藤井彩子アナウンサー、目標は「生涯NHK」と「落語家女将」の両立

2018年11月13日16時0分  スポーツ報知
  • テレビからラジオへ活躍の舞台を広げたNHK・藤井彩子アナウンサー。「生涯NHKアナ」と「落語家の女将」との両立を目指す
  • 古今亭菊之丞
  • NHKの女性アナで初めて99年の高校野球を甲子園で実況(本人提供)
  • 「おはよう日本」でジーコJAPANのニュースを伝える藤井アナ(本人提供)

 輝く舞台はテレビからラジオへ、NHK・藤井彩子アナウンサー(49)は新たなステージでキャリアアップしている。同局女子アナでは初めて高校野球を実況するなどスポーツキャスターとしても活躍した人気アナは現在、NHKラジオ第1放送の平日朝の情報番組「すっぴん!」(月~金、午前8時5分~11時49分)を担当。放送開始から7年目に突入し、明るい笑い声を響かせるなど新たな一面を見せる一方で、落語家の妻として女将(おかみ)として、日本の伝統芸能を発展させるべく、尽力する毎日だ。

 明るい笑い声が元気を与えてくる。パーソナリティーとの軽妙なトークの合間に、藤井アナの新たな魅力が放たれる。聴いていると、朝からテンションが上がってくる。

 「笑うの、最初は悩んだんですよ。アナウンサーって、そんなに笑わないし、笑い声はむしろ抑えて、お客さんがいればお客さんがやるところだし、出演者の方がいれば、リアクションは出演者の方の役回り。でも、ここは面白いところなんだよっていうことを笑いによって伝えることもできるな、と思うようになってからは割り切れました」

 NHKラジオ第1放送「すっぴん!」の番組開始から7年目。その立ち上げから携わる。日替わりパーソナリティーを相手にアンカー役を務め、テレビ出演時よりも親近感が湧き、距離感もグッと近くに感じる。

 「ラジオは不思議なメディアで、テレビはマスのメディアだけど、ラジオは個のメディアなんて言われ方をして。不特定多数の方に向かって放送しているけど、聴かれる方は自分に向かって言われているような気がする。位置関係が近い。だから、いくら取り繕っても素の人間っていうのは出てしまうんですよね」

 番組名の由来はまさにそこにある。取り繕わない“すっぴんトーク”を目指し、NHKラジオセンター製作の番組としては、著名なパーソナリティーを日替わりで据え、アナウンサーとのコンビ進行は初めての試みだった、という。

 「今までとは違う番組を作りましょうっていう大命題があったので、そこを任されたのは非常に光栄なことでした。フリートークとか、遊びの部分がラジオの醍醐(だいご)味だと思うので、そこは打ち合わせもしないですし、これはしゃべらないでくださいね、とかは言わずに、出たものをそのままやっていく。で、まずいところはお前が何とかせい、みたいな感じの位置づけで始まって。ある程度年齢がいってきて、そういうこともできるだろうっていうことで任されたのかな、という自負は、ありました」

 入局して26年目。松江、大阪の各放送局を経て、東京のアナウンス室ではスポーツ畑で活躍。99年にはNHKの女性アナで初めて高校野球の実況を担当。スポーツキャスターも務めた。

 「スポーツへのこだわりはすごくありました。自分が希望しましたし、思い入れも。高校野球の実況を最初やらせていただいて、ほんと実況で生きていきたいって気持ちは強かったんです。そのつもりで勉強もして、これからやっていけるとも…。今夏の100回大会で19年ぶりに2人目の女性アナウンサーがしゃべってくれてうれしかったんですけど、自分に2回目がなかったのもそうですし、その後、19年続かなかったのもちょっと残念ですね」

 実況を務めた後に「ニュース10」や「おはよう日本」のスポーツを担当し、メインの階段を上ったことで、逆に実況の現場から離れてしまった。その後、大阪放送局への転勤を経て、情報番組やバラエティー番組の進行も務め、活躍の場を広げ、そして今。ラジオで新境地を切り開いている。

 番組では6年間で延べ1300人ほどの各界ゲストにインタビュー。藤井アナにとっては大きな財産の蓄積だ。

 「来年度始めには1500回目の放送があって、これまでのインタビューを数えたら、うわっ、こんなにあったんだと。今やっている番組を与えていただいて、一つ、自分の背骨と言えるようなものになりつつあるのかな、ぐらいの、初めてそういう立場というか、考え方に至れたって感じですかね。これだけ蓄積ができたってことは、ラジオでも恥ずかしくない人間にちょっとずつ成長しているのかなっていう気はします。まだまだですけどね」

