松本白鸚「ラ・マンチャの男」4年ぶり来年再演、初演から50年1300回 「感無量と感謝」

2018年8月17日5時0分  スポーツ報知
  • 1969年初演時。篠山紀信氏撮影によるふん装姿の松本白鸚
  • お目見えする来年の公演ポスター
  • 1970年ブロードウェー主演時(中央)

 歌舞伎俳優・松本白鸚(75)の代表作として知られるミュージカル「ラ・マンチャの男」が、来年10月に東京・帝国劇場で上演されることが16日、分かった。4年ぶりの再演で、1969年の初演から50年、1300回の節目も迎える。昭和から平成、市川染五郎から松本幸四郎と名前が変わる中で演じ続けてきたが、「白鸚」としては初めてで、新元号での名作復活。本紙の取材に「感無量と感謝。その言葉に尽きる」と喜寿の挑戦への覚悟を語った。

 26歳で主演して半世紀。「感無量と感謝。思い出があり過ぎて。言葉もないというか。言葉が出てこないですね」しみじみとした口調だった。「ラ・マンチャの男」は、スペインの詩人セルバンテスと小説の主人公であるドン・キホーテを重ね合わせ、不屈の精神で理想を求めて生きようとする姿を描く。哲学的で難解な内容で知られる異色のミュージカルだ。「初演時に僕も含め、50年も続くと誰が想像したでしょう」

 歌舞伎、ミュージカル、ともに代表作を持つ数少ない俳優。白鸚は“ラ・マンチャ”との歩みが、「人生とも重なる」と言ってきた。長女で女優の松本紀保(46、本名・紀保子)の本名はキホーテが由来。長男・松本幸四郎(45)が生まれ、松たか子(41)が産声を上げた年も、この舞台があった。最愛の母・正子さんを失ったのは89年の大阪公演中のことだった。

 「運命的な出会いと別れ。舞台を降りても自分の中にキホーテは息づき、この役こそが僕を支え続けてくれた。決して楽ではありませんでしたが」。観客に夢や希望を届ける一方で、白鸚自身も“ラ・マンチャ”から生きる力を得てきた。

 歌舞伎では来夏まで高麗屋3代での襲名披露興行が続く。そんな中でのミュージカル発表に驚く人は多いだろう。2年前の襲名会見でも年齢的なこともあり「白鸚になって“ラ・マンチャ”は見られるのか?」と注目を集めた。その都度、「アディショナルタイムでの逆転があるかも」という意味深長な返答をしてきたが、そのひとつが、実はこれだった。

 「二度も3代襲名ができたのも奇跡。この作品を50年もやれることもそう。奇跡は起きるものでなく起こすもの。長年、応援してくれたみなさんが起こした奇跡だと思う」

 帝劇の男性座長では森繁久彌さんが72歳時に「屋根の上のバイオリン弾き」で主演したのが最高齢だった。それを白鸚が前回(2015年)上演時に更新。19日で76歳になり、節目の公演時は77歳でさらに自己記録を更新する。

 美しい旋律の名曲「見果てぬ夢」での伸びやかな低音の歌声は、つとに有名。白鸚は今もこれを英語でも歌う。観客は毎公演、前奏が始まるだけで胸が張り裂けるような思いになるだろう。「私は、一世一代は言わない。それは自分で決めるべきものじゃないから」とも言い続けてきた。超人的な異次元の挑戦になる。

 ◆ミュージカル「ラ・マンチャの男」 1965年に米ブロードウェーで初演。白鸚の父・初代白鸚が米国でこの舞台を見て感動し、「ぜひ息子にさせたい」と演出家・菊田一夫氏に掛け合い、69年日本版の初演が実現。70年には日本人で初めてブロードウェー(マーチン・ベック劇場)に招かれ主演を果たした。初代白鸚一門は1961年に松竹から東宝に移籍した時期がある。「もし父が東宝に行かなければできなかった。今も歌う時、この2人へのレクイエムだと思っている」と感慨深げ。

 ◆松本 白鸚(まつもと・はくおう)本名・藤間昭暁。1942年8月19日、東京都生まれ。75歳。初代松本白鸚の長男。46年、2代目松本金太郎を名乗り初舞台。49年、6代目市川染五郎襲名。81年、9代目松本幸四郎襲名。今年1月、2代目白鸚襲名。NHK大河ドラマ「黄金の日日」(78年)、「山河燃ゆ」(84年)など映像での主演も。長男は10代目幸四郎、孫が8代目染五郎。弟は2代目中村吉右衛門。長女・松本紀保、次女・松たか子は女優。日本芸術院会員、文化功労者。屋号は高麗屋。

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