【引退、ザ・グレート・カブキ ヒストリー〈1〉】雑誌に載った連獅子をヒントにカブキ誕生

2017年12月13日12時0分  スポーツ報知
  • 連獅子スタイルの写真をバックにポーズを取るカブキ

 「東洋の神秘」とうたわれたプロレスラー、ザ・グレート・カブキ(69)が12月22日、ノアの後楽園ホール大会で引退試合を行う。力道山に憧れ15歳で日本プロレスに入門。ジャイアント馬場の全日本プロレスでは米国に拠点を置き1981年に「ザ・グレート・カブキ」に変身し全米でトップレスラーへ駆け上がった。54年間に渡る波乱万丈のレスラー人生。スポーツ報知では「引退ザ・グレート・カブキ ヒストリー」と題し、カブキが残した神秘の秘密を連載します。第1回は「カブキ誕生の秘話」。

 1980年。全日本プロレスの中堅レスラーだった高千穂明久は、日本マットを離れ米国を主戦場に活躍していた。リングネームは戦う地区によって様々だったが、ミズリー州カンザスシティに入った当時は「タカチホ」の名でマットに上がっていた。

 きっかけは、ブルーザ・ブロディだった。

 「カンザスにブロディが試合に来て、その時に“おぉ久しぶりだな”って言ったら。フランク(ブロディの本名)が“お前、電話なかったか”って言われてね。“どっからだ”って聞いたら、“テキサスでお前のことを探しているぞ。ここに電話してみろ”と渡された電話番号がゲーリー・ハートの事務所だった」

 テキサスマットは、日本でも馬場と名勝負を繰り広げた“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリックがプロモーターとして仕切っていた地区だった。ゲーリー・ハートとは、当時、フリッツの下で選手と交渉し試合を組むなどのブッカーを務めていた。ただ、高千穂はハートとは面識はなかった。ブロディから渡された番号に半信半疑で電話したという。

 「電話すると、ゲーリが“お前ダラスに興味あるか”って言われてね。その当時はカンザスはあまり良くなかったから“移りたい”って伝えると“じゃぁ、来年の81年からダラスに下りてこい”って言われて、それでダラスへ行くことが決まった」

 80年12月。約束通り高千穂はダラスに入った。

 「ゲーリーに会ったら、いきなり本を渡されてね。アメリカの雑誌の中で日本の文化を紹介している記事があって、ゲーリーがページをめくって“お前こういう格好できるか”って言われたのが歌舞伎の連獅子の格好だったんです」

 雑誌には連獅子が舞っている写真が載っていた。初対面でゲーリー・ハートは、ダラスで高千穂に新たなキャラクターへの変身を要求したのだ。

 「写真を見せられて、“できなくはないけど”って答えたら、ゲーリーが“よし、マスクをかぶってやってくれ”って言ったんですよ。それを聞いて、オレは“バカヤロー、これは日本の俳優さんが顔にメイクしてやっていて、マスクじゃないんだよ”って言うと、“お前、こういうメイクをやったことあるのか”って言われたから、“やったことない”って答えたんですよ」

 顔にペインティングを施すレスラーは、ほとんどいなかった当時。ゲーリー・ハートから連獅子のような「マスクをかぶってくれ」とのオファーを「あれはメイクなんだ」と断った時、高千穂の頭でひとつのひらめきが浮かんだ。

 「その時、パッと頭に浮かんだのがハロウィンでメイクする子供たちだったんですよ。歌舞伎はくま取りだけど、考えてみたら、ハロウィンのメイクとそれほど変わらないんじゃないかなって思ってね。それで、顔にペイントするアイデアが生まれたんですよ」

 リングネームは「ザ・グレート・カブキ」。ゲーリー・ハートが命名した。ブロディからの伝言がきっかけとなり、初対面で一気に「カブキ」は誕生した。そこには、全米マットで生き抜いてきた高千穂のキャリアがあった。

 「全米マットで生き抜くためには、他人と同じことをやっていては、プロモーターから声もかからないし、すぐにお払い箱でリングで稼ぐことはできない。大切なのは、客を呼ぶ個性なんです。24時間、365日、プロレスのことばっかり考えていたから、ゲーリーと初めて会ったあの時もすぐにアイデアが浮かんできたんだと思います」

 産声を上げた「ザ・グレート・カブキ」。ただ、ペインティングを施すまでは苦労と工夫の連続だった。(敬称略)

 ◆ザ・グレート・カブキ(本名・米良明久)1948年9月8日、宮崎県延岡市生まれ。69歳。64年に日本プロレスに入門。同年、10月に山本小鉄戦でデビュー。日プロが73年4月に活動停止するとジャイアント馬場が設立した全日本プロレスに合流。81年1月にザ・グレート・カブキに変身し全米でトップレスラーに駆け上がる。90年7月に全日本を退団しSWSに移籍。92年6月のSWS崩壊後はWAR、新日本プロレス、IWAジャパンなどで活躍する。98年9月に現役引退を表明したが2002年10月に新日本マットで現役復帰。以後、様々な団体で活躍し今月22日、ノアの後楽園ホール大会で引退試合、引退式を行う。身長180センチ、体重110キロ。

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