「いだてん」、大河で異例の五輪シーンを宮藤官九郎氏絶賛「ボヘミアン・ラプソディ級」

スポーツ報知
第12回のワンシーン。昨年8月、中村勘九郎(右から2人目)はストックホルムでのロケに臨んだ

 NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(日曜・後8時)で、第10回(10日放送)から日本人が初めて五輪に参加した「ストックホルム編」がスタートし、序盤のヤマ場を迎えている。同編の撮影は昨年8月、スウェーデンの首都・ストックホルムに現存する最古の五輪競技場を中心に3週間行われた。大河では異例となる五輪の再現シーンに、作者で脚本の宮藤官九郎氏(48)は「僕の中ではボヘミアン・ラプソディ級」と喜んでいるという

 「ストックホルム編」は、主演の歌舞伎俳優・中村勘九郎(37)演じるマラソン選手・金栗四三と生田斗真(34)演じる短距離選手・三島弥彦が、1912年のストックホルム五輪に挑む姿を第13回(31日放送)まで描く。

 「いだてん」は、朝ドラ「あまちゃん」(13年)の脚本家・宮藤氏と制作統括の訓覇(くるべ)圭氏(51)が再びタッグを組み、14年から構想を膨らませてきた。近現代史の大河は33年ぶりで、64年東京五輪まで激動の半世紀を描く。訓覇氏は、金栗の原点で日本の五輪の原風景となるストックホルム五輪をどこまで描き切れるかが、序盤の大きな勝負どころと見込んでいた。

 大河で五輪の再現や、長期海外ロケは極めて異例だ。15年に別の仕事でストックホルムを訪れた訓覇氏が、五輪で使用されたストックホルム・スタジアムを見て「競技場も街並みも変わらず残っていた」と感銘を受けた。16年に宮藤氏らとリオ五輪を生観戦した際、現地を再訪しロケ地にする思いを固めた。

 昨年8月のストックホルム・ロケを担当したもう一人の制作統括・清水拓哉氏(40)は、下見を含めて4度渡航した。「日本で“なんちゃって”で再現するのではなく、金栗さんが実際に会って話したであろう現地の人たちと触れ合ってみてこそ、そのスピリットがドラマにリアリティーを与えるのではないか」との思いだった。エキストラは多い時は現地で300人集め、劇中に登場する外国人選手や通訳は現地オーディションを開催し採用した。

 だが、順風満帆ではなかった。日本と現地のスタッフ各60人ほどで撮影が行われたが、「流儀の違い」で衝突することが多かったという。チーフ演出の井上剛氏(50)を中心とする日本側スタッフは「現場で起こるミラクルを撮ろうと、面白い芝居があればそっちに変えてみることをいとわないチーム」。それに対して現地側スタッフは「緻密に設計する真面目な方たちなので、予想外なことが起こるといら立っていた」という。

 激論を交わし説得する日々の中で、107年前の日本選手団がアウェーに挑む姿が重なるように感じられた。「文化の違いを擦り合わせながらやっていくこと。これは当時の日本人選手団もやったことだろうな」。困難を乗り越え、見たことのないような勘九郎、生田のエモーショナルな競技シーンが撮れた。ミラクルが撮れた。

 当時、国内での作業に追われていた訓覇氏も、映像を確認し「スポーツの話でこの量を海外で撮るのは大変なこと。撮影量が多いので恐怖を感じていたが、ステキな仕事をしてきてくれた」。最新のVFX(特殊視覚効果)を活用したスタジアムを埋め尽くす超満員の観衆の映像に、「宮藤さんも『すごいっすね。僕の中ではボヘミアン・ラプソディ級ですよ』と喜んでいた」と明かした。人気バンド「クイーン」の伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」のウェンブリー・スタジアムでのライブシーンもVFXを駆使したものだという。

 「八重の桜」などで演出、「真田丸」でプロデューサーを務めた清水氏は、6作目の大河で初めて近現代史に挑んだ。「明治時代くらいになると、現代の人たちの想像がかなり及ぶ世界になる。資料も多く残ってるので、毎週やるのは大変」としながら、「第10回から現地での大会期間が始まった。本物のオリンピックのように1か月間楽しんでほしい」とアピールした。

 ◆いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~ 勘九郎と、新聞記者で水泳の指導者である田畑政治を演じる阿部サダヲの主演リレー形式。熊本出身の金栗が、講道館柔道の創始者・嘉納治五郎(役所広司)が校長を務める東京高等師範学校に進学し、ストックホルム五輪に挑む。田畑は東京五輪実現のため、64年の五輪招致に奔走。組織委員会事務総長として成功に導く。

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