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“タカラヅカ過激”な超問題作にレビュー界の巨匠の反応は…

2018年5月2日16時0分  スポーツ報知
  • いつもダンディーないでたちのレビュー界の巨匠・岡田敬二氏

 東京宝塚劇場では今、宝塚歌劇月組の型破りなショー「BADDY(バッディ)―悪党(ヤツ)は月からやってくる」(6日まで)に、初見のファンは度肝を抜かれているはずだ。

 「悪」の概念が一掃された平和な地球を、月から来たヘビースモーカー軍団が襲う、ストーリー仕立てのショーだ。トップスター・珠城りょうがくわえたばこをふかしたり、銀橋で寝そべったり…。「清く正しく美しく」のボーダー超えのスレスレを狙っていく。

 やがてステージは善と悪が「ぐるぐる、ぐちゃぐちゃ」と混然一体になり、普段の宝塚にはないシュールな毒が発生する。初めて宝塚を見たり、久々に観劇した人から「面白かった!」と報告を受け、「毎回、あんな感じじゃないんですが」と何度も苦笑いしたが…。

 作・演出は上田久美子氏。女性としては初めて大劇場のショーの演出を手掛けた。劇団が設定した取材会には都合で参加できず、話を聞けなかったが、雑誌「歌劇」で上田氏は「この枠内でやらなければ…というところから、もっと自由になってもいいのかなと思った」と語っている。

 「わざと伝統に反し、タブーに挑戦したんだと思うんです。規制を壊さないと、新しいモノはできないですから」。そう話すのは、入団55年、演出家歴51年の岡田敬二氏(77)。東京宝塚劇場で11日に幕開けする、ロマンチック・レビュー・シリーズ20作目「シトラスの風―Sunrise―」(宙組)の作・演出を担当するレビュー界の巨匠だ。

 岡田流は、宝塚のイメージを壊さないオーソドックスなスタイル。岡田氏は「5世代にもわたる広いファンに加え、海外からも観劇にいらっしゃる。マンネリズムでやっているつもりはないが、私は幅広い層に受け入れられるよう意識しています。お客様を裏切ることはできない。この年で斬新なこともできないですが(笑い)」と、上田氏の演出に対して、あくまで“正道”を強調する。確かに、「BADDY」は「こんなタカラジェンヌ、見たくない」という“邪道”との批判もあり、万人受けというわけではない。

 一方で「私もそういうこと(冒険)をやってきた。それまでシャンソンばかりだったのを、私はフォークソングとかロックンロールを使って作ってましたから」と実験的手法に理解を示す。上田氏がショー演出を志したのは岡田氏の作品がきっかけだったというのも納得。

 ショーに注目が集まったことも業界的には好機だろう。「宝塚は『レビューカンパニー』といいながら、ミュージカルプレーの演出家ばかりが取り上げられる。レビューの人間は賞に縁がなく(笑い)。後進のためにも、レビューに関心を持っていただければ」と岡田氏。

 若手演出家では、原田諒氏が2016年花組公演で初めてレビューを担当。原田氏と同期の生田大和(ひろかず)氏も常々、「私もやってみたい」と初タクトを狙っている。岡田氏は「若い世代は挑戦をしていい。清く正しく―をうまい形で生かせばいい」と、さらなる“革命”に期待を寄せる。

 自身も喜寿を迎えても、レビューへの情熱に衰えはない。「真矢みき(現・真矢ミキ)の『ダンディズム!』(95年)が好きだったので、『モア ダンディズム!』をやりたいと何年も劇団に企画を出しているんですが、やらせてもらってない(笑い)。次こそは」。演出家の今後の“世代闘争”も楽しみだ。(記者コラム・筒井 政也)

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