倖田來未、「エロかっこいい」から「ママかっこいい」へ

スポーツ報知
3度の引退危機や家族についても語った倖田來未(カメラ・頓所 美代子)

 歌手の倖田來未(35)の新アルバム「DNA」が22日に発売される。2月の「AND」に続く今年2枚目のアルバムで「タイトルの通り、自分のDNAを入れ込んだ1枚。いい意味で進化した姿、音楽を一度聴いて欲しい」という。“エロかっこいい”ブームを起こし、デビュー5年で日本レコード大賞を受賞したが「当時は私が倖田來未を追いかけるのに精一杯だった」とも。見た目で誤解を受けたり、トップであり続けることへのプレッシャーもあったというが「カッコいい母親、女性を目指す気持ちにぶれはない」という。3度の引退危機や家族の話なども聞いた。

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 今年2枚目のアルバム発売となるが、それぞれに込めたメッセージがある。

 「『AND』は音楽を追究した部分はありますね。普段はいろんな方に幅広く聴いて欲しいから歩み寄ったキャッチーなポップスも入れますが、ファンクラブイベントのためというライブ用のアルバム作ろうって、コアにした部分もありました。『DNA』は『AND』と対になるように文字をひっくり返してね。あと2年でデビュー20周年なんですよ。自分の中でカウントダウンが始まっていて『いったい自分を構築しているルーツは何なんだ』と考えました。歌謡曲から始まって王道のバラードも外せないし、セクシーなダンスやアメリカンポップスだったりR&Bも。内面はロックだからそれも入れたい。いろいろな倖田來未のDNAを感じてもらえる音楽を収めました。特に『CHANCES ALL』は今作で一番言いたいメッセージなんで聴いてもらいたいです」

 今回も収録曲の作詞を手掛けている。11年に人気バンド・BACK―ONのKENJI03(33)と結婚し翌年に第1子を出産。多忙な中での作業にもプレッシャーを感じていないようだ。

 「私ね、結婚もして子供も6歳なんです。家にいると家族の時間であったり家事とか、やらなきゃいけないことがいっぱいあって、逆に『新幹線で2時間半です、1時間半です』とかいわれた方が歌詞がバーッと出てくる。缶詰めにされてできるタイプだと最近気付きました。移動中に詞を書いたり200曲近くデモテープを聴いたりの繰り返しで、ツアー中はライブで歌う曲より主に次の作品になる詞や曲を聴いてましたね」

 ―何か作詞のコツは。

 「ちょこちょこと気になったワードは書き留めてはいますが、私の場合はまずテーマを決めてその曲を聴いて、曲が訴え掛けていることを書き綴っていく感じです。この曲を書きたいと感じひんかったら、もう作家さんに任せることも多いですね。旦那には『そんなツルツル書いてできちゃうんだ』と言われます(笑い)。主人は頭で考え過ぎるタイプですが、私は感性を大事に感じるままです。自分はよく恋するタイプなんで20代の時は恋とか愛とかね。それが家族を持って人間愛にどんどん強く変わってきたのはあります」

 今年でデビュー18年。自分を見失っていた時期があったという。

 「私、3年ぐらい前、川崎のお寺にお参りに行った時に和尚さんに『ちょっとおいで』と呼び止められて『なんでそんなに丸くなったんだ。昔はとげとげしていて良かったんだけどね』と言わたんです。先方は私を倖田來未と分かっていなくて、まったくの通りすがりだったんですよ。プラスに取るかマイナスに取るか、放っておくかは自分次第でしょうが、言われたことが自分の中では図星でね。私自身はちゃんと受け止めて『倖田來未、これやったらあかんな』って思いました」

 ―実際丸くなっていた。

 「一時期やっぱりあったんですよ、丸くなった方がいいのかとか。長くやっているといろんな意味で知恵がつくじゃないですか。周りのスタッフも頑張ってる中で、無理をさせたらあかんとか。ちっちゃい妥協がどんどん積もってました。嫌われたくないとかも。どんどん年をとって弱くなってきてね…。倖田來未はライオンなんですが(本名の)神田来美子さんはウサギちゃん。すごく寂しがりなんですよ。でも今は倖田來未のやりたいこと支えたいスタッフが入ってきたくれたので尖ってますよ(笑い)」

 デビュー5年でレコ大を受賞。“エロかわいい”は流行語にもなり時代の寵児となったが…。

 「自分の中で追いついてなかった。同じ髪形やファッションをマネする女の子が出てきたりした時も『倖田來未すごいな』的な…。私は後ろから(ブームに)追いつくのが必死だった所があります。自分ではインターネットとか見ないタイプだったので、スタッフに『今、倖田來未って世の中ではどう思われてる』って聞いていました。『そうなんだ。じゃあ次はこんなことやってみる』って感じでした。基本、カッコいいと思ってもらいたいのは今も変わっていません。家族を持ってもこんな母親、女性になりたいと思ってもらいたいです。そのゴールは昔からぶれてはいません」

