「看板バラエティーも終了させなければならない。苦渋の決断でした」…フジテレビ石原隆取締役インタビュー(1)

2018年4月8日11時6分  スポーツ報知
  • 編成、制作、宣伝の責任者としてフジテレビの今、そして未来を率直に語った石原隆取締役編成統括局長
  • インタビューに答えるフジテレビ・石原隆編成統括局長

 現在、平均視聴率で民放キー局中4位と苦戦も4月の「史上最大の改編」で復活に向けて動き出したフジテレビ。そのキーマンが昨年6月の取締役就任以来、編成、制作、宣伝の総責任者として剛腕を振るう石原隆取締役編成統括局長(57)だ。「古畑任三郎」「王様のレストラン」など名作ドラマのプロデューサーとして鳴らしたベテラン・テレビマンが「みなさんのおかげでした」「めちゃ×2イケてるッ!」など長年続いた大型バラエティーを軒並み終了させた大幅番組改編の舞台裏と「見たいと思わせる番組を作るしかない」という今後の反転攻勢への思いまで全てを語った。(聞き手・中村 健吾)

 ―大きな話題を呼んだ4月の大改編。「めちゃイケ」「みなおか」など長寿番組終了の経緯と理由は?

 「一昨年、編成局長に就任した当時から非常に厳しい視聴率の状況でした。ヒット作を作るには新しい番組を始めなければいけない。そのためには、これまであった番組をやめなければならない。これは自明の理でした。これまではフジのフラッグシップ、フジと言えばこの番組という看板番組には手を付けずにきました。それは遠慮してとかでなく、フジのアイデンティティーの一翼を担ってきた番組だけに、それを終えてしまうと、フジというものがますます分からなくなってしまうという思いでした。今、厳しい視聴率が出ているのは、フジと言えば、これっていう新しいものがないということでもある。一気にフジの看板だった番組をやめてしまうと、さらに混乱するかなということをまずは心配しました」

 ―ついに30年目の「みなおか」、22年目の「めちゃイケ」終了に踏み切った―

 「これまで編成を担当してきた人も慎重に考えた上で継続という判断をしてきたんだと思います。今回、歴史的な使命を果たしたということで、終了していかないと、フジテレビは変われない、という判断になりました。これまで残す方がメリットがあるだろうと思ってきた老舗の番組たちも今回は改編の対象にしていこう。そう就任直後に皆で議論をし、決めたというのが正直な経緯です」

 ―残す方がメリットがあると考えられていた具体的な番組名は?

 「全てです。僕が就任する前に残っていた番組たちは全て、時の編成が残した方がメリットがあるだろうと思って、残していたと思います。目先の視聴率だけでなくて、フジの会社全体のブランドを形成している一つであるとか、複合的な理由で残すという判断をしてきたと思います。でも、今回は、それについても手を付ける、改編の対象にするという判断をしたということです」

 ―終了に向けての作業を始めたのはいつ?

 「議論を始めて、いろいろな手続きを始めたのは一昨年(編成局長に)就任してから。それぞれの番組で事情や歴史的経緯は違って。全部が一定のスピードではありませんが、そういう構想を練り始めて、部内、社内の制作の人間とも議論を始めたのが一昨年です」

 ―とんねるずなどは番組を超えてフジのアイコン(象徴的存在)だった―

 「その通りです。どの放送局にもその放送局の名前を聞いたら、パッと思いつく番組名ってあると思うんです。間違いなく『みなさんのおかげでした』も『めちゃイケ』もそういう番組の一つ。確かに厳しい数字が全盛期に比べて出ているけど、我々のエンブレムなので『それに手を付ける前にやることがあるんじゃないの?』と今までは考えてきました。今回はそこにも行こうという話に議論の結果なったんです」

 ―なるほど

 「長年続いてきた番組には長年続いてきた理由があるわけで、それについては敬意を払わなければいけないし、我々としても軽々に判断してはいけないと思いました。慎重にというか十分に議論を深めたつもりではいます」

 ―局長自らとんねるずに終了のあいさつをした?