 10月24日の放送では総合テレビの情報番組「あさイチ」とのコラボが実現。久しぶりにテレビ生出演した。

 「スタジオでああいう形で出るのは2、3年ぶりぐらい。テレビにもっと? いやいや(苦笑い)。でも、番組へのお便りでも、もっと出てくださいというのもたくさん頂いて、本当にありがたかったです」

 アナウンサーが活躍の場を広げる時、フリーになる選択もある。同じ49歳で、先輩の有働由美子アナは退局の道を選んだ。

 藤井アナにその考えは。

 「そんな力は自分にないっていうのが一番大きなところだと思います。勇気もないのと。何か一つの道を究められたら可能性としてあるのかもしれないですけど、自分の専門分野とか、これだけは人に負けないというところが構築できるまでは出てもしょうがないと思っていた、というか、思っているんです、今でも」

 生涯NHKのアナウンサーとしてキャリアを重ねていく考えだ。その一方で、人生後半戦、藤井アナにはもう一つ、目指す道がある。13年に新鋭の落語家・古今亭菊之丞(46)と再婚。

 「今やっているNHKのアナウンサーに、落語家の女将さんというのが仕事として加わったので、それはやっぱり人生観も働き方も大きく変わりました」

 落語家の女将さんって。

 「歌舞伎俳優の『梨園の妻』とは違って、落語会の度に着物を着て玄関に立ってます、みたいな感じでは全然ないんですよ。落語会にほとんど顔を出しませんけど、節目の時に行って、ごひいきにごあいさつ申し上げたりとか。あと、物販手伝うとか(笑い)」

 9月9日に湯島天満宮で行われた落語協会主催のファン向けのイベント「謝楽祭」では、夫の手伝いから屋台の前に立ち、たこ焼きを作って、振る舞った。

 「たこ焼きが、私、好きなんですよねー。関西での生活も私は長かったので」

 落語家の女将にとって、しかし、一番は、弟子の面倒を見ることだという。

 「今、うちは1人で、女の子なんです。ちょうど前座になって半年ちょっと。女の子で男の師匠ですから、生活面とか悩みとか体調とか相談に乗ったり。あとは、私は一方でアナウンサーなので、しゃべり方とか声の出し方とか。そういうところで教えられることは伝えていこうと。男ばっかりの世界で女として落語の道を究めたいっていうのは、自分がスポーツ実況に挑戦した時のような感じがあるので、すごく応援したいという気持ちもあります」

 二足のわらじを履きながら歩むこれからの道のりには、ワクワク感が漂う。

 「それはありますね。50歳っていうのは一つ大きなターニングポイントで、人生後半戦、サラリーマン人生も終盤。何ができるのか、大きなテーマですし、一方で、夫がこれからどういう芸を作っていくのか、そこをサポートするっていう意味では非常に楽しみというか、面白いですよね」

 人生は一度きり。これからの夢を、改めて。

 「自分がこの組織に入ったのは、やっぱりしゃべりたい、自分の言葉で何か大切なことを伝えていくことがテーマだったので、とにかく一日でも長くしゃべり続けることと、一方で夢を持っている落語家の後輩たちが自分の言葉で落語を伝えたいっていう、そういう子たちを育成するっていうのも。これ言うと、上司に、お前はNHKの中で育成はしないのかって言われるんですけどね(笑い)」

 ◆「すっぴん!」で生活情報を提供中

 NHKラジオ第1放送の情報番組「すっぴん!」は祝日を除く月~金の8時5分~11時49分に放送。30~40代の若い層を中心に、幅広い生活情報を提供。曜日別パーソナリティーによって番組内容も異なり、月曜は劇作家・宮沢章夫、火曜はタレント・ユージ、水曜はミュージシャンのダイアモンド☆ユカイ、木曜はお笑いコンビ「麒麟」の川島明、金曜は作家・高橋源一郎。番組ブログはhttp://www.nhk.or.jp/suppin-blog/

 ◆藤井 彩子(ふじい・あやこ)1969年8月23日、東京都生まれ。49歳。大阪府立北野高校を経て青山学院大学文学部卒業後、93年にNHK入局。松江、大阪放送局を経て、東京アナウンス室で2000年から「ニュース10」で、02年からは「おはよう日本」でスポーツを担当。再び、大阪放送局を経て、09年に「きょうのニュース&スポーツ」でメインキャスターも務めた。

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