Aqua Timez、初めて解散を語る「やり残したことない」…11・18にラストライブ

スポーツ報知
解散について語ったAqua Timezの(左から)OKP―STAR、mayuko、太志、TASSHI、大介

 5月に年内での解散を発表した5人組バンド「Aqua Timez(アクアタイムズ)」がこのほど、スポーツ報知のインタビューに応じ、2005年のデビューから13年間の活動を振り返り、解散を決断した背景やドラマ「ごくせん」の主題歌でNHK紅白歌合戦でも披露した代表曲「虹」の制作秘話などを激白した。

 11月18日に横浜アリーナで行われるラストライブで完全燃焼することを誓った。現在は全国ツアー中で、デビュー13周年の記念日となる24日は東京・マイナビBLITZ赤坂でライブを行う。

 最新アルバム「二重螺旋のまさゆめ」を完成させた4月、5人で話し合って解散を決断した。口火を切ったのは、曲作りの重圧を背負ってきた太志だ。

 太志(以下、太)「ずっと絞り出す苦悩を抱えてきたから、それが満タンになって『今後、これ以上のエネルギーで作品に向かうのは難しい』とみんなに打ち明けました。やり残したことはない。才能がないのに10年以上もやりきった。本当に幸せだと思う」

 いつもは「そんなこと言わず、頑張ろうぜ!」と励ますTASSHI(以下、T)も「そうだよな。やれることはやり尽くしたかな。次に向かうことはできない」と思い、何も言えなかった。OKP―STAR、(以下、O)、大介(以下、大)、mayuko(以下、m)は「自分が今後、バンドのために何ができるのか」と足元を見つめ直し、熟慮の上で「そういうタイミングなのかな」と解散を決めた。

 インディーズ時代に発表した「等身大のラブソング」が話題を集め、06年にメジャーデビュー。その後もライブの集客など苦労が多く「手応えをずっとつかめないまま、必死にやってきた。昨日まで路上ライブをやっていたのに全国ツアーが決まったり。『夢じゃないか』と思うことが何回もあった」(m)。初めてのテレビ出演はミュージックステーション。当時は音楽だけで生活できず、「次の日はバイトだった」(太)

 紅白歌合戦や日本武道館など、大舞台も経験したが、印象に残っているのはデビュー当時のこと。「やっぱり初めてCDを出した時がうれしかった。渋谷のHMVだったかな、視聴機で聴いてくれていた高校生の男の子に『これ、俺たちなんだけど、良かったら買ってね』って声をかけたこともあった。福島の田舎者が『音楽で飯を食うんだ』と言って、何とかやってこられた」(O)「紅白も、うれしかったけど、印象に残っているのは最初のCDが出た時。モチベーションがガラッと変わった」(大)

 08年には「虹」がドラマ「ごくせん」の主題歌に起用され、一躍ブレイク。当初、メロディーが決まらず、メンバー全員が、それぞれ作ることに。「僕も初めて作ったら思いのほか、好評で僕の曲に決まりかけた」(T)。そこで「もう一度、チャンスを下さい!」と太志の闘志に火が付き、「大丈夫だよ♪」でおなじみの名フレーズが誕生した。「もし僕の曲だったら、大してヒットしなかったはず。バンドの運命が変わる瞬間でしたね」(T)

 苦難を乗り越えてメンバーの絆は深まった。「バンドは家族くらい濃い縁でやっていくもの。みんな穏やかで優しい。だから、これまでやってこられた」(m)「アーティスト感はないかもしれないけど、ファンのみんなに『5人が楽しそうにやってるな』というのが伝わったと思う」(大)。メンバー同士は強い信頼感で結ばれ、不仲説は一切ない。

 5人とも解散後の活動は名言せず、「横浜アリーナが終わってから、ゆっくり考えたい」と慎重な姿勢。残り3か月、Aqua Timezの活動に集中している。

 横浜アリーナ公演では、過去最大規模の1万3000人を動員予定。「涙が出るかもしれないけど、それはそれで。OKPとTASSHIは泣くかな。mayukoもボロ泣きでしょう。大ちゃんが最後のとりで。彼が泣いたら、みんな泣くでしょう」(太)「最高のライブをしたい。まあ泣くんでしょうけど…できれば一番かっこいいAqua Timezで終わりたい」(大)。これまで支えてくれたファンへの感謝を込めて、有終の美を飾る。

 ◆8月24日がデビュー記念日

 〇…デビュー13周年の記念日にあたる24日と翌25日は全国ツアーの東京公演を赤坂BLITZで行い、9月1日に沖縄・桜坂セントラルで千秋楽を迎える。11月18日には横浜アリーナでラストライブを開催する。

 ◆Aqua Timez(アクアタイムズ)ボーカルの太志、ベースのOKP―STAR、ギターの大介、キーボードのmayuko、ドラムのTASSHIによる5人組バンド。希望、愛、切なさなど普遍的なテーマの歌詞、感情に訴える心地よいメロディーが持ち味。シングル19枚、アルバム8枚をリリース。代表曲は「等身大のラブソング」「決意の朝に」「千の夜をこえて」「虹」など。

 <取材後記>

 インタビュー中、あるメンバーは解散を惜しむファンの心情を思い涙を流し、別のメンバーは「これまで好き放題、自由にやらせてもらった。甘えてばかりだった」と苦楽を共にした仲間への感謝を口にした。

 5人の率直な言葉からは13年間、Aqua Timezに全身全霊を注いできた自負が感じられた。解散を切り出した太志も「それまで解散を具体的に意識したことはなかった。ずっと、おじいちゃんになるまで続けるつもりだった」と語る。だからこそ、知らぬ間に積もり積もった“勤続疲労”が限界に達したのだろう。

 「活動休止という選択肢もあるのでは」という気もするが、「ファンに支えられてきたバンド」を自認する彼らは「活動休止ではみんなを待たせることになる。必要以上に期待を持たせたくない」と判断した。ツアー前に発表したのも、ファンに対する誠意だった。

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