映画になった瀬川晶司五段、羽生竜王と対談に「恐縮しょったん」

スポーツ報知
トークショー後に握手を交わす羽生善治竜王(左)と瀬川晶司五段。同じ1970年生まれ

 サラリーマンから転身した異色の棋士・瀬川晶司五段(48)の半生を描いた映画「泣き虫しょったんの奇跡」(主演・松田龍平、豊田利晃監督)が9月7日に公開される。3日、東急将棋まつり(東京・渋谷東急)での公開記念トークショーで瀬川五段と羽生善治竜王(47)のツーショットが実現した。

 ステージ上で第一人者と向き合ったのは、泣き虫ではなく「恐縮しょったん」だった。同い年ながら、全く異なる半生を歩んできた2人。公式戦での対戦経験もない。緊張する瀬川五段を、羽生竜王が笑顔で受け止めるような雰囲気の中でトークショーは始まった。

 羽生(以下、羽)「自分の人生が映画になって公開されるというのはどういう気持ちなんですか?」

 瀬川(以下、瀬)「最初にお話をいただいた時はうれしかったんですけど、春だったのでエープリルフールなんじゃないかと…。今はさすがにテレくさいとか言ってられないですけど」

 羽「俳優さんが自分を演じるというのは?」

 瀬「松田優作さんが大好きだったので、龍平さんと聞いてうれしかったんですけど、ちょっとカッコ良すぎるんじゃないかと…」

 羽「松田さんは将棋界のことや瀬川さんの人となりを深く調べて演じているように感じました」

 瀬「内面も見事に演じてくださって『松田さんが瀬川さんにしか見えなかった』という人もいました。役者さんはすごいです」

 羽「撮影前にお話しする機会はあったんですか?」

 瀬「技術指導でご一緒させていただいた程度ですけど、ずっと私のしぐさを見ていらっしゃいました。あと『どうしても将棋で勝ちたい人がいるんです』とおっしゃるので、いろいろと戦法を伝授しました(笑い)」

 羽「瀬川さんに伺ってみたかったんですけど、他の世界を経験されていた時、どのように『棋士」というものは映っていたのでしょうか」

 瀬「仕事をして思うようになったのは、子供の頃から好きだったことを仕事とすることは幸福だ、ということですね。奨励会時代に分かっていれば…と思いました」

 羽「瀬川さんが生まれ育って棋士を目指していく姿が素晴らしいと思いましたし、小さな頃から関わる人々の応援する気持ち…さまざまなことが伝わる映画だなあと思いました」

 瀬「個人的には、取りえのない子供が将棋という夢中になれるものと出会う姿を、小中学生にも見ていただきたいです」

 途中、瀬川五段が「まだお礼を言っていなかったことがあります」と切り出した。「棋士に編入できたのは羽生先生のおかげでもあるんです。(2005年、編入を認めるかどうかの是非が棋士間で分かれていた時期に)週刊将棋(専門紙)で羽生先生が『拓(ひら)かれてもいい道』と発言していただいたことで流れが変わったんです。その節は…」と頭を下げると、羽生竜王は「年齢は関係ない、というところで道筋を作ったのは大きなことだったと思います」と逆に功績をたたえていた。(北野 新太)

 ◆「泣き虫しょったんの奇跡」 将棋が大好きな少年「しょったん」こと瀬川晶司は、棋士を志して養成機関「奨励会」に入るが、弱肉強食の生存競争を突破できず、年齢制限の26歳を迎えて退会する。大学生、そしてサラリーマンになった男が追い始めた夢とは―。松田龍平、野田洋次郎、永山絢斗、染谷将太、妻夫木聡、松たか子らが出演し、元奨励会員である豊田利晃監督がメガホンを執った真実の物語。127分。

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