広瀬章人竜王、羽生九段と死闘「棋士人生のターニングポイント」

スポーツ報知
竜王杯を手に笑顔を浮かべる広瀬章人竜王

 第31期竜王就位式が15日、都内で開催され、広瀬章人竜王(32)に竜王推挙状と竜王杯が授与された。昨年12月、前竜王の羽生善治九段(48)との死闘を制して新竜王となった男は「妻に感謝を」と語りながら、棋王戦や順位戦など他棋戦での活躍も誓っている。また、藤井聡太七段(16)ら各組優勝者も勢ぞろいし、それぞれ喜びを語った。

 ステージ中央。広瀬の立つ場所が将棋界の頂点だった。5人の組優勝者たちが見守る中、マイクに向かった。「竜王を奪取して1か月くらいたちますが、このような場に立って実感を覚えます。これからも竜王にふさわしい活躍ができるように頑張ります」。そして全棋士が夢見る棋界最高位の称号を2度、繰り返した。

 7番勝負は羽生の通算100期か27年ぶりの無冠転落かという劇的なシリーズになった。「どちらに転んでも自分は歴史的な役割を握っていた。棋士人生のターニングポイントだと思って臨みました」。連敗スタートし、第5局で先に王手をかけられながら、ビッグタイトルをモノにした。

 壇上では触れなかったが、その後の取材には16年に結婚した夫人への感謝を語った。「結婚してからタイトル戦に出たのは初めてでしたが、妻は試行錯誤しながらも私に負担がかからないように準備をしてくれました。感謝しています」。プレゼントは「軽く旅行に行ったくらいで許してくれました」と笑ったが、優勝賞金4320万円の使い道について「大きな買いものをするかもしれません…」とも予告した。

 今期は絶好調だ。対局数50局(全棋士1位)、38勝(1位)、勝率・760(5位)。2月2日に開幕する第44期棋王戦5番勝負では渡辺明棋王(34)に挑戦する。渡辺も今期26勝7敗、勝率・788(4位)で現在12連勝中。「今まで以上に手ごわい渡辺さんだと思うので、可能な限り準備をして迎えられたら」。さらに順位戦A級では、全勝だった豊島将之2冠(28)に勝利。1敗で羽生と3人が並んだ。3月1日、羽生との再戦となる最終戦が挑戦権を懸けた大勝負になる可能性もある。

 「羽生さんは次のタイトル挑戦が焦点になる。最終戦は注目される舞台になる可能性もありますけど、良い将棋を指せたら」。当然、羽生は雪辱に燃えるだろう。春を迎えるまで、新竜王の真価が問われる季節は続く。(北野 新太)

 ◆広瀬 章人(ひろせ・あきひと)1987年1月18日、東京都生まれ。32歳。勝浦修九段門下。札幌市在住だった小学6年時に棋士養成機関「奨励会」入会。高3時に四段(棋士)昇段。2009年、新人王。早大教育学部数学科在籍時の10年、初タイトルの王位を獲得。12年まで「振り飛車穴熊」を武器に活躍し「振り穴王子」のニックネームも。連載中の漫画「将棋めし」の監修を担当。

 ◆竜王戦(りゅうおうせん)1988年度、前身の十段戦を継承する形で誕生。飛車が成った最強の駒を名に冠する最高棋戦。全棋士、女流名人ら女流棋士5人、アマ竜王らアマチュア5人が参加。1~6組の各トーナメントに分かれ、1組(5人)、2組(2人)、3~6組(各1人)の上位11人による決勝トーナメントを行い、挑戦者決定3番勝負を制すと7番勝負で竜王に挑戦する。下位、女流、アマチュアでも棋界最高位に就く可能性があることから「竜王ドリーム」の言葉も。優勝賞金は棋界最高の4320万円。

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