•  スポーツ報知のWebサイト限定コラムがスタートしました。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

林家木りん、師匠・木久扇への愛情がハンパなかった「福山雅治さんと師匠は似ているんです」

2018年7月19日11時0分  スポーツ報知
  • 初の著書を手にする林家木りん

 落語家・林家木りん(29)が初となる著書「師匠! 人生に大切なことはみんな木久扇師匠が教えてくれた」(文芸春秋)を6月8日に出版した。木りんの師匠は日本テレビ系演芸番組「笑点」メンバーでおなじみの林家木久扇(80)。木りんの師匠への愛情がハンパない!と話題を呼んでいる。

 「本が出て僕が一番うれしいんですけど、それ以上にうれしいんじゃないかってくらいに師匠が喜んでくれているんですよ」。192センチと長身の木りんは、人なつっこい笑顔で語った。

 木りんの父親は元大関・清國で、幼少期は相撲部屋で育った。高校時代に学校寄席で聞いた木久扇の落語に感銘を受けた。父親と木久扇に親交があったこともあり、弟子入りすることになった。現在は二ツ目。入門して初めての仕事が木久蔵ラーメンを売ることだったことや、つらい前座修業での失敗やしくじり、独特のしきたりに戸惑う様子を隠すことなくつづっている。若き落語家の葛藤や小さな喜びなど、等身大の姿が描かれている。

 出版のきっかけはフリーライターのインタビューを受けた時だった。「『目標ありますか?』って聞かれて『本を出したいです』って答えたんです。それからとんとん拍子に進んで…」。木りんの師匠への愛情が強いことに興味を持ったライターが出版社に企画書を持ち込み、出版へとこぎ着けた。だが、この発言は偶然ではない。「師匠が『発言には具体性を持たせなさい』って言っていたんです。ただ単に“こんな落語家になりたい”とかだったら実現しなかったかもしれないですね」。

 木久扇の弟子の育て方は独特だ。木りんの初高座は木久扇の地方公演で1000人のホール落語だった。「入門して3か月、前座見習いの時でカルチャーショックを受けました」。満員の観客を前にウケる喜びを知った木りんだが、その後、寄席での“初高座”に戸惑った。「鈴本の夜席だったんですが、15人くらいしかいなくて…。逆にどうしていいか分からなかった。自分はすごい恵まれていたんだなと思いました」と振り返った。

 3回目の高座では15分前に指令を受けた。「今日はマクラを5分間ふりなさい」。木久扇の言葉に緊張は頂点に達した。「どうしようって。自分の事を話すしかないなと…」。とっさに出たのが、「(父親は)元大関のキヨクニですが、みなさん、キオクにありますか…」。これは今でもアレンジして使っている。「自分が追い込まれないとやらないタイプだと師匠は知っていたんでしょうね。そして、父親のことも師匠は『君の武器なんだから言わなきゃダメだよ』と言っていました」。さりなげなく導いてくれる師匠の存在に感謝している。

 木久扇からは落語の稽古だけでなく、世の中での振る舞い方も学んだ。お供していると、会う人に自分のことを売り込んでくれた。午前中に師匠宅に行くと、いつもお礼状をせっせと書いている姿があった。「師匠は時々、『君たちに見せているんだよ』と教えてくれるんです。“見て盗め”ではなく“見て教えてくれる”タイプなんです」と「笑点」などの与太郎キャラとは違う細やかな一面も明かしてくれた。

 木久扇への愛情が止まらない木りんは興味深い話をしてくれた。「一緒に新幹線で移動しているときに、何気なく『願い事はどうやったらかなうんですか』って聞いたんです」。木久扇の回答はこうだった。「常に思っていることが大事だけど、『絶対に…』などと強く願ったらダメ。何となく考えて生きていくのがかなうコツです。でも思い続けないといけない」。

 その言葉に、木りんは大ファンだった福山雅治の姿を重ねた。「福山さんも『流れ星が流れた時に願い事を言えないのは、常に思っていないからだ』と言っていました。思っていたら3回、願い事が言えるはずだと…。師匠と似ていますよね」

 木りんが分析する、木久扇と福山雅治が似ているエピソードはさらに続く。木りんによると、福山が大泉洋と地元・長崎に行ったときに、長崎空港で五島うどんを食べようとしたが、ファンが集結したため、空港のVIPルームに“出前”してもらい、うどんを食べて「スター稼業も悪くないです」と言ったという。

 木久扇は、2015年7月にプロ野球、西武・日本ハム戦(西武プリンスドーム=現・メットライフドーム)で始球式を行った。黄色ユニホームの「イエローシリーズ」にちなみ、木久扇が呼ばれた。お付きとして行動をともにした木りんは、球場のVIPルームにテンションが上がっていた。「歴代のユニホームなどが飾られて、すごいなぁと思っていたら、(グラウンドを見ていた)師匠が振り向いて『売れなきゃダメだよね』って言ったんです。格好良かったです。でも試合には負けて西武はこの後13連敗しちゃうんですけどね」。スターとして偉ぶることなく冷静に自分を分析し自然に振る舞う姿。2人の共通点に木りんは「売れている人が似ているのかもしれないですけど、どこかで(似ていることを)感じ取って弟子入りしたんじゃないかと思うんですよ」と話した。

 憧れの師匠の背中を追うように生きている木りん。目標を問われると「落語家としては古典落語をやっていくつもりですが、師匠みたいになりたい。落語がうまい人はいっぱいいると思うんですが、客寄せパンダじゃないですけれど、入り口が分からない人が多いと思うんです。落語は面白い芸能です。木りんを見て『あの人、落語家なの。それなら落語を見てみよう』ときっかけになりたいですね」。そのためにはもっと売れたい。その欲望を隠そうとはしない。「2020年の(NHK)大河ドラマに出たいですね。タイトルが『麒麟がくる』ですからね。自分も“木りん”だし、どんな形でも関わりたい。勝手に縁があると感じているんです」。目標は具体的にそして、常に思うこと―。木りんは師匠・木久扇の“教え”を実践している。(コンテンツ編集部・高柳 義人)

 林家木久扇が語る弟子の木りん

 「最初、入門して来たときはすぐ辞めるかなと思ったんですが(入門して)10年経ちました。今回も出版社を自分で見つけてきて、文芸春秋ですから、それは『すごいことだよ』と褒めました。お弟子さんはウチで朝ごはんを食べるのですが、どんぶり7杯食べるもんですから、当時は地方に行ってもお金じゃなくお米をもらったこともあります。(入門当初は)恥ずかしがりやだったのですが、寄席で木久蔵ラーメンを売る時も、(閉まった)幕を上げて高座から客席に出て行ったり工夫しています。格好いいけど面白い、“格好面白い”みたいな新しい世界を広げていったらいいと思います。どんどん世の中に出ていって欲しいですね」

コラム
今日のスポーツ報知(東京版)