大仁田厚、ターザン山本!、タイガー戸口の自己主張争い…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
左からNOSAWA論外、ターザン山本!、大仁田厚、タイガー戸口

 1年ぶり7度目のプロレス復帰を果たした大仁田厚(61)と元週刊プロレス編集長のターザン山本!(72)がデスマッチでついに対戦した。

 2日に東京・新木場1stRINGで行われた「スターダム★アイドルズ旗揚げ戦」で、大仁田は、橋本友彦、HASEGAWA、雷電とタッグを結成。これに対してターザンは、タイガー戸口(70)、振付師のラッキィ池田(59)、NOSAWA論外(41)、チェーンソー・トニーを連れてきた。

 以前、このコラムで「7度目復帰の大仁田厚より目立とうとするターザン山本」と書いたが、70歳になったタイガー戸口も、これに負けない強烈なキャラクターだった。やはり昭和のプロレスラーの自己主張は半端ない。193センチ、125キロの巨体は、やはり目を引く。ジャンボ鶴田やアントニオ猪木と戦っていた時代は、そんなに大きくは見えなかったのに。

 さらに大仁田、ターザンに引けを取らない自己主張。決戦前日の1日に東京・巣鴨のプロレスショップ「闘道館」で、大仁田とターザンのトークマッチ「デスマッチとは何か?」が行われたが、戸口はここに乱入した。大仁田に対して「シングルでやるか?」と挑発。これに対して、大仁田は「10年後にやりますよ。そのころは戸口さんもいないと思うけど」と応じた。

 戸口はマイペースで「この野郎、オレに黒い花びらを持ってくるか」と決めゼリフなのかギャグなのかわからない言葉で言い返すと大仁田は「戸口さん、しゃべるとみんな固まるから黙っていてください」ときつい一言で、観客を笑わせた。

 来年1月31日に没後20年を迎えるジャイアント馬場さんの弟子だった大仁田と、番記者だったターザン。そして、戸口は馬場さんを怒らせた男だった。キム・ドクとして大木金太郎との韓国師弟コンビで馬場、鶴田の師弟コンビからインタータッグ王座を強奪した後、タイガー戸口のリングネームをもらい、馬場、鶴田に次ぐ全日本プロレス第3の男として認めてもらったにもかかわらず、馬場さんが興行戦争を繰り広げていたアントニオ猪木の新日本プロレスに電撃移籍した。以降、馬場さんが存命中の全日本プロレスには出入り禁止になったほどだった。

 さて、そんな3人の邂逅(かいこう)となった「復活!ストリートファイト有刺鉄線ボード・バンクハウスデスマッチ」。会場の新木場1stRINGはフルハウス(260人)になり、急きょ、ステージに客席が並べられる盛況となった。

 タイガー戸口のデカさは目を引き、ターザンはジョーカーのような白塗りで、有刺鉄線バットを持って悪ノリ。そして大仁田は、水をまきながらの“カリスマ入場”で観衆を引きつけた。

 試合では、大仁田が予告通り、ターザンに机上パイルドライバーを敢行。さらに戸口には赤い毒霧を噴き付けた。72歳を真っ逆さまに落とし、70歳の顔面を赤く染める大仁田の試合運びはさすがだ。手加減をしてもらっていながら、すぐに立ち上がってやり返そうとするターザンにはあきれたが、NOSAWA論外がうまくリードし、試合を成立させた。アブドーラ・ザ・ブッチャーやミル・マスカラスを招へいして、試合相手も務めるNOSAWAの人脈とプロレス力はさすがだ。

 試合は、ターザン軍を裏切り大仁田軍に加勢し、大仁田がターザンを有刺鉄線ボードにたたき付けたラッキィ池田(マスクマンのプパンダ)が13分15秒、体固めでフォールし大仁田軍が勝利した。タイガー戸口は、あきれたように赤い顔で見守っていた。

 試合後、マイクをつかんだ大仁田は「元編集長! 雑誌と違うんだコノヤロー。安物のピエロみたいな顔しやがって」と言い放つとターザンは「約束が違うんだよまったく。ふざけんなよ」と意味不明にやり返す。「いつでもやってやるよ。だけど、リングに上がった勇気は認めるよ」と握手で締めた。これで大仁田のエンディングに主役を譲らないといけないはずのターザンは「アイドルと組んで大仁田とやってやる」とマイクアピールを続行。大仁田が「何言っているか分からないんだよ」と諭すと「人に分かること言ったら人生は終わりだよ」と終わらない。大仁田はあきれて「さっさと帰れよ」と促した。戸口はその前に姿を消していた。これに戸口がマイクに加わったら、収拾がつかなかったことだろう。自己主張の押し引きは、プロレスにとっては大事なことだ。

 そして大仁田はとても大事な一言を放った。「すいません。今日はスターダム★アイドルズの旗揚げ戦です。俺たちは乱入しているだけです」そうだった。この日は、中野たむ率いるアイドル女子プロレスラーの旗揚げ戦だった。大仁田が主役ではなかったのだった。大仁田はアイドルたちをリングに呼び入れると、その輪の中で、罪滅ぼしのようにアイドルソングとダンスを一緒に披露したのだった。(酒井 隆之)

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