10月の「第27回全日本グレトーナメント」(主催・全日本釣り技術振興評議会)で決勝戦を戦った磯。「あの距離(約15メートル)から沖で良型が出るのは分かっていた」。同じ釣闘会の元報知グレ釣り名人、小松和伸選手(47)に敗れて準優勝に終わったが、その悔しさをこの勝利で晴らした。

 磯釣り歴は17年。山口・光丘高の同級生、岩田則之選手(釣闘会)に誘われたのがきっかけ。「最初は岩田君の奥さんよりも下手で…。1年間に150日、釣りに通った」。負けず嫌いな性格に火が付き、のめり込んだ。

 深刻な不運に見舞われたのが2年前の夏。脳梗塞を患い、一時は日常生活を送ることさえ難しかった。「目に症状が出て物がダブって見えた」。約1か月の入院後、必死にリハビリ。9キロにまで落ちた握力は戻り、動かなかった右目も回復した。

 「一試合一試合、釣りが楽しくて。だから勝てたのかな。釣技はもちろん、人柄も優れた名人になりたい。まあ、難しいでしょうね」。無欲でつかんだ名人の座。釣りができる喜びを糧に、新しい時代を切り開いていく。

(小谷 竜一)

 ○…悔しい初防衛戦になった。敗れた池田名人は試合後、「下手なことはできないというプレッシャーがあった」と精神面での苦労を明かした。前半は練り餌で好スタートを切ったが、後が続かず。後半は遠投中心に良型を仕留めて追い上げたが、僅差で泣いた。「実力不足。1年間しっかり練習して、また来年も名人戦をしたい」。若き名手は捲土重来(けんどちょうらい)を誓っていた。

 宮川明・競技委員長「見応えのある面白い名人戦だった。初防衛は、やはり難しい。普段にはない気負いを池田名人から感じた。西田選手のマイペースな釣り方が、この日のグレに合っていたのだろう」

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