愛希れいか、入団10年目ラスト公演開幕「最高のエリザベート届けたい」

スポーツ報知
「ファンの方には感謝でいっぱいです」と笑顔で優しく手を振る宝塚歌劇月組トップ娘役・愛希れいか

 希代のプリンセスが“終わりの始まり”を迎えた。宝塚歌劇月組ミュージカル「エリザベート―愛と死の輪舞(ロンド)―」が24日に兵庫・宝塚大劇場で開幕。愛希(まなき)れいかが、憧れだった悲劇の皇后エリザベート役で花道の第一歩を踏みしめた。娘役の“トップ・オブ・トップ”は「平常心で、と思いたいですが、やっぱり最後だし、挑戦の役。死にものぐるいで最高のものをお届けしたい」と、入団10年目の集大成に全力を振り絞っている。(筒井 政也)

 硬軟自在な芝居心、切れ味鋭いダンス、伸びやかな歌声を生かし、トップ娘役を務めて現在6年4か月。花總(はなふさ)まりの12年に次ぐ歴代2位の在任記録が実力と存在感を物語るが、ついに有終を飾る3か月公演がスタートした。

 花總がシシィ(エリザベート)を演じた98年宙組公演の映像に魅せられ、宝塚入りを志した運命の作品だが、「歌に自信がなかったので、やりたい、と表に出せなかったのが正直な気持ち」。それだけに、入団10年目にしての9代目シシィとの出会いに、「私には、この時間が必要でした」。究極の心技体で、実在したオーストリア皇后に息吹を与える。

 「死」の象徴・トート(珠城りょう)に愛され、翻弄された運命を多彩な楽曲に乗せて描く。「曲がかかった瞬間、その世界に入り込める素晴らしい音楽。何としても歌いこなしたい」と、難解な旋律と格闘した。

 心情面では、演出の小池修一郎氏(63)から、花總らが表現した「はかなさ」と、男役ながらシシィを演じた瀬奈じゅんらが放った「力強さ」の中間点を求められた。男役経験もある愛希ならではの難題だが、自身と重なる部分は感じていた。

 「宝塚に入って、いろんなことがありました。自分のできなさ、葛藤など(役に)心を寄り添える部分がたくさんありますね。勉強が嫌いなのも似ている(笑い)。好きなことだけにはすごく力を注ぐ。地方(福井県)で自然に囲まれて育ち、自由奔放で天真らんまんと言われ、よくけがもしていました」。少女時代のおてんばなシシィは、愛希の本質そのものなのだろう。

 “飾らなさ”はビジュアル面でも表現する。「彼女は陶器のような肌で、化粧っ気がなかった。宝塚では作り込んだ濃い化粧をするんですが、なるべくシンプルな美しさを。高い化粧品がいいかな?と思うところを、自然で素朴なものに変えました(笑い)」

 劇中の代表曲「私だけに」に象徴される、自分らしさの体現ともいえる。「自分の個性を追求することに、力を注いできました。いつかエリザベートのように憧れられる存在になりたい、と」。前トップスター・龍真咲(現女優)、現トップ・珠城に寄り添いながら、演者としての“独り立ち”も強く意識してきた。

 後任は入団6年目の美園さくらに決まった。愛希を目標に音楽学校の門をくぐった後進も多い。「とにかく、宝塚を、娘役を好きでいてほしい。伝統を誇りに思い、大切にするなかで、自分らしさをためらわず出してほしい。怖がらず」。娘役なら誰もが憧れる役を通じ、次代に魂を継承していく。

 ◆愛希 れいか(まなき・れいか)8月21日生まれ。福井県坂井市出身。2009年4月「Amourそれは…」で初舞台。95期生。月組配属。男役から11年5月に娘役に転向。12年4月、龍真咲(退団、現女優)の月組トップスター就任と同時にトップ娘役に。11月18日付で退団する。身長167センチ。愛称「ちゃぴ」。

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