「非常事態宣言」解除の夏は来たのか?…フジ復活はドラマから

スポーツ報知
ドラマ「絶対零度」の会見に出席した(左から)本田翼、平田満、沢村一樹、伊藤淳史

 フジテレビの7月期ドラマが元気だ。

 9日に放送された沢村一樹(51)主演の「月9」ドラマ「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」(月曜・後9時)初回の平均視聴率が10・6%を記録。34・3%を記録した「HERO」始め名作ドラマ枠ながら不振が続いた「月9」の初回視聴率2ケタ超えは昨年7月期の「コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON」の16・8%以来、4作ぶり、1年ぶりの快挙だった。

 朗報は続く。12日に放送された山崎賢人(23)主演の「グッド・ドクター」(木曜・後10時)初回の平均視聴率も11・5%。「木10」枠での初回視聴率2ケタ超えは2016年7月期の「営業部長 吉良奈津子」の初回10・2%以来、2年ぶりとなった。

 「スポーツ報知」web取材班の視聴率問い合わせに答えてくれる同局の宣伝担当者の声も弾んだ。「1年ぶりとか2年ぶりとかいう言葉を聞くと、随分長く低迷していたんだなと思います。今、社内は結構明るいですよ」―。

 この快進撃を予告していた幹部がいる。6日、東京・台場の本社で開かれた宮内正喜社長(74)の定例会見。編成担当の石原隆取締役(57)は「絶対零度―」、「グッド・ドクター」などの7月の新ドラマについて「それぞれ非常にバラエティーに富んだ内容のドラマになっていると自負しております。『絶対零度』は人気シリーズのサードシーズンで新しいタイプの刑事ものです。『グッド・ドクター』もスリリングでハートウォーミングな台本になっているなと僕自身、感じております。出来上がりが楽しみです」と大きな期待を寄せていた。

 フジの幹部が自局のドラマに期待を寄せるのは当たり前と言ってしまうのは簡単だ。だが、待って欲しい。この石原氏はプロデューサーとして三谷幸喜氏(57)と組んで「古畑任三郎」「王様のレストラン」など数々の名作ドラマを生み出してきたベテラン・テレビマン。

 昨年6月の取締役就任以来、編成、制作、宣伝を統括する編成統括局長として、「みなさんのおかげでした」「めちゃ×2イケてるッ!」などの長寿バラエティー終了を決断した冷徹な一面も持つ最高責任者でもある。

 石原氏は3月末、「スポーツ報知」の単独インタビューに、こう答えていた。

 「失ったフジテレビへの好感度や信頼を回復するには、見たいと思ってもらえる番組を作るしかない。ブランドイメージを復活させるものは、やはり、番組であると思う。ここのところの厳しい状況になったのは、お客さんが見たいと思う番組がなかったんだと。フジを復活させるためには、お客さんが見たいと思う番組を作るしかない。ブランドというものはテレビ局だけの話ではなく、商品そのものの力、魅力が形成していくものだと思う。テレビにとっては、それが番組だと思います」。

 そう、「楽しくなければテレビじゃない」のキャッチフレーズのもと、82年から93年まで12年連続で視聴率「三冠王」に輝いた栄華も昔話になりつつあった同局復活のカギはドラマ、バラエティーなど番組の中身にこそある。

 6日の社長会見、「コンフィデンスマンJP」など評判はいい反面、視聴率が伸び悩む理由を聞いた私に石原氏は、こう答えた。

 「世帯視聴率という点ではもう一歩というのは、おっしゃる通りなので…。録画視聴が多いなどの要因があると思いますが、コンテンツはしっかり届いているという思いはあります。あとはいかにリアルタイム視聴率に移動できる方策を立てたいと思っています」。

 その言葉通り、フジのコンテンツは確かに視聴者に届き始めている。6月20日に放送された「林修のニッポンドリル」が4月スタートの新番組として初となる2ケタ超え10・3%を記録。しつこいほどに日大アメフト部問題を追い続ける坂上忍(51)MCの「バイキング」も6月の月間視聴率で5・6%を記録。2014年4月1日の番組開始以来、初めて月間視聴率で横並び2位に浮上。トップのTBS系「ひるおび!」に肉薄中だ。

 昨年6月に就任した宮内社長の「とにかく視聴率を上げて業績を回復する」という大号令のもと、フジが変わりつつあるのは確かだ。

 1年前、就任早々の宮内社長が社内に発したのが「非常事態宣言」だった。フジはそこまで追い詰められているのかと、テレビ業界で話題を呼んだ、この言葉は果たして解除されるのか。

 後は17日初回の吉岡里帆(25)主演の「健康的で文化的な最低限度の生活」(火曜・後10時)の結果を待つばかり。こちらの制作は系列の関西テレビだが、フジの勢いがどこまで戻っているかを測る試金石にはなりそうな気配。3作連続初回2ケタ超えを果たした時こそ、「非常事態宣言」は解除され、フジ復活の狼煙が上がる。

 この見方は楽観的とか、そういうことではないと思う。視聴者の皆さん、その方がテレビ業界、面白くありませんか?(記者コラム・中村 健吾)

芸能

×