史上最年少囲碁プロになる9歳の仲邑菫さんが井山裕太5冠苦しめた

スポーツ報知
堂々とした手つきで碁石を打つ仲邑菫さん(カメラ・馬場 秀則)

 今年4月1日付で史上最年少の10歳0か月で囲碁のプロ棋士となる仲邑菫(なかむら・すみれ)さん(9)が6日、東大阪市役所で日本囲碁界の第一人者である井山裕太5冠(29)と公開対局を行い、時間切れによる打ち掛け(途中終了)となった。「打ててうれしかった」という小学4年生の天才少女に対し、井山5冠は「今まで見たことがない才能だと思います。自分の9歳の頃とは比べものにならないくらい強い」と絶賛した。

 史上最年少プロ棋士となる9歳と、2度の7冠で国民栄誉賞を受賞した囲碁界のレジェンドの対局は、勝敗がつかないまま終了した。この日、東大阪市役所で開催された「井山杯 新春囲碁フェスティバル」で、昨年の井山杯小学生の部優勝者として記念対局を行った。

 父の仲邑信也九段(45)と手をつないで姿を現した菫さんは、座布団を2枚重ねにしたイスで向き合った。最もハンデが少ない「先番」で戦い、約1時間20分後の打ち掛けの時点では井山5冠が優勢となっていたが、「こちらがはっきり言って押されているというか、非常に苦しい内容でした」と、井山5冠が苦笑いで振り返ったほど。昨年の同大会でも対局しており、「この1年の菫さんの成長速度と努力に大変驚かされております。ほんと恐ろしい子だなと思いました」と、本音をのぞかせた。

 日本棋院が前日にプロデビューを発表したばかりとあって、菫さんへの注目度は一気にアップ。テレビカメラ約20台、約100人の報道陣が詰めかける“菫フィーバー”に、日本棋院からは早くも当面の間は家族を含めて個別取材の自粛要請が出た。

 対局を見守ったあるプロ棋士は、「師匠(信也九段)譲りの王道ですね。最近では珍しいくらいの王道の中に、最新の囲碁も取り入れている。あの若さで集中力がすばらしい」と、菫さんのすごさを分析した。だが、対局後の会見では一転してモジモジ。この日の対局の感想を問われると、父と顔を見合わせながらはにかんだ照れ笑いを浮かべ、「打ててうれしかった」と言うのが精いっぱいだった。

 そんな菫さんに、井山5冠は「男性に交じっても十分天下を狙えるという才能だと感じました。菫さん自身も大変なこともあるかとは思いますけど、あまり重荷に感じずに、ご自身のペースで進んでいただければ、これからすごい棋士になっていかれることは間違いない」と、エールを送っていた。

 ◆仲邑 菫(なかむら・すみれ)アラカルト

 ▽生まれ 2009年3月2日、大阪府出身。9歳の小学4年生

 ▽父 日本棋院関西総本部所属の信也九段(45)

 ▽母 元囲碁インストラクターの幸(みゆき)さん(38)

 ▽囲碁歴 3歳から

 ▽修業 昨年から両親とともに韓国・ソウルへ渡り本格的に勉強

 ▽プロ入り 日本棋院が中国、韓国に対抗するプロ棋士養成のため新設した「英才特別採用推薦棋士」第1号に選ばれた

 ▽好きな食べ物 焼き肉とキムチ鍋

 ▽好きな教科 体育

 ▽尊敬する棋士 井山裕太5冠

 ◆仲邑菫さんの主な戦歴(相手の肩書や年齢は当時)

 ▽5歳6か月 14年9月21日、朝日・関西アマ女流名人戦でアマ初段~アマ三段のクラス「Bグループ」で優勝。有段者グループでの史上最年少V。

 ▽6歳2か月 15年5月31日、朝日少年少女名人戦府大会「小学生の部」で高学年の男子に勝つなど、45人中4位に入賞。

 ▽7歳2か月 16年5月5日、35人が参加した「朝日少年少女~」で優勝。

 ▽7歳6か月 16年9月25日、「朝日・関西~」でアマ四段以上のクラス「Aグループ」優勝。

 ▽8歳 17年11月、韓国国内の学生大会で小学生低学年の部で優勝。

 ▽8歳10か月 18年1月6日、イベント「井山裕太杯」で井山裕太7冠(28)と「置碁」(仲邑さんが圧倒的に有利なハンデ)で打ち、健闘するも打ち掛けに。井山7冠は「自分も小学3年生の時に全国大会で優勝したが、その時よりも強いかもしれない」。

 ▽9歳9か月 18年12月13日、採用試験対局で張栩名人(38)と「先番逆コミ」(仲邑さんが比較的有利なハンデ)で打ち、引き分け。張栩名人は「衝撃的。小学生時代の井山さんとも打ったが、当時の彼より上を行っている」。

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