 デビューから順風に見えるキャリアも下積みがあってのもの。だが歌手生活の中で3度引退を考えたことがあったという。

 「20歳でデビューする前はライブハウスで深夜2時まで歌ってました。群馬や茨城に車でマネジャーと行っては誰もお客さんいいひんところで歌って『私、何をやってるん。こんなことをやるために歌手になったんじゃない』。私は売れてなくてもただ歌いたい人間ではなく、人に勇気を与えたいからこの世界を志したので見てもらえなければ歌う必要がないと思っていました。3年目に『real Emotion』が『ファイナルファンタジー』の主題歌になった時『あんな大きいタイアップで売れない歌手は見たことない』と言われ続けて『ダメならやめる』って会社にも言っていました。売れないとしたら、この世の中で私の声が求められていないのだなと、引退も覚悟していました」

 ―2回目は。

 「ラジオで不適切な発言をした時ですね。面白いトークをやりたいと思っている中で、ボキャブラリーと知恵のなさで、自分の意図としいひん所で人を傷つけました。自分は歌詞に言葉をのせてやっている仕事なのに、それはあり得ないんじゃないかなと思って謹慎しました。毎日ずっと家で泣き通しで…。人もぶわーっと離れていって、あの時ほど死にたいと思った時はなかったです。ただ復帰したのはあそこに悪意は一つもなかったということで、悪気があったら倖田來未やめてます。それ以来一気にテレビで発言するのが怖くなりました。自分が何をいってもまた何かいわれんじゃないかと思っちゃって…」

 ―3回目は。

 「結婚して息子が生まれた時です。専業主婦になるか歌を続けるか。『家庭に入っていいよ」という気持ちもあった中で主人が『倖田來未として歌っているのが好きだ。サポートするからどっちでも好きにしていいよ』と言ってくれたので『じゃあ、わたしは歌に未練があるから歌いたい』と復帰を決めました」

 サービス精神が旺盛で本音トークが持ち味。歌もファッションも全てにおいてアグレッシブが彼女の生きる道。とことん突き詰めて欲しい。(ペン・国分 敦)

  ◆息子の夢「シンガー」 将来、共演できれば

 倖田は夫をリスペクトして、子供への愛情を惜しまない。愛に包まれた家族の存在が活動の源にあるようだ。

 「旦那は太陽を浴びないとダメなタイプで毎朝ランニングしています。一日中寝てても大丈夫な私を『ランチに行こう』とか、突然に『今からサマソニに行こう』とかよく外へ連れ出してくれます。私にないセンスもあって15周年のライブでは『ギター弾いてみたら』とかいろんな提案してくれます。ライブも音楽もよく聴いて収集していて、好きな音楽しか聴かない私とは真逆ですが切磋琢磨できる仲です。普段は孫悟空みたいに子供っぽいですよ」

 ―子育ては楽しい。

 「昨日も2人で2時間カラオケに行きました。元気過ぎて私以上に喋っています。彼の可愛そうなのは楽屋で私が横にいるのに、メークして爪を治してもらっているから膝に乗りたいのに『アカン』といわれる。それを6年間見てきて寝る時も『ママお休み』と、涙をこらえながらいく隣の部屋にウチのお母さんと寝に行く姿をみると、可愛そうな思いをさせながらライブをやらせてもらっていると感じます。でもね、彼は倖田來未の大ファンで『こんなライブをやるから、僕のママはみんなのもんなんだ』って分かってるんですよ。そう、保育園の卒園アルバムで将来の夢の所には『シンガー』と書いてあった時には泣けちゃいました。将来は家族3人で(共演)なんかは夢ありますね」

 ◆「ママかっこいい」へ

 「エロかっこいい」から「ママかっこいい」へ。“かっこいい”体形もまったく変わらないまま。何か秘訣(ひけつ)はあるのだろうか。

 「寝るとすごく体のラインがシュッとむくみもとれますね。昔は18時以降は水と炭酸水でお腹を満たして食べない。それで7キロぐらいダーッと落ちました。人間、午後6時以降にどれくらい食べているのか、びっくりしますよ。ぼんぼん毎日落ちてきまから。でも20代では3日で落ちるものが、1週間とかかかるようになるんですね。私とかジムが嫌いで仕事でしかワークアウトしていない。家でブルブルみたいなのに乗ったりお腹に(腹筋ベルト)巻いたり機械任せです(笑い)」

 ◆「め組のひと」が動画サイトで大人気

 ○…2010年前に発表した「め組のひと」が動画共有サイト・Tik Tokで大人気となっている。

 「いきなりでびっくり。何ですかコレって感じです。元々、ラッツ&スターさんの歌を8年前にカバーしました。みんなで踊れて歌えて一つになれる楽曲で、振りをガールズバージョンにして、ツアーではほぼ歌っています。こんな形で人気になるとは…。昔の歌謡曲のメロの良さがあるんですかね。お母さんから聞かされたきた音楽とか。日本人に響く音楽かなって。いい曲って一生死なないんだと思いました」

 ◆倖田 來未(こうだ・くみ) 本名・神田來未子。1982年11月13日、京都府生まれ。35歳。2000年11月「TAKE BACK」にて全米デビュー。同曲で同年12月に日本デビュー。04年、映画『キューティーハニー』の主題歌となった「LOVE&HONEY」でブレイク。05年には「Butterfly」で日本レコード大賞を受賞。“エロかわいい”と人気を集め10代女性のカリスマに。同年「NHK紅白歌合戦」に初出場(通算8回)した。07年に東京ドーム公演を開催。11年に結婚し翌年に長男を出産。血液型A型。

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