岩井俊二監督、海賊盤に大感謝!? 代表作映画「Love Letter」秘話

スポーツ報知
岩井俊二監督

 小説家でもある岩井俊二監督(55)に16日、話を聞く機会があった。

 東京・ブックファースト新宿店で行われた最新映画「Last Letter」の原作小説「ラストレター」のトークショーの前に囲み取材の時間が設けられた。記者は6人のみ。「孤高」のイメージが強い映画監督だけに、めったにないシチュエーションだったといえよう。

 当然、聞きたくなったのは今作のモチーフにもなった代表作映画「Love Letter」(1995年)について。中山美穂が主演した同作は当時、国内で大ヒットを記録しただけでなく、人気はアジアにも波及。韓国や台湾、中国の映画監督や俳優に取材する際に「日本映画で好きな作品は?」と尋ねると、必ずと言っていいほど挙げられる一本だけに、生みの親は公開から23年が経った今、どう位置づけているのだろうか…と気になる。

 「僕にとっては処女作のような初長編映画ですから、あのブレイクスルーが無ければ今どうなっていたか…。アジアで友だちもたくさん出来たし、音楽活動まで出来て、ウェイボー(中国版ツイッター)のフォロワーは100万人を超えて…不思議な現象がたくさんあって、お客さんと向き合うことを教えられました」

 ふむ。やはり忘れ難い作品だったのだなあ、などと思っていると意外なことを語り始めた。

 「アジアで評判になって海賊盤も出回りましたけど…そのおかげで今があると思っています」

 え? 海賊版のおかげ?

 「いや…海賊版があって本当に良かったかなと思います。手にしてもらうということが、こんなに重要なのかと知りましたから。(製作の)フジテレビがどんどん規制を掛けていたら、こういうことにはなっていなかった。コピーライトと言いますけど、コピーレフトですね。エンターテインメントの発想を勉強させられました。それによって、その後の20年間のものの作り方が学びとなって帰ってきて、自由になれた。もっと囚われていたら、ステレオタイプな表現者になっていましたよ」

 著作権や商標権などがどんどん厳格化している現代のエンターテインメント業界だが、逆の視点もあったらしい。

 今回の小説と、撮了した映画について「『Love Letter』を見て下さった人たちに、ありがとうの気持ちを込めた作品になりました」とメッセージを語る。松たか子、広瀬すず、福山雅治ら豪華キャストが出演した「Last Letter」は来年公開。再びアジアで海賊版が出回ってしまった場合、岩井監督はどんな感想を抱くのだろうか…。(記者コラム)

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