富田靖子、とんがった一人より大勢で作品を作る幸せ…「めんたいぴりり」で博多華丸とおしどり夫婦役

スポーツ報知
映画への思いを語った富田靖子

 女優の富田靖子(49)が出演した映画「めんたいぴりり」(江口カン監督)が18日、全国公開される。青春映画を飾った女優の一人として今も語り継がれる存在だが、昨年は高く評価された主演舞台「母と暮せば」での好演など充実した仕事が続く。1983年に映画で始まった俳優人生は今年37年目。「女優観」は、どのように変化してきたのだろうか。(内野 小百美)

 辛子明太子を日本で初めて作って販売した「ふくや」創業者・川原俊夫氏をモデルにしたテレビドラマ(2013年)の劇場版。ドラマ同様、主人公を博多華丸(48)、その妻を富田の配役で、ちょっと激しいおしどり夫婦を演じている。戦争の傷痕が残る昭和30年代の福岡が舞台だ。

 中3まで福岡で暮らした富田には、明太子の懐かしい思い出がある。「この映画のように毎朝食べられるものではなく、節目にいただく高価な食べ物。中でも『ふくや』さんのものは別格なんです」といい、「いろんな明太子がありますが行き着く先はここ、という認識。その創業者のお話と聞き、引きつけられて。でもドラマと映画で6年間も携わるとは想像しませんでした」

 主人公は困っている人がいると放っておけない性格。家族そっちのけで他人を助けてしまう。夫に怒り、あきれながらもほれ直す良き妻で肝っ玉母さんを存在感ある演技で見せている。

 「今回の私の一番の“テーマ”は映画から初参加した子供たちが尻込みせず本当のお父ちゃん、お母ちゃんと思ってくれる現場にすることでした」。撮影が始まってしばらく。子役たちが出番後も帰らず「もう少し残ってここにいたい」と言ってくれた時、胸がいっぱいになったという。

 83年にデビュー。女優人生は37年目に入った。「アイコ十六歳」「さびしんぼう」で大林宣彦作品に抜てき。スクリーンで強いインパクトを与えた。「今も『さびしんぼう』のパンフにサインを求められます。何年も前のものを大切に持ってくださっていることに驚き、感動しますね」

 映画が持つ力を誰よりも知り、育ててくれた感謝の気持ちもある。「おそらく今も私のホームですね。いろんなドラマや舞台もやらせていただいてきましたが、最終的に帰るところは、やっぱり映画なのだと思います」

 07年に生まれた富田の娘も、自分が仕事を始めた14歳に近づいている。新人離れした演技力で、一身に注目を集めた。その頃を冷静に振り返ることができる。「鼻っ柱が強く、怖いもの知らず。とんがってましたね。自分はお芝居が得意だという思い込みが、揺らぎ始めた時期でもありました」

 自身を客観的に見つめる力が、「演じること」を続けさせたとも言える。これからも青春映画で感動を与えた俳優の代表格の一人として語り継がれるだろう。

 「一人で何とかしないといけないと思い、当時は、とんがるしか方法論を見つけられなかった。でも今の私は、自分よりも子供の演技が輝いてほしい、と思えたり。大勢で作品を作れることが喜びであり、幸せ」。今作は、映画作りの醍醐(だいご)味を改めて気づかせるものとなった。

 江口カン監督

 「撮影が始まる前の読み合わせ時の華丸さんと富田さんを見て『ずっとこんな夫婦を撮りたかった』と思わせてくれました。撮影現場もファミリー感があり、富田さんに頼り切っていました。笑いと涙がいっぱい詰まっており、楽しんでもらえると信じています」

 ◆めんたいぴりり 「ふくのや」を開業した海野俊之(華丸)は、妻の千代子(富田)と小さな店を切り盛り。明太子作りで納得できる味ができず試行錯誤の日々。そんな中、息子・健一の小学校の同級生・英子の存在を知る。彼女は両親を亡くし親戚の元で暮らすが、遠足に行くための新しい靴もリュックサックも買えない境遇に置かれていた。俊之は何とかしてやりたい、と思い始める。115分。

 ◆富田 靖子(とみた・やすこ)1969年2月27日、神奈川県生まれ。49歳。薬師丸ひろ子に憧れ女優を志す。83年映画「アイコ十六歳」のヒロインでデビュー。主な映画に85年「さびしんぼう」、87年「BU・SU」。97年NHK大河ドラマ「毛利元就」、2018年舞台「母と暮せば」など。07年ダンススクール講師の岡田裕治氏と結婚し、同年女児を出産。漫画、アニメに詳しいことでも知られる。25日公開の映画「愛唄―約束のナクヒト―」にも出演。

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