【報知映画賞】蒼井優“最低女”で主演女優賞「賞まで頂いて、どうしましょう」

2017年11月29日7時0分  スポーツ報知
  • 11年ぶりの受賞となった蒼井優。大人の女性となった今、同世代の役者と現場で再び顔を合わせることも喜びのひとつだ(カメラ・小林 泰斗)

 映画賞レースのトップを飾る「第42回報知映画賞」の各賞が28日、発表された。主演女優賞は「彼女がその名を知らない鳥たち」(白石和彌監督)で、自らも「最低」と評するほどの嫌な女を演じきった蒼井優(32)が受賞。阿部サダヲ(47)をはじめとする共演者や、これまでの出会いに感謝した。

 たそがれの、オレンジ色の光の中。映画のラストカットを撮り終えた蒼井は、静かにたたずみながら、胸を震わせていた。「『映画っていいな』ってしみじみ思ったんです、あのとき。それだけで幸せだった。なのに賞まで頂いて、どうしましょうって感じです」

 ラストシーンは、蒼井演じるヒロイン・十和子とその恋人・陣治(阿部)を取り巻く鬱屈(うっくつ)した伏線からガラリと話調が変わる作品の要。最後の2日間、撮影用語で「マジックタイム」と呼ばれる日没前後の1時間足らずで撮った。「現場の集中力がすごかった。撮りきるって思いも合致して、何かに突き動かされたようだった」。当初は3日かけて撮る予定だったが、濃密な集中力を持続するべく、助監督の判断で2日に減らした。「みんなずっと、それまで最低な人たちを撮りすぎていたので、やっと空が見えたような感覚がありました」

 同せいする恋人を嫌悪しながらも依存し、その裏で別の男との不倫に溺れる女。オファーを受けたときは「十和子役、誰もやりたがらないだろうなと思いました」。阿部、松坂桃李(29)、竹野内豊(46)らとのやりとりはときに滑稽で、悲しく映る。「十和子は主体性のない女性なので、目の前にいる人によって変わっていく。出会った人の全部の要素が十和子。だからこの賞は勝手にベストアンサンブル賞だと思っています」

 報知映画賞は「フラガール」で助演女優賞を受賞した06年以来11年ぶり。「作品全体でもらったっていう感覚が大きいのは、あのときと一緒。でもひとつ違うのは、これまで出会ってきた人たちの顔がバーって浮かびました。家族や映画関係の方はもちろん、『くだらない芝居しないで』って怒ってくれたプロデューサーさんの顔まで(笑い)。そのすべてに感謝です」。喜びも悲しみも、負った傷も。すべての経験が織りなされ、自分自身を形成してきた。

 「私にとって映画は『ホーム』です。まっさらなところからスタートしたので…」と蒼井は語る。「もちろん、まだ離れに会ったことのないおばあちゃんが住んでいるような、安心できない怖さはあります。でも『映画っていいな』って、あの夕暮れで思えた。先輩たちに自由にやらせてもらって今があるぶん、今度は後輩にそう思ってもらえる立場に少しずつでも行けるようになりたいです」。“マイホーム”を盛り上げることは、蒼井が生きた証しでもある。(宮路 美穂)

 ◆蒼井 優(あおい・ゆう)1985年8月17日、福岡県生まれ。32歳。99年ミュージカル「アニー」でデビュー。2001年「リリイ・シュシュのすべて」で映画デビュー。現在は日テレ系ドラマ「先に生まれただけの僕」に出演中。映画「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3」が来年公開予定。

 ◆「彼女がその名を知らない鳥たち」 沼田まほかる氏の小説が原作。同せい中の陣治(阿部)の稼ぎで怠惰に暮らすクレーマーの十和子(蒼井)は、かつての恋人・黒崎(竹野内豊)に似た男・水島(松坂桃李)との不倫にふけるが、あるとき黒崎が失踪した事実を知る。

孤狼の血特集
  • 1
  • 2
今日のスポーツ報知(東京版)