 「(とんねるず始めタレントとも)プロデューサーを中心に話をしました。どういうプロセスで(終了に向け)進めていったらいいか(過程は)番組ごとに違いました。とんねるずさんとも会いました。お話もしましたけど、それよりも先にプロデューサーたちが前線に立った。現場で一番向き合っている人がプロデューサー。出演者、スタッフ全てに対して、どういうプロセスで進めるのがよいのかはプロデューサーが一番把握しているので、我々編成としてはプロデューサーとのコミュニケーションを密にして一番礼を尽くす形で伝えるということ。順番も含めて。プロデューサーに力を貸してもらったという感じです」

 ―自身が編成の責任者の時に長年続いた番組を“切る”辛さはあった?

 「もちろんありました。しかし、どの時代の編成にもそういうことはある。何かを始めたり、何かを終えたりというのが編成の仕事です。辛いことですが、編成として、この時代ならこうするという決断をしたと思っています」

 ―全ては視聴率低迷が理由なのか?

 「視聴率というと非情に感じるかもしれませんけど、我々もビジネスでやっているという側面があります。より多くの視聴者に見られるための番組というのをいつも模索していなければいけない。今は視聴率というものが重要なメジャーのひとつです。よって、それを参考にしているということ。もちろん、番組ごとにいろいろな意見があって、熱狂的なファンもいて、やめて欲しくないという人もいっぱいいると思います。それを全部聞いて答えが出せればいいんですが、それは不可能です。何かを基準にしなければならないとすると、よりたくさんの方が見てくれるものを選択していくしかない。それに従って改編を進めていくことになります。それをすごく簡単に言うと『視聴率が芳しくないので改編対象になった』という言い方になる。多くの産業で売れなくなった商品は生産をやめて新しい商品に変わっていったりすることと同じだと、考えるように努力しました」

 ―とんねるずなど長年の付き合いのあるスタッフも多い。番組を終わらせにくい部分はなかったか?

 「とんねるずのお二人からは『長い間、むしろ感謝しなければいけないのは、こちらの方だ』という言葉をいただいたと聞いています。胸が熱くなりました」

 ―現在、テレビの見方もスマホ視聴や(録画での)タイムシフト視聴など多様化している中、リアルタイムの平均視聴率が今でも番組がヒットしたか否かの指標になっているのには疑問の声もある―

 「番組の価値というものを最大公約数的なものだけで測っていいのか、というのは難しい問題です。しかし先ほども申し上げたように、我々としてはより多くの方々に見ていただきたいと思っています。おそらく真の意味での完全な指標などないのかもしれません。日本中の1億を超える人にそれこそ聞かなきゃいけない。それは無理なので、統計的になるべく近似値というか、パーフェクトじゃないけど、このやり方が一番、真実に近いんだというやり方が時代、時代である。その時代の物差しですね。僕が(84年に)入社した時は(ビデオリサーチの調査対象が関東地区で)たしか300世帯でした。やがて世帯数が倍になったり、より精度を上げていったりしてきた歴史だと思います。テレビというものが、どこか最大公約数的なものを求めざるを得ないという宿命的なものを持っているのかなとは思います。今後のテレビがそのままなのか、違うカタチになっていくのかはハッキリとわかってはいませんが…」

 ◆石原 隆(いしはら たかし) 1960年10月14日、名古屋市生まれ。57歳。84年、東京外語大ドイツ語学科を卒業し、フジテレビに入社。編成部所属でテレビドラマの企画、バラエティー番組の編成に携わる。1987年「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」から編成部プロデューサーに。90年の「世にも奇妙な物語」から始まり、95年「王様のレストラン」、94~06年「古畑任三郎」などの三谷幸喜作品始め00年「やまとなでしこ」、01年「HERO」など数多くのヒット作を送り出す。三谷監督の映画「ラヂオの時間」など多くの映画作品も手掛けた。ドラマ制作センター企画担当部長、編成制作局ドラマ制作担当局長、執行役員編成局長などを経て、17年6月28日付で取締役に昇進。編成局、制作局、映画事業局、広報局を統合した新しい組織の総責任者である編成統括局長に就任した。

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