アジア人で初めてペルーのジャングルマラソンを走った47歳のプロレスラー、丸太一本の谷渡り、蜂の大群、川の中を走った壮絶体験を明かす

スポーツ報知
ペルーのジャングルを走った三州ツバ吉

 世界の辺境を走り続けるプロレスラーの三州ツバ吉(47)がこのほど、ペルーのジャングルを5日間かけて走るマラソンレース「ペルー・ザジャングル・ウルトラ」にアジア人として初めて出場し完走した。

 今年で5回目を迎えたレースはマラソンなどのスポーツ大会を企画する英国の「ビヨンド・ザアルティメット社」が主催し、英国、ドイツ、米国、カナダなど世界各国から60人が参加した。開催地はアンデス山脈にあるペルー南東部の都市、クスコから車で6時間ほど奥地に入ったペルー最大の国立公園の「マヌー国立公園」。同公園の面積は、約1万5328平方キロ・メートルで岩手県とほぼ同じ広さで公園内に広がるアマゾン盆地と草原を保護している。日程は6月3日から7日までの5日間で公園内のジャングルを1日約40キロほど走り、それぞれのゴール地点で野宿し、総距離230キロのタイムを争う。

 三州は、07年11月に36歳でデビューを果たした遅咲きのプロレスラー。自らの心身を鍛えるべくマラソンに挑戦し現在までにフル、ハーフなどを含め200レースを走破。中でもエベレスト、南極、ゴビ砂漠、サハラ砂漠など世界の辺境の地でのマラソンも完走している。昨年10月に世界一過酷と言われるブラジルの「アマゾン・ジャングルマラソン」で世界で初めて3度目の出場を果たし完走した。今回の挑戦は、知人から日本人はおろか、アジア人の誰もが挑んだ経験がない「ペルー・ザジャングル・ウルトラ」の存在を聞き「プロレスラーとしてさらに飛躍するために誰もが挑戦していない場所で走りたい」と決意しエントリーに至った。

 ジャングルの中を走るレースは、コースから外れないよう木にピンク色のリボンが結んであり、これを目印に走っていく。ジャングルにちなみ「仮面ライダーアマゾン」の覆面をかぶり、背中には着替え、日々の食料など重さ20キロの荷物が入ったリュックサックを背負うなか、起伏の激しい泥道をひたすら歩を進めたが「今回は、5日間、すべて雨で地面がぬかるんで何回も転びました」という。転倒を防ぐためにスキーのストックを2本持参したが、いずれも途中で折れてしまい、現地で他の参加者から借りた1本も折ってしまい、計3本のストックを破壊してしまった。傾斜が70度以上ある斜面は、命綱のロープをつかみながら登った。また、途中で転倒するアクシデントに見舞われた。その時は、木に捕まろうとして右手首を裂傷し血が噴き出したという。

 ケガを負いながら走ったジャングルだが、コースは地上だけではなかった。途中には、川の中を6キロほど下っていくこともあり「深さが腰までつかるほどで、流れがかなり激しかったので足を滑らせたらそのまま流される危険があった」と三州。川底の石を頼りに歩き何とか激流に飲み込まれなかった。また、蜂の大群が道を塞ぎ「まったく前が見えない時もあった。屈みながら前に進みましたが、あんな蜂の大群を目にしたのは初めてだったので、焦りました」と恐怖の瞬間を振り返った。蜂の大群は、何とか切り抜けたが、別の地点で左肩を蜂に刺され「時間が経つにつれ上半身がしびれてきたので、心臓までしびれが達したら、ヤバイと思って、持参した抗生物質を飲んで何とか収まりました」と明かした。

 激流の川を切り抜け、蜂の大群も何とかくぐり抜けた三州だったが、最も命の危険を感じたのが、丸太渡りだったという。6メートルほどの谷を渡る時、たった一本の幅30センチほどの丸太しかかかっていなかったという。谷底は、鬱蒼とした森林で目視でかろうじて川が流れていることが確認できたというが、落下すれば命を落とす危険を感じた。命をつなぐのは、橋代わりの丸太だけで「20キロのリュックを背負っているので、普通に渡れないと思ったので、渡る時は本当に恐ろしかった。慎重に一歩ずつ一歩ずつ進んで何とか向こう側へたどり着きました」と振り返った。

 1日のレースが終わるとそれぞれのゴール地点で日本から持参したカップ麺などを夕食にし、日が落ちると木にハンモックを吊るし寝袋に入って寝る日々。レース中は、ゼリー飲料や主催者から支給されるミネラルウォーターを補給しながら、走り続けた。最終日は、タイムが遅かったため、早くゴールするため、正式なコースを外れ、距離が短くなるコースを走ることを余儀なくされたため、タイムは計測されなかったが何とか完走した。ちなみに優勝者のタイムは29時間56分34秒で英国人の男性だったという。

 三州は、今回のペルーのジャングルを完走し、3年連続で出場したブラジルの「アマゾン・ジャングルマラソン」と合わせて、ジャングルを1000キロ以上走った。「この経験を必ずプロレスに生かしたい。自分の夢である尊敬する藤波辰爾さんとの対戦が実現するまで、過酷な挑戦を続け自分を磨き続けたい」と三州は目を輝かせた。

 ◆三州 ツバ吉(さんしゅう つばきち)本名・岡田孝。1971年1月26日、東京都銀座生まれ。47歳。帝京大学経済学部卒業を卒業し、スポーツインストラクター、アマチュア格闘家として活動。36歳でプロレスデビューした。身長177センチ、体重81キロ。

格闘技

×