2000作品出演の名脇役・織本順吉さん、92歳大往生

スポーツ報知
遺作となったテレビ朝日系「やすらぎの郷」で“芸能界のドン”を演じた織本順吉さん

 映画「仁義なき戦い」シリーズやNHK連続テレビ小説「わかば」などで知られる俳優の織本順吉(おりもと・じゅんきち、本名・中村正昭=なかむら・まさあき)さんが18日午後0時2分、老衰のため栃木県那須塩原市内の病院で死去した。92歳だった。20日に近親者のみで密葬を行い25日、所属事務所が発表した。名脇役として約2000作品に出演し、17年放送のテレビ朝日系「やすらぎの郷」が最後の仕事となった。

 2000本もの映画、テレビに出演し、日本を代表する名脇役として長年活躍し続けた織本さんが、天国に旅立った。

 この日、長女で放送作家の中村結美さんが織本さんの所属事務所のホームページで発表した。織本さんはゴルフが大の趣味で、約30年前に還暦を迎えたのを機に近くにゴルフ場が多くある那須塩原市内に移住。85歳の妻と暮らし、仕事の度に上京していた。

 結美さんによると、ここ数年はかなり足が弱り、自宅で立てなくなったため、年明けから入院。「入院後、徐々に体の機能が衰え、最期を迎えました」という。「役者は出番が終わったら、静かに去っていくべきだ」という本人の言葉に従い、延命治療を受けなかったことも明かし「お医者様からも『立派な老衰です』とお墨付きをいただいた最期でした」とつづった。冠婚葬祭が苦手という本人の遺志で、近親者による密葬で天国へと送った。

 神奈川出身の織本さんは、電機会社に勤務した後、49年に新協劇団に入団。54年に退団し、岡田英次さん、西村晃さんらと劇団青俳を結成。幹部俳優として活躍した。80年の劇団解散後はフリーとなり、実直な父親から熱血刑事、ヤクザまで、幅広い役柄を演じるバイプレーヤーとして活躍。72年の「新・平家物語」から96年の「秀吉」までNHK大河ドラマにも8作出演した。

 2017年に90歳で出演したテレビ朝日系「やすらぎの郷」が遺作に。また、結美さんが数年前から撮り続けたドキュメンタリー「老いてなお 花となる~織本順吉 90歳の現役俳優~」(NHK・BS1)が17年に放送。続編「老いてなお 花となる 第二章~俳優・織本順吉92歳~」(同)が今月3日に放送されたばかりだった。織本さんは番組を病室で見て「俺は幸せな役者だ。感動して眠くなんかならない」と漏らしていたという。

 ◆放送作家の娘が撮影ドキュメンタリーで

 長女の結美さんが撮影した「老いてなお 花となる 第二章」で、織本さんは自身の俳優観について語っていた。

 昨年12月に行われた生前最後のものと思われるインタビューでは、最近の俳優に対して「みんな作りもののようで、リアルが足りない」と指摘。「芝居じゃなく、存在しないとダメ。自然の摂理に演技は従えばいい。つまり呼吸すればいい」と話した。

 また、「(俳優の)仕事をやり遂げて死ぬなんてありえない。みんな未完成で死んでいくんだ」と持論を展開。高齢から近年は仕事の依頼が途絶えがちだったそうだが、最後まで「生涯現役」を自負していた。

 ◆織本 順吉(おりもと・じゅんきち)1927年2月9日、神奈川県生まれ。49年に新協劇団に入団し、舞台「破壊」でデビュー。主な出演作に映画「人間の條件」「やくざ戦争 日本の首領」「ゴジラ」、フジテレビ系「最後から二番目の恋」など。

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