アブドーラ・ザ・ブッチャー、感動の引退式の裏側で現役復帰へ意欲

スポーツ報知
ファンに引退のあいさつをするアブドーラ・ザ・ブッチャー(カメラ・川口 浩)

 昭和のプロレス界で外国人レスラーとして最高の人気を獲得したアブドーラ・ザ・ブッチャー(78)の引退式が19日、両国国技館で行われた。

 イベントは、1999年1月31日に61歳で亡くなった不世出のプロレスラー、ジャイアント馬場さんの没後20年を偲ぶ「ジャイアント馬場没20年追善興行~王者の魂~」で開かれ、セレモニーには、ドリー・ファンクJr(77)、スタン・ハンセン(69)、ミル・マスカラス、ドスカラス、坂口征二氏(77)、初代タイガーマスクの佐山サトル(60)、リアルジャパンプロレス会長の新間寿氏(83)、武藤敬司(56)、フリーアナウンサの徳光和夫さん(77)、元日本テレビアナウンサーの倉持隆夫氏(78)らがリング上で花束を贈呈した。

 ブッチャーは、ファンへ「若い人たちに言いたい。自分の親が年取っても決して老人ホームにぶち込んで忘れるようなことだけはするな!いずれお前たちも年取ってそうなるんだから。ちゃんと親を大事にしろ!忘れるんじゃないぞ!」とメッセージを残し、最後は「サンキュー」を6回連呼し引退の10カウントゴングを鳴らし、リングに別れを告げた。

 引退式には紺のガウンに身を包み、車椅子に乗って登場した。自力で歩行できないのは、股関節を痛めているためで今後、手術を予定している。ただ、医師からは、手術には現役時代、150キロまで達していた体重の減量が必要だと告げられているという。ダイエットが成功し、股関節の手術とリハビリが順調に進めば再び歩くことが可能になる見込みだ。

 その上でブッチャーは、周囲に手術が成功すれば「またリングに上がる」と打ち明けたという。あれほど、盛大で感動的なセレモニーを行ったにも関わらず、もしも万が一、復帰すれば、批判の嵐が巻き起こるだろう。恐らくブッチャー自身、そんなことは分かっているはずだ。ただ、どれだけ誹謗中傷を受けようとリングへ再び上がろうという意欲は、それほど、プロレスラーにとってリングが、魅惑に溢れた聖地なのだろう。

 ブッチャーの思いを聞いた時、私は「ナンセンス」「荒唐無稽だ」「あり得ない」と全面否定する思いに支配されたが、時間が経つと、もう一度、ブッチャーの地獄突きを見たいと思ってしまう感情が心の片隅にわき上がってくる。

 日本には、どれだけ批判されても引退と復帰を7度も繰り返した大仁田厚(61)という存在がいる。もし、ブッチャーの復帰戦の相手を大仁田が務めれば…。61歳の邪道と77歳の呪術師の対決は、うなされるような悪い夢かもしれないが、見てみたい気もする。そんな好奇心をかき立てるプロレスは、レスラーだけでなく見ている側にとっても魅惑の遊園地だ。

(記者コラム)

格闘技

×