こんな物語を私も書きたい「仁義なき戦い」が原点…「孤狼の血」柚月裕子さんインタビュー

2018年5月9日10時0分  スポーツ報知
  • 突き動かされるように「孤狼の血」を執筆した柚月裕子さん

 初恋の相手は映画「セーラー服と機関銃」で目高組の若頭を演じた故・渡瀬恒彦さんだった。麗しい外見とは裏腹に、原作者の柚月裕子さん(49)には熱い血が流れている。「本気で生きる、生き残る、抗(あらが)う、戦う―。こんなに熱量のある映画は今後も出てこないかもしれないと思います」

 2013年、本作の原点である「仁義なき戦い」を初めて見た。「1作目を見終えて…すぐ車でレンタルショップに戻って全作借りて徹夜で見ました」。普通の人なら「面白かった~」で終わるが、作家は違う。「こんな物語を私も書きたいと思ったんです」

 編集者には「暴力団を書くのは難しい」と反対されたが、説き伏せた。膨大な資料を読み込み、舞台となる広島には何度も足を運んだ。「ひるまずに書き抜いた」。物語は代表作となり、映画になって世に放たれる。

 「役所広司さんには大上(主人公の刑事)がどんな男であるかを逆に教えられ、真木よう子さんが真珠のシーンでケリを入れる姿(詳細は映画館で)も最高でした!」。さらに感情移入したのは松坂桃李(29)が熱演した新人刑事・日岡の姿だ。「迷いながらも自分の手で人生をつかみ取っていかなくちゃいけない日岡の姿は私自身にも重なりました。私も毎日、作家として生き残りたいと思いながら書いているので」。3月に出版した続編「凶犬の眼」は、試写のスクリーンで目撃した松坂の残影を脳裏に浮かべながら執筆した。

 公開初日の12日、50歳の誕生日を迎える。「偶然なんですけど、うれしいですよね。生まれて半世紀。映画と一緒に新しいステージを迎えます」。現在は完結編「暴虎の牙」を連載中。孤独な狼は凶気の犬になり、暴れる虎に姿を変え、今も生きている。(北野 新太)

 ◆柚月 裕子(ゆづき・ゆうこ)1968年5月12日、岩手県釜石市生まれ。49歳。2004年から小説教室に通い始め、初めて書いた長編「臨床真理」で09年にデビュー。同作で「このミステリーがすごい!大賞」受賞。13年に「検事の本懐」で大藪春彦賞。昨年の「盤上の向日葵」は本屋大賞第2位。山形県在住。家族は夫と1男1女。

孤狼の血特集

芸能
注目トピック