月城かなと、2組を経験して実感「宝塚って一つなんだ」

スポーツ報知
「10年、それでもまだまだ」と節目の年の主演作に気を引き締める宝塚歌劇月組スター・月城かなと

 宝塚歌劇月組の3番手スター・月城(つきしろ)かなとの初の外部劇場主演作「THE LAST PARTY~S.Fitzgerald’s last day~ フィッツジェラルド最後の一日」が、20日に終えた東京公演に続き、大阪公演が30日に幕を開ける。「華麗なるギャツビー」などで知られる米作家スコット・フィッツジェラルドの光と影を演じ「この先きっと、振り返れば、10年目にこの作品に出会えたことは財産になっているはず」。自分史にも深く刻み込みたい大舞台だ。(筒井 政也)

 華やかな美貌に、憂いを帯びる。繊細さが持ち味のスターにぴったりの作品だろう。1920年代の米文学界を席巻したが、挫折から心身をむしばみ、40年にあっけない死を遂げた名作家の激動の人生を描く。

 04年に宙組(主演・大和悠河)、月組(同・大空祐飛=現・ゆうひ)で上演され、06年に大空が再演。今回が12年ぶりの“復活”だ。2018年に生きる一役者・TSUKISHIRO(月城)が、2時間という時間で、実在の人物の心情を追体験していく構成で、「フィッツジェラルドは、自分の人生そのまましか書けない人。大衆が求めるものが大きくなり、気持ちが消耗してしまうというか、演じていてとても苦しいですね」。

 地元・関東への凱旋公演で“全身小説家”を魂を込めて表現した。「役者の私が何を感じたかがテーマ。人生を代償にしてまで書く思い…。『演じる』ことも、それぐらいのつもりでやっています」

 「華麗なる―」の映画版や1920年代が設定の舞台映像も観賞し、ファッションも参考にした。「ベースの男役は10年間やってきたものを信じ、それが少し崩れていくカッコよさが理想。野心にあふれた若い時から、全てを手にして陰っていくところまで。光と影の人生を衣装の力も借りて表現したい」。未経験だったというトレンチコート姿でも、哀愁を漂わせた。

 09年入団の花の95期生は「ようやく10年目で男役のスタートに立ったなという感じ。これより前なら絶対できない作品ですね」。雪組で育ち、昨年、月組に組替え。「誰も私のことを知らない組に行く―。怖いことでしたが、ガラッと変わるのがよかった。知らない自分を発見でき、宝塚って一つなんだと、大きな目で見られるようになりました。ちょっと大人になった自分に気付きました(笑い)」

 2組の特徴を「それぞれ違うところがいい」と断りつつ、雪組の「気持ちを一つにしてみんなで作り上げる」に対し、月組は「おのおのが持つ技術が高く、みんな個性的。誰も(キャラクターが)かぶらない」。自身は雪組前トップスター・早霧せいなの「もがき苦しみ、必死に取り組む姿勢」に多大な影響を受けた。「私も誰ともかぶらない経験をして、学んできたものがある。自分の魅力を大事にしたい」と腕まくりした。

 次回公演では「エリザベート」(8~11月)で“トップへの登竜門”暗殺者ルキーニを演じる。最近は悪役の経験も多く、骨太感が増してきた。「がむしゃらに、ぶち当たっていきたい。私が思うルキーニを表現するのは難しいと思いますが、挑戦する気持ちを忘れずに」。月城の“私小説”の続きが楽しみだ。

 ◆月城 かなと 12月31日生まれ。神奈川県横浜市出身。2009年「Amour それは…」で初舞台。95期生。雪組配属。13年「Shall we ダンス?」など新人公演主演3度。「銀二貫」(15年)、「New Wave!―雪―」(17年)で宝塚バウホール主演。17年2月に月組に組替えされた。身長172センチ。愛称「れいこ」。

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