“女子プロレス最強の男”神取忍、いじめ問題、対ギャビ戦へ「道なき道は自分が作る」

スポーツ報知
女子プロレス界のレジェンド、神取忍(都内の道場で=カメラ・池内 雅彦)

 各界に「レジェンド」と呼ばれる偉大な人がいる。女子プロレス界では、神取忍がその一人だ。15歳から柔道を始め、1983年から全日本選抜柔道体重別選手権の66キロ級で3連覇、84年の世界柔道選手権大会では銅メダルに輝いた。

 文字通り、世界トップクラスの柔道家だったが、ソウル五輪を待たずにプロレスに転向した。プロレスラーになってからはジャッキー佐藤や北斗晶、ブル中野ら、各団体の看板選手と死闘を繰り返し、「女子プロレス最強の男」「ミスター・女子プロレス」と呼ばれるなど、トップレスラーに上り詰めた。

 53歳となった今でも、女子プロレス団体LLPWーXの代表を務めながらもリングに上がっている。「若い時からムチャをしてきた。しかし、以前から体にちょっと痛いところがあったら、すぐに病院に行ったんですよ。だから、今でもリングに上がれる健康な体になっている。老眼もないですよ。同年代の人に『まだ出来るんだ』と元気を与えていきたいんです」と話す。

 目指すは総合格闘イベント「RIZIN」だ。昨年12月の同大会で総合格闘家、ギャビ・ガルシアとの対戦が決まっていたが、ギャビが契約体重を12キロ以上オーバーして、試合が中止になってしまった。

 「すごく悔しい思いをした。彼女と決着をつけないといけない。どこまで戦えるかは未知の世界。道なき道は自分が作るんです」

 神取はプロレスの傍ら、いじめ問題にも取り組んでいる。「参議院議員時代(06~10年)から取り組み始めた。いじめで命を落とす、自殺してしまうということが前からずっと改善されていない。自殺をなくす解決策を提案していきたい。その解決策はプロレスの中にある」という。プロレスは、いじめや暴力がクローズアップされる側面がある。しかし、「プロレスには生き抜く力や、やられてもやられても起きあがる力がある。そういう力が生きていく中で必要だと思う」と力説する。

 神取は、リングに上がるたびに観客にいじめ撲滅を呼びかけている。「そこにいる子どもにも聞いてほしいけれど、本当はその親に呼びかけているんです」。神取にとって、いじめ問題はライフワークだ。

 「プロという名前がつく以上、社会に貢献していくことをやっていかなければいけない。いじめだけではなく、障害者や災害の被災者の支援はやっていきたい」

 議員バッジを外しても社会貢献活動を続けている。「議員をしていると、いろいろなしがらみがあるので、今のほうが気楽に活動できる」と話す。もう1回、政界から声が掛かれば復帰もあるのか? その問いには「今はまだプロレスで頑張る。しっかりとけじめをつけたい」と言いつつも、「でも、人生だから、何が起こるかわからないですよ」と含みも持たせた。

 10月2日には東京・後楽園の東京ドームシティホールで開催される「井上貴子デビュー30周年記念 己を磨く! 女は輝く!」に出場する。井上貴子らと組んでメインイベントに出る。神取は、このリングからどんなメッセージを伝えるのだろうか?(記者コラム・高田 典孝)

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