舘ひろし、モントリオール映画祭最優秀男優賞 99年の高倉健さん以来の快挙「頂けて光栄」

スポーツ報知
東映の多田憲之社長から花束を受け取る舘ひろし(カメラ・清水 武)

 カナダで開催されていた第42回モントリオール世界映画祭の授賞式が3日夜(日本時間4日)に行われ、俳優の舘ひろし(68)が「終わった人」(中田秀夫監督)で最優秀男優賞を受賞した。日本人の同賞受賞は1999年の高倉健さん以来19年ぶり。舘は都内で会見し「渡のおかげ」と先輩の渡哲也(76)に感謝した。

 「本当なのかな、どうなってるんだというのが正直なところでして…」。舘自身が最も驚いた突然の快挙だった。

 午前10時半、病院に定期検査に行くのを忘れマネジャーに電話した際、吉報を聞いた。「あ、ホントって感じ。病院をすっぽかしたのが気になってたんで」。出品は聞いていたが、授賞式の日程は知らず、気にもしていなかったという。「私が一番信じていないのは自分の芝居。最優秀男優賞なんて、43年やっておりますが1度もない。申し訳ない気持ちでいっぱい」と恐縮しきり。99年に「鉄道員(ぽっぽや)」で高倉健さんが受賞して以来だが「高倉さんは大スター。私なんかと同じにしないでいただいて…。でも同じ賞を頂けて光栄」と喜んだ。

 出世コースから外れて子会社で定年を迎えた男を演じ、審査員から「定年前から定年後の主人公の心情の変化を見事に表現した」と絶賛された。評価については「全くわかりません。楽しくやったので、それが伝わったのかな。ボールが来て、バットを出したらホームランになっちゃった」と頭をかき、中田監督や原作の内館牧子氏らに感謝した。

 照れもあって、受賞は誰にも伝えていない。最も尊敬する先輩・渡哲也には、報告しようとした矢先に電話をもらった。「『おいお前、良かったな』と言われまして、うれしかったです」とこの日一番の笑顔。「今ここに立っていられるのは渡のおかげ。あの人の『ひろし、お前には華がある』という一言でここまで来ている。渡に対する感謝でいっぱいです」と頭を下げた。トロフィーはまだ届いていないが、石原裕次郎さんの名を挙げ「トロフィーを持って(自宅の)成城か、(お墓がある)総持寺に見せに行きます。石原さんも映画の賞を取ったと聞いたら喜んでくれるだろうな」と明かした。

 8日から東京・丸の内TOEIで凱旋上映も決定。舘の活躍はまだまだ終わらない。

 ◆舘 ひろし(たち・ひろし)1950年3月31日、名古屋市生まれ。68歳。75年にロックバンド「クールス」のボーカルとしてデビュー。翌年、映画「暴力教室」で俳優デビュー。代表作にドラマ「西部警察」(79年~)、「あぶない刑事」(86年~)など。歌手としてもNHK紅白歌合戦出場2回。19日には13年ぶりのシングル「ビバ!ビバ!バンビーナ」を発売。家族は妻。身長181センチ。

 ◆「終わった人」 東大卒の銀行員・田代壮介(舘)は出世コースを外れ、出向した子会社で定年の日を迎えた。美容院で忙しく働く妻・千草(黒木瞳)からは距離を置かれ、娘の道子(臼田あさ美)からは「恋でもしたら?」とからかわれる。ところが、同郷の久里(広末涼子)と出会って思いを寄せ、IT社長の鈴木(今井翼)から勧誘を受けて人生は大きく変わろうとしていた―。内館牧子氏の同名小説を映画化。125分。

 ◆モントリオール世界映画祭 国際映連公認の国際映画祭で、世界12大映画祭のひとつ。1977年から毎年8~9月に開催されている。長編、ドキュメンタリーなどのコンペ部門と非コンペ部門で構成されており、今年のコンペ部門には23作品が出品。創設者でディレクターのセルジュ・ロジーク氏が日本映画に造詣が深いことでも知られている。

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