【報知映画賞】助演女優賞・樹木希林さんの長女・内田也哉子さん感動スピーチ全文

スポーツ報知
樹木希林さんの着物を着て表彰式に臨んだ也哉子さん(右、左は第40回報知映画賞で主演女優賞を受賞した樹木さん=2015年12月)

 助演女優賞は9月に亡くなった樹木希林さんが3度目の栄冠。代理として長女でエッセイストの内田也哉子さん(42)が、母が愛用した着物で登壇した。

 ◇也哉子さんスピーチ全文◇

 本日は、このように皆さまの思いがつまった賞を頂き、ありがとうございます。また、母が最後のひと時に出会うことのできた3作品の関係者お一人お一人に、遺族として感謝申し上げます。

 ちょうど母が居なくなり、3か月がたちました。もう少し、母の声が聞こえたり、夢で会えたりするものかと思っておりましたが、見事に、これっぽちも母は出てきません。本当に人が死ぬって、こんなにキレイさっぱりなかったことになるんだなぁ、と呆気(あっけ)にとられる今日この頃です。

 ところが、私は生まれて初めて親が役者でよかったなあと思いました。映画のスクリーンやDVDやネット配信の映像の中に、母がいつでもいるのですから。

 家庭では台本を開く母の姿が記憶にないほど、ご飯を作ったり、掃除をしたり、縫い物をしたり、と当たり前の日常を生きる人でした。なので、私にとって唯一、彼女が役者であると実感できたのは、完成した映画を見るときでした。

 この3作品の撮影中においても、いつも通り、家の用事を済ませ、一人で運転して現場に行き、寒くても暑くても、深夜まで仕事をし帰宅する様子は、まるで全身にがんが転移しているとは思えない佇(たたず)まいでした。

「私は役者をやるために生きているわけじゃなくて、生きるために役者を生業(なりわい)としているのだから…」

という生前、口にしていた言葉に合点がいきます。

 そういえば、母は人に褒められるのが苦手で、「何々が素晴らしかったですね~」と人に声をかけられたら、「そうでしょう?」とすぐさま同意するのです。そうすれば、相手も絶句して、話が早く終わるからって。きっと今日の受賞についても、どこかで「死人に賞あげるなんて物好きねー で、賞金いくら?」なんて、憎まれ口を叩いていると思います。

 映画関係者におかれましては、生前、「真剣といいかげん」の狭間(はざま)にいたあまのじゃくな母に辛抱強くお付き合いいただき、心からお礼申し上げます。本日は誠にありがとうございました。

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