恋愛マスターくじらが迷える子羊をＬＩＮＥで救う

　お笑いタレント・くじら（４３）が現在、恋愛マスターとしての新境地を開拓中だ。昨年４月から始めたＬＩＮＥの「恋愛マスターくじら」は友だち数が１万３０００人を突破。自身に離婚歴がありながらも、恋に迷える会員からの熱烈な支持を誇る。今ではお笑い活動よりも執筆活動で多忙な日々。今回の「笑いのＨｏ！石」では、恋愛マスターが教える恋の極意に迫る。（浦本　将樹）

　金髪の中肉中背に愛嬌（あいきょう）あふれる笑顔。恋愛の達人は渋さで勝負するタイプのようだ。「よく『その顔で恋愛マスターとか言うな』と突っ込まれますよ」と笑う。

　昨年４月、芸人仲間の勧めで始めたアプリのＬＩＮＥの恋愛相談サービス「恋愛マスターくじら」は評判が評判を呼び、今や登録者数が１万３０００人を超える人気コンテンツに。毎日来る恋愛相談から１通をピックアップ。長文のアドバイスを会員全員に配信する仕組みだ。相談は多い日で１００件以上。「特にテレビに出た直後は増えますね」。インタビュー中も悩める声を受信し続ける。

　かつてはフジテレビ系「とんねるずのみなさんのおかげでした」のコーナー「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」で「バス釣り」「ハスラー」シリーズで人気を博したが、今や生活が逆転した。ＬＩＮＥ、ブログ、メルマガ、雑誌連載など多くの仕事を抱える。「人前でライブするより、家で長い時は朝９時から夜中１２時までずっと書いている」と売れっ子作家状態だ。

　恋愛相談を送ってくるのは９割が女性で、多いのが２０代から３０代。中には１０代少女の「好きな人にどう思いを伝えればいいですか」から、５０代女性の「社内でダブル不倫をしてしまい…」まで。「年上になるとだんだん内容もヘビーになってくるんですよ」

　それら全てに目を通す。選んだ後は「中途半端にやっても面白くないから」と１時間以上かけて真剣に返信。「会ってくれないのは、相手にとってあなたの優先順位が低いから」「あなたは自分で自分を被害者にしている」など時には辛口な言葉も使う。

　「恋愛マニュアルとかで『結婚がゴール』という言葉などを真に受けると苦しくなる。恋愛の目的は『一緒にいる』ということだけ。結婚はただの制度だし、長い恋愛の一つの通過点。みんな思い込みなんです。彼氏できないと不幸だ、結婚できないと不幸だって。他の価値を見いだせば人生楽しくなるのに」

　マスターの教えに共通するのは「客観的な目線の重要性」だ。「容姿的に１人声をかけただけで振り向いてくれる人もいる。１０人かけて１人の人もいる。だったら１００人に声をかければ１０人から選べるでしょう。自分が人からどう見えるのか、何を持っているのかを把握するのが恋愛がうまくいくコツ。言い寄られもしないのに『誰か声かけてくれないかな』って思っているだけだと、そのまま年を取るだけ」

　そういう自分は２０１６年に離婚し、１７年に再婚した。「今大事にしたい人と一緒にいる。それが全て」と過去は気にしない。「恋愛は人の数だけあると思うし、前のパターンが生かせるわけがない。僕も離婚している時点でその程度の気持ちだったということ。よく別れの言葉を検証する人もいるけど、あれも意味はない。だいたい後付けなんだし、今一緒にいないという現実が全て」

　今年３月の著作「世の中には、誰とでも幸せになれる人と、誰といても幸せになれない人の二通りしかいない。」はＡｍａｚｏｎ恋愛本ランキング１位に輝いた。「締め切り間際には１０円ハゲができちゃって」と頭皮に負担をかけながらも執筆を続ける。

　リッチな印税生活かと思いきや「原稿料って少ないんです。しかもＬＩＮＥアプリも何十万円とか自腹で運営しているので、その穴埋めして何とか生活できるレベル。芸人時代の収入をやっと超えた程度ですね」と笑う。

　著作は第２弾「『愛されたい』そう思うことが、すでに間違っている。」（１１月１日発売）が決定。そして第３弾の話が来ている。「恋愛相談ってお笑いと似ている。相談者がボケで僕が突っ込み」と、やってみて得たこともある。また、出版社からは恋愛小説のオファーも届いているという。お笑い界では又吉直樹が芥川賞を受賞している。「賞は、ないでしょう」と謙遜するが「やる前に『できない』というのは好きじゃない。一度やってみるのはありかも」と作家活動にも前向き。“三足目のわらじ”も見え始めた。

　◆くじら（本名・佐々木憲夫）１９７５年４月１２日、東京都生まれ。４３歳。９４年デビュー。２０００年、お笑いコンビ「ゆうえんち」結成。０６年に解散。１０年、水木しげる記念館主催「妖怪そっくりコンテスト」優勝。「Ｒ―１ぐらんぷり」には０６、０７、０９、１１年に準決勝進出。趣味は釣り、ゴルフ、特技はビリヤード。実家は都内のビリヤード場。