伊藤健太郎「幸せだ!」有村架純らから刺激受け「自分の中で何かが変わり始めた」

スポーツ報知
さらなる活躍が期待される伊藤健太郎(カメラ・小泉洋樹)

 俳優の伊藤健太郎(21)が、女優・有村架純(25)主演の映画「コーヒーが冷めないうちに」(21日公開、塚原あゆ子監督)で有村の相手役を演じた。17年の本屋大賞にノミネートされた同名小説が原作。とある街の喫茶店を舞台に、過去に戻れるという“ある席”に座った人たちの心温まる出来事を描く。伊藤は主人公と惹(ひ)かれあう大学生役を好演。作品への思い、役者としての決意などを語った。(加茂 伸太郎)

 幸福感で満たされていた。演じたのは数(かず、有村)に思いを寄せる大学生・新谷亮介。数が、いとこの店主と切り盛りする喫茶店の常連客だ。

 「店内の“ある席”に座ると、望み通りの時間に戻ることができる」という不思議な店で、伊藤は薬師丸ひろ子(54)を始め、松重豊(55)、石田ゆり子(48)、吉田羊ら演技派俳優陣と肩を並べた。「素晴らしい俳優さんたちと一緒に、モニターに映っている。クランクイン前は構えて入る部分があったけど、いざ入ると、緊張を飛び越えて『幸せだ!』という感情が勝った。皆さんの芝居を間近で見られる。うれしかったし、ぜいたくな時間だった」

 同時に芽生えた感情もある。「埋もれたくない」という気持ちだった。「緊張はゼロと言ったらウソになるけど、ほとんどなかった。羊さんはいろいろなところでアドリブを入れていた。次、何を言うんだろう。何かやらないと、やばい、やばいというのはあった」。負けず嫌いの性格。真摯(しんし)に役と向き合い、必死に食らい付いた。

 過去に戻れるコーヒーを唯一、淹(い)れることのできる数。新谷は、彼女が背負った過去と向き合えるように、手を差しのべる重要な役どころ。原作にないオリジナルキャラクターだったため、塚原監督と話し合いを重ね、丁寧に新谷像を作り上げていった。

 花火を眺めるシーンや雪山を歩くシーン、日の出を撮ろうと一緒にファインダーをのぞき込むシーン。「何でもないシーンだけど、2人の距離が縮まっていく感じが見える」。現実世界と錯覚するかのように、自然体の2人が画面に映し出される。カメラの回っていないところでは逆に、有村に導かれ、関係性ができ上がっていった。「付き合うか、付き合わないかの距離感の時期(の恋愛)が一番楽しい時期。ドキドキしながら演じました。だんだんと話をする回数も増え(ストーリー展開と同じように)打ち解けていけました。お陰で、有村さんだからって構えることもなかった」

 14年にフジテレビ系「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」で俳優デビューした。着実に力を付け、17年は5作、18年は8作の映画に出演予定。勢いに乗っている。この道に進んで良かったかには「そうですね」と声のトーンも弾む。「お芝居を『楽しい』『続けていきたい』と思ったのは『昼顔』が終わったぐらいから。納得いくまで役者をやりたい―、その気持ちが日に日に強まっている。充実感も、達成感もあります」

 21歳の誕生日に「健太郎」から現在の「伊藤健太郎」に改名した。「タイミング的にも良かった。ただ、改名したからといって、何かがガラッと変わることはない。『健太郎』と『伊藤健太郎』は違うんだぞと、成長した部分を見せられるように努力していきたい」

 今作では過去に戻ることができたとしても、決して現実が変わることはない。それでも過去に戻り、客たちは、会いたかった人との再会を望む。「『あの時に伝えておけばよかった…』と、後悔する前に気持ちを伝えてほしい。誰しも大切な人はいると思う。身近にいるのであれば、より大切にしてほしいし、会っていない人であれば、絶対に会いに行ってほしい」

 自身は過去を振り返らず、未来を見据える。最近は考え方も変わってきた。「面倒くさいと思ったことも、まずやってみる。それでダメだ、と言える方が格好いいと思えるようになった。きっかけというきっかけはないけど、自分の中で何かが変わり始めているのかな」。役者として、一人の人間として、前進あるのみだ。

 ◆伊藤 健太郎(いとう・けんたろう)1997年6月30日、東京都生まれ。21歳。モデルとして雑誌、広告で活躍。14年俳優デビュー。17年映画「デメキン」で初主演。10月期の日テレ系「今日から俺は!」(日曜・後10時半)に出演。ニッポン放送「健太郎のオールナイトニッポン0(ZERO)」(土曜・深夜3時)の第3土曜パーソナリティー。特技はバスケットボール。身長179センチ。

 ◆コーヒーが冷めないうちに 店内の“ある席”に座ると、望んだ時間に戻ることができる―。不思議なうわさを聞いた客と訳ありの常連客(薬師丸)、妹から逃げ回る女性(吉田)、過去に戻れる席に座る謎の女(石田)でにぎわう喫茶店「フニクリフニクラ」が舞台。過去に戻るコーヒーを淹れられるのはそこで働く数(有村)だけ。彼女にもまた、隠された真実があった。117分。

 塚原あゆ子監督「私は、ご覧になる方が何を見たいのかを、いつも考えています。ですが、伊藤健太郎さんに関しては、私が見せたい健太郎さんがたくさんいます。良い俳優とは、きっと作り手にこういう気持ちを抱かせる人を言うのでしょう」

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