原稿締め切り過ぎてから「都知事選出馬する」…元担当記者が内田裕也さん悼む

スポーツ報知
都知事選出馬にあたり、名前を入れず斜めに構えたポスターを披露した内田さん

 ロック歌手の内田裕也(うちだ・ゆうや、本名・内田雄也)さんが17日午前5時33分、肺炎のため都内の病院で死去した。79歳だった。葬儀、告別式は近親者で執り行う予定。「生涯ロックンローラー」として数々の“伝説”を生み、刑事事件や都知事選出馬など、本業以外で話題になった。

 1986年のカンヌ映画祭。映画「コミック雑誌なんかいらない!」が公式上映された日の興奮を、今も忘れない。裕也さん演じる芸能リポーター・キナメリがつぶやく、ラストシーンのあるセリフ(未見の方はぜひDVDを!)を合図に、客席からうねるような歓声が起きた。鳥肌が立った。たまたま、その現場にいた駆け出し記者のことを、裕也さんは長いこと気に掛けてくれた。

 5年後のある夜。裕也さんが会いたがっていると当時のマネジャーから連絡があった。ホテルオークラのバーで待っていた裕也さんは、準備中の映画「魚からダイオキシン!」の話をしていたように記憶するが、なかなか本題を切り出さない。日付がとうに変わった頃になって「実は、都知事選に出馬する」。思いもよらぬ話に仰天したが、とっくに締め切り時間が過ぎていた。

 翌朝、デスクに報告すると「その話、もう出てるぞ」。ライバル紙に先を越されていた。間に合わないことを計算ずくで、夜中に呼び出されたのだと分かった。全身から力が抜けたが「記事が出る前に話はした」というのが、いかにも裕也さん流の「筋の通し方」。不思議と怒りは湧いてこなかった。

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