•  若手の落語家、講談師11名からなるユニット「成金」の正体に迫る連載。読み応えたっぷりのインタビュー記事を随時更新していきます。ご期待ください。

【成金の正体】春風亭昇也、ツッコミで切り開いた自分の居場所 師匠・昇太から教わったこと(1)

2018年12月11日16時0分  スポーツ報知
  • 師匠・昇太ゆずり?全身を使って熱演する春風亭昇也(カメラ・越川 亘)

 ゆるやかに、そして着実に成長曲線を描いている。落語家・春風亭昇也(36)は今年3月に「彩の国落語大賞」を受賞した。「賞は完全にラッキーパンチですよ。プロフィルとかに書かれるからはったりが効く。地方に行ったときに(プロフィルを見て)『いい人が来てくれたのかな』と思ってもらえる。それだけです」と昇也は言った。

 「彩の国さいたま寄席」(彩の国さいたま芸術劇場)に出演している若手落語家を対象に、観客投票によって年間で最も優れた演者を選出するもので、過去の受賞者には林家たい平、立川志らく、柳家喬太郎、立川談春、三遊亭兼好、春風亭一之輔…。実力と人気を兼ね備えた落語家の名前がずらりと並ぶ。過去の19人の受賞者の中でも二ツ目での受賞はたい平以来、2人目の快挙でもある。「埼玉で(3月に)賞を取って、最近(地元の)野田市の市報の取材を受けました。ようやく気がついたなって」と昇也は笑った。

 「成金」での活動が大きな力になった。「良かったのは、ライブ感というか、圧倒的に場数ですよ。特に二ツ目という枠で、経験値がものを言うという部分ででかいですし、毎週、(みんなと)バチバチにやっていますから精神的にも強くなります」。

■「成金」での立ち位置

 メンバーの中で香盤(協会内での序列)は一番下だが、昇也は先輩に容赦ないツッコミをする。香盤で一番上になる柳亭小痴楽(29)の意向もあり、全員が同期として振る舞っているが、昇也は「その理由は完全にボクなんです。小痴楽さんはお父さん(5代目・痴楽)の教えで、後輩も人生の先輩なので同期として扱えと教えられていたのもありますけれど、他の人は“兄さん”として扱う中で、ボクはバコスコ突っ込む。それで(メンバー内の)距離が詰まった、絶対にそうだと思う。『成金』の成功は縦のものを横にしたところだと思うんです」

 純然な縦社会でもある落語界で、上の者に突っ込むことは基本的にはタブーともされている。「前座なのに楽屋で真打ちに突っ込む。基本はアウトだけどやり続けたんです。やっていくうちに面白ければOKという雰囲気になって、何かあると先輩方が俺を見るようになったんです」。どこまでは怒られないのか、探りを入れるようにツッコミ続けた。

 なぜ、そのような立ち位置にいるのだろうか。昇也は、その理由として前職が漫才師であったことに加えて次のように語った。「ストレスがたまらないように、自分の住みやすい環境を作る。そのためには周りを調教する必要があるんです」

■ツッコミとしての原点

 昇也は子供の頃からひょうきんで友達を笑わせるクラスの人気者だった。だが、小学3年で出会った同級生・大沢くんの存在がその立場を危うくした。悔しいけれど自分よりはるかに面白かった。「発想では勝てないなと思ったんです。自分のポジションを確保しないといけないと焦りました。ヨーイドンでボケたら勝てない。上の位置はどこだろうと…」。考えたのがツッコミ役だった。「ツッコミ芸に専念しました」。大沢くんのボケに的確にツッコミを入れることで、笑いを大きくする快感に目覚めた。ひたすらビデオで研究した。夢路いとし・喜味こいし、横山やすし・西川きよしのテレビ番組を録画して繰り返し見て研究した。「同じ映像をずっと見ているから親は『この子はバカなんじゃないか』と思っていたみたいです。ボクは研究していたんです」ツッコミ役の目線やしぐさなどを細かい動きまで勉強した。

 まるで“求道者”としてお笑いと向き合うことで、将来は漫才師になりたいとの思いがわき起こった。「この子と組んでプロになりたいと思った」中学まで一緒だった大沢くんとは高校が別となり、将来設計も違った。高校2年の時に雑誌「じゃマール」で相方募集をしていた相手とコンビを組んだが1年後に解散した。ストイックにお笑いを求める姿勢に相方がついていけなかった。「厳しすぎると言って逃げられました」。高校卒業後はお笑いの専門学校に進み、同級生と「メロンソーダ」を結成。事務所にも所属して活動した。

成金の正体
注目トピック