渡辺弥生女流初段「厳しさの裏側にある勝負師の優しさ」映画「泣き虫しょったんの奇跡」感想戦

スポーツ報知
渡辺弥生女流初段

 サラリーマンから転身した異色の棋士・瀬川晶司五段(48)の半生を描いた映画「泣き虫しょったんの奇跡」(主演・松田龍平、豊田利晃監督)が9月7日に公開される。将棋界の垣根を越えた注目作の封切りに向け、映画を観賞した渡辺弥生女流初段(38)が「女流棋士の感想戦」を語った。

 原作を何度も読んでいても、やっぱり瀬川先生が夢をかなえるシーンを見ると、心の中で「バンザ~イ!」と叫んでしまいました。そんな爽快感のある映画です。

 私は晩学で本格的に将棋を始めたのは22歳の頃でした。東大経済学部を卒業した後、数学者を志して東大の理1に入り直したのですが、夢をかなえるには才能が足りないと途中で気づいて25歳で中退しました。

 何も手につかず、就職もできず、アルバイトも見つからなかった時、昼も夜も忘れてのめり込んだのが将棋でした。ちょうど瀬川先生が編入試験を合格された2005年頃で、ニュースにすごく励まされたことを覚えています。女流棋士に挑戦してみようと思った時、どこか背中を押されていたのかもしれません。

 映画には勝負の厳しさが描かれていますが、同時に、厳しさの裏側にある勝負師たちの優しさ、温かさをとても感じることのできる作品です。将棋を知らない方々にもぜひ見ていただきたいと思います。(談)

 ◆渡辺 弥生(わたなべ・みお)1979年9月2日、米国生まれ。38歳。史上初の東大卒女流棋士。2006年に女流育成会に入会し、09年に女流棋士に。新人王戦、倉敷藤花戦では観戦記者を務める。

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