「見たいと思ってもらえる番組を作る。それしかない」…フジテレビ石原隆取締役インタビュー(4)

2018年4月8日11時0分  スポーツ報知
  • 編成、制作、宣伝の責任者としてフジテレビの今、そして未来を率直に語った石原隆取締役編成統括局長

 現在、平均視聴率で民放キー局中4位と苦戦も4月の「史上最大の改編」で復活に向けて動き出したフジテレビ。そのキーマンが昨年6月の取締役就任以来、編成、制作、宣伝の総責任者として剛腕を振るう石原隆編成統括局長(57)だ。「古畑任三郎」「王様のレストラン」など名作ドラマのプロデューサーとして鳴らしたベテラン・テレビマンが「みなさんのおかげでした」「めちゃ×2イケてるッ!」など長年続いた大型バラエティーを軒並み終了させた大幅番組改編の舞台裏と「見たいと思わせる番組を作るしかない」という今後の反転攻勢への思いまで全てを語った。(聞き手・中村 健吾)

 ―数々のトレンディードラマ、バラエティーのフジというブランドイメージは相変わらずあるが、2011年に起こったフジテレビへの抗議デモなどをきっかけに、フジテレビ自体のイメージが悪くなったのではという見方も存在する―

 「そこについては正直よく分かっていないんです。そういうこともあるかもしれません。いずれにせよ、失った好感度や信頼を回復するには、見たいと思ってもらえる番組を作るしかない。ブランドイメージを復活させるものは、やはり番組であると思うんです」

 ―なるほど―

 「僕はシンプルに考えていて、ここのところの厳しい状況になったのはお客さんが見たいと思う番組がなかったんだと。フジを復活させるためには、お客さんが見たいと思う番組を作るしかないんだと思ってます。ブランドというものはテレビ局だけの話ではないと思いますが、商品そのものの力、魅力が形成していくものだと思う。テレビにとっては、それが番組だと思います」

 ―4月最大の「目玉商品」が新月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」など―

 「面白いですよ。ごく控えめに言って、相当、面白いです。もう、クランクアップしたんですけど。古沢さんはフジの『リーガル・ハイ』『デート~恋とはどんなものかしら~』にしろ、新しくて魅力的な脚本を書く作家です。毎回新しいジャンルにチャレンジして、テレビドラマの可能性を広げているような作り手です。今回も出現感のある、新しくて魅力的な番組に仕上がっています。そして、フジテレビのプロデューサーとそのチームとの信頼関係がそのクオリティーを支えています」

 ―それは石原取締役と三谷幸喜さんの関係に似ている?

 「三谷さんはそうは思ってないかもしれませんけど。僕は一方的にそう思ってます(笑)」

 ―フジの伝統がそこにはある?

 「彼らも仲が良いから次もというわけにはいかない。毎回、脚本家、出演者、ディレクターも美術もフジでやった場合のクオリティーや信頼感みたいなもの、ここでやると自己実現ができる、完成度が高いとか、自分の理想に近い脚本が実現できるとか、具体的な理由によって裏打ちされていないと(関係が)長続きしない。相性もあるでしょうけど、古沢さんには信頼していただいていると思ってます」

 ―それは俳優、女優陣にもあてはまる?

 「そうだと思います。ドラマに限らず。番組にはそういった付き合いや流れがある。この人はこのプロデューサーを信頼しているんだろうなというのが。特にバラエティーは出演者と作り手の距離感や信頼感が大切なんだと思います」

 ―中でも坂上忍はフジの顔になりつつある―

 「現場のスタッフと坂上さんの信頼関係が熟成されたんだと思います。もちろん坂上さんはその(フジのアイコンの)1人だと思っています。坂上さんの『バイキング』は、前番組の『笑っていいとも!』があまりにも偉大だったので、プレッシャーのかかる中、坂上さんという才能を得て上昇機運に乗っていると思います。この4月から始まる坂上さんの新番組『直撃!シンソウ坂上』も心から楽しみです」

 ―狙うのは「笑っていいとも!」の再来?

 「『いいとも!』は当時、お昼にタモリさんという常識外れのすごいマリアージュ(結婚)だったのではないでしょうか。スタッフだけでも出演者だけでもなく、全てがうまくマリアージュした時にヒット番組が生まれるんだと思います」

 ―今夏、映画も公開される「コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―」など、大ヒットドラマのシリーズは今後も続く?

