さだまさし「コンサートで完全試合狙う」松坂大輔の活躍に刺激

スポーツ報知
「お客さんを置き去りにしたくない。一緒に頂上まで登りたい」と語ったさだまさし(カメラ・清水 武)

 シンガー・ソングライターのさだまさし(66)が、10月に音楽活動45周年を迎える。7月に発売した「Reborn~生まれたてのさだまさし~」は、通算45作目のオリジナルアルバム。自分の音楽を“生き直そう”と、所属レコード会社をビクターエンタテインメントに移籍した。今作に込めた思い、自身の現在、未来像を聞いた。

 半世紀近い音楽人生。数多くの名曲を生み出してきたが、いまだに満たされることはない。「やりたいことの7合目まで行っていない。間に合うかな、という焦りはある」

 もっといい音楽に出会いたい。もっといい作品を作りたい。45年間、第一線を走り続けているが、貪欲な姿勢は変わらない。「今の『さだまさし』というバリューがどこまで通用するのか―。世界的なミュージシャンに声をかけたい。オーケストラを使ってやりたいことだってある」。理想とする山の頂は遠い。「登頂を目指してベースキャンプを出て、第4キャンプに来たぐらい。8合目まで行ったら、ようやく頂上が見えてくるんだけど。頂上アタックまではまだまだ」

 今回のアルバムから所属レコード会社を移籍。環境を変えた。アルバムタイトルには「再生」「生まれ変わり」を意味する英語の「Reborn(リボーン)」を用いた。「『さだまさし』そのものをリセットできないけど、ステージメンバーや照明、PAだったり、音楽環境をリセットして“生き直す”ことができる。神社に例えれば、神様は変わらないけど、神様の住まいは常に新しいものでいよう―ということ。音楽の神様からきれい、新しい、清らか、面白いものをいただきたい。神様がくれる『何か』をどうキャッチできるか。そういった環境を作って、自分に揺さぶりをかけたかった」

 今作の特徴は若い才能とのコラボレーション。ナオト・インティライミ(38)とは「ナオト・マサシ・インティライミ」名義で「きみのとなりに」「パスワード シンドローム」を制作。「パスワード―」は、きゃりーぱみゅぱみゅをほうふつとさせるエレクトロポップに仕上がった。「かなり揺さぶられた。クラブでもかかりそうな曲。ナオトのもくろみは成功したね」。ソロユニット「レキシ」の池田貴史(44)からは「黄金律」でプロデュースを受けた。「若い子が日ごろ聴いている音楽と、僕のやってきたものは音楽性、鳴らす音、組み立て方まで全然違う。そこに身を投じると、本当に楽しい。音楽には制限がないって思う。僕が無理やりに作っても、『無理してるな、さだ』と付け焼き刃に聞こえてしまう。でも、そうは聞こえないでしょ?」

 湘南乃風の若旦那(42)や森山直太朗(42)、ゆずの北川悠仁(41)らとも親交が深い。息子ほど年の離れたアーティストとの交流は「同じフィールドで戦う同胞同士の戦友感がある」という。「若旦那は彼らしい生活感、宇宙観がある。直太朗は独特の音楽観を持っているし、北川はストレートにバトンを受け取ろうとする。『俺が彼らに渡せるバトンは?』って、考えられるなんて幸せだよ。『先輩!』と慕ってくれる後輩に『さだまさし、ちょうだい』と言われるうれしさ。『俺の持っているもの、全部持っていけ!』ってなるよね」

 グレープ時代の1974年に発売した「精霊流し」がヒット。ソロ転身後も「関白宣言」「防人の詩」「北の国から」など多くの曲が世代を超えて愛されている。グレープの初アルバム「わすれもの」から毎年のようにアルバムも発売し、今作で通算45枚を数えた。

 「『何でそんなに作ってきたの?』と言われるけど、発売して1か月がたつと、何でこんなの作ったんだろう、というぐらい大っ嫌いになる(笑い)。『すごくいいアルバムできたね』と言ってくれるけど、(内心は)『次の作品はもっといいから』って。あれだけ追い込んで作ったのに早く消したいと思うんだから。不思議だよね」

 ヤクルトのファンクラブ名誉会員を務めるほどの野球好き。草野球では投手だった。エース左腕・石川雅規(38)の投球スタイルには強い感銘を受けている。「速球だけを投げて抑えられる期間は短い。頭脳を使う。コントロールやキレ、間が大事だったりする。僕は剛速球のロッカーじゃない。変化球タイプのロッカー。あの体(身長167センチ)、130キロ台の速球で160勝(8月3日現在)する彼のすごさ。そうありたいと思いますね」

 スタイルを変え、復活を遂げた中日・松坂大輔(37)の活躍も刺激になっている。「モデルチェンジだね。年を経ても、新しい自分を発見する人は格好いい。僕もベテランと呼ばれ、古参、老兵になってきたけど、ステージ運びなら今の方が面白い。ストレート(=王道のコンサート)でも、まだ勝負できると思っているけど」

 デビュー50周年について「全く考えていない」と言い切る。「無事かどうかだって分からない。自分の音楽を俯瞰(ふかん)して見るだけの余裕がないから。だから、スタッフには『毎年、周年だぞ』って言っている。現役で投げる以上、コンサートの“完全試合”を狙っていますよ。ぐうの音も出ないような、コンサートが終わった後にお客さまが立てないぐらいのものができたら、最高だね!」

 ◆健康の秘訣は「歌うこと」 5月に始まった45周年記念コンサートツアー(全50公演)は22公演を終え、12月6日の大阪フェスティバルホールまで続く。健康の秘けつは「歌うこと。コンサート」と即答する。「毀誉褒貶(きよほうへん)に始まり、言いたいことも言えない、言われたいだけ言われる。そういうストレスを引っくるめて発散している。嫌なこと、腹立つこともステージ上では考えなくて済む。上がってしまえば一生懸命。コンサートがあったから、日々を乗り越えてこられたと思う。借金もね」と笑った。

 ◆さだ まさし 本名・佐田雅志。1952年4月10日、長崎市生まれ。66歳。3歳の時バイオリンを始め、修業のため小学校卒業後に上京。72年吉田政美と「グレープ」結成。73年「雪の朝」でデビュー。74年「精霊流し」がヒット。76年に解散し、ソロ活動開始。79年NHK紅白歌合戦初出場(通算19回出場)。96年長崎県県民栄誉賞。99年米ロサンゼルスでコンサート。2001年「精霊流し」で小説家デビュー。04年長崎市栄誉市民の称号を受ける。コンサート回数は4200回超。NHK「今夜も生でさだまさし」のパーソナリティーとしても人気だ。

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