海老蔵、祖父から美貌と人気を 父から揺るがない精神を受け継ぐ…團十郎襲名

スポーツ報知
1984年11月26日、12代目團十郎の襲名披露会見では、市川海老蔵(当時)(右)と「堀越孝俊」として出席

 歌舞伎俳優の市川海老蔵(41)が来年5月に13代目市川團十郎白猿(はくえん)を、長男の堀越勸玄くん(5)が8代目市川新之助を襲名することを14日、松竹が発表した。

 待ちに待った團十郎が誕生する。海老蔵が生まれ変わり、13代目市川團十郎白猿としての姿を早くも想像している。

 さて、海老蔵さん。成田屋の團十郎とは江戸歌舞伎の総本山、お江戸の守り神の名称であったのは骨の髄までご承知でしょう。父親の12世團十郎という名優は團十郎とは何者か、何をなすべき俳優かを考え抜いた人でしたね。あなたが祖父11世に憧れ、父を尊敬してきたのを皆知っています。その祖父からは美貌と人気を、父からはド~ンと大きく揺るがない精神を受け継いだと思っています。

 まだ小学生の頃でしょうか、成田山で父親と楽しく豆まきをしていた中にも鋭さを見せていた眼(め)を思い出します。海老蔵襲名会見で「今度は海老。海老だぜ」などとテレ性を隠していたものの、その若き海老蔵時代は暴れまくっていましたね。時には自分の舞台写真の掲載に注文を付けたり、強引な企画を提案したかもしれません。それも熱意の裏返し、と思う。地方巡業の会見で私と禅問答のような受け答えをしたのも歌舞伎との付き合いを模索していたのでしょう。

 11世から12世まで20年。12世から13代目が誕生するまで7年。ようやく團十郎不在の時代が終わる。楽屋では同世代と陽気に行き来して、先輩にはきちんと礼儀を尽くしていました。

 お父さんは生前、しかるべき時期に團十郎を譲り、自身は栢莚(はくえん)を名乗る考えを持っていたのをご存じでしょう。その父の葬儀であなたは「父が伝えてくれた歌舞伎の精神を受け継ぐ」と挨拶しましたね。「思うがままにやればいい。わたしはあなたを信じている」。天国に問えば12代目さんはそう答えるでしょう。とてつもなく大きいスケールの13代目を待っています。(演劇ジャーナリスト・大島幸久氏)

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