 「具体的なことは今、申し上げられませんが、ドラマの場合は出演者、スタッフ、脚本家がやろうというモチベーションが合致した時はやろうと思ってますし、僕自身が見たいと思ってます。『コード・ブルー』はまさに去年、そういうタイミングでした。出演者もスタッフも、みんながあのタイミングに惑星直列のようにやろうよと、みんなが盛り上がった幸せな組み合わせでした」

 ―なるほど―

 「僕はオプティミスト(楽観主義者)なんですが、それを差し引いてもこの4月(の番組)は素晴らしいと思います。坂口健太郎さん主演の『シグナル 長期未解決事件捜査班』もディーン・フジオカさん主演の『モンテ・クリスト伯~華麗なる復讐~』も素晴らしいです。『モンテ―』はご存じアレクサンドル・デュマの名作ですが、脚本の黒岩勉さんがどう料理するのか、ワクワクしています。『昼顔』の(同局制作センターゼネラルディレクターの)西谷弘の演出にもぜひ期待してください。ぜひ見て欲しい作品です」

 ―満足できる4月の視聴率目標は?

 「少なくとも今の状況は脱却したいと思ってます。それぞれの番組がそれぞれ目標を持って制作されていってほしいと思います。何%アップしろなんて言ってませんし、言うつもりもないんですけど、それぞれが、その前の番組、今やっている番組もより多くの人に見てもらえる努力をして欲しいなと思います」

 ―「変わるフジ 変えるテレビ」のキャッチコピーのもと「勝負の大改編」で仕掛けたものとは?

 「去年の10月、今年の4月、10月と3段階で勝負をかけます。この4月は長寿番組を終えて新番組に差し替えました。その新番組の中でどれを我慢して長い目で見るのか、そうした判断が求められるのが10月だと思います。改編率はこの4月が大きい。この番組たちが育っていくのが理想です」

 ―勝負はこれから?

 「編成の勝負もある。どこまで、どういう基準で我慢するのかにはルールがない。編成の判断、制作マンの感性にかかる部分が大きい。マーケティングリサーチやいろいろなデータ収集もやりますけど、中々それだけでは判断できない。こうしたデータが出れば継続だ、何ポイント以下だったら打ち切りだと、そういうことだけでもない。だからこそ、人間が編成をやっていて、人間が制作をやっているんだろうと思います」

 ―やはり勝負は感性?

 「『古畑任三郎』は1回目の視聴率を普通に考えたら、パート2はなかったかもしれません。当時、ほかの連続ドラマは、(平均視聴率)30%とか取っている時代でした。確か『古畑任三郎』はファーストシーズン平均で14%とかだったと思います。正直、抜きん出た高視聴率番組ではなかった。機械が判断したら、『はい、パート2はございません!』と言われても仕方なかったかもしれません。でも、その時の(編成)部長が僕に『何か来てますよね』と言ったんです。再放送のちょっとした数字の動きや、あの時はSNSなんてなかったので、街で(番組を見た)視聴者が話題にしていたよとか、何かあいまいな情報ではあったのですが、『じゃ、やってみるか、パート2』ってなったんです。あの作品はパート2が無ければ、あんな風(大ヒット)にはなっていないので、その見極めっていうのは本当に大事だなとつくづく感じました。データは大切だし、今後さらに精度の高いデータ収集ができるようになっていくんだろうと思います。でも人の感性というものがなくなってよい、ということではない。データの分析にも人の感性は反映されると思うんです。そんな感性の鋭敏なメンバーが制作や編成に配置されていると思います」

 ◆石原 隆(いしはら たかし) 1960年10月14日、名古屋市生まれ。57歳。84年、東京外語大ドイツ語学科を卒業し、フジテレビに入社。編成部所属でテレビドラマの企画、バラエティー番組の編成に携わる。1987年「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」から編成部プロデューサーに。90年の「世にも奇妙な物語」から始まり、95年「王様のレストラン」、94~06年「古畑任三郎」などの三谷幸喜作品始め00年「やまとなでしこ」、01年「HERO」など数多くのヒット作を送り出す。三谷監督の映画「ラヂオの時間」など多くの映画作品も手掛けた。ドラマ制作センター企画担当部長、編成制作局ドラマ制作担当局長、執行役員編成局長などを経て、17年6月28日付で取締役に昇進。編成局、制作局、映画事業局、広報局を統合した新しい組織の総責任者である編成統括局長に就任した。

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