優勝賞金3500万円を全額寄付したボートレーサー守田俊介〈1〉母にだけ伝えた「SG勝ったら被災地へ」

スポーツ報知
2015年10月、第62回ダービーでSG初優勝を飾った守田。紙吹雪が舞う表彰式でガッツポーズ

 3500万円の優勝賞金の全額を寄付した男がいた。ボートレーサーの守田俊介(43)=滋賀支部所属=だ。2015(平成27)年10月、最高格付けのSGレースの一つ「第62回ボートレースダービー」で優勝し、賞金3500万円を獲得した。守田はその賞金全額を東日本大震災の被災地の復興のために寄付した。なぜ、優勝賞金全額を寄付したのか? 被害状況を目の当たりにした男の被災地への思い、母に対しての“宣言”、さまざまな感情が動機となった。

 

 守田はオフの日は好きなテレビを見たり、ラジオを聴いて過ごす。昨年は8600万円あまりを稼いだ、トップレーサーだ。財布の中身は「3万円かな。使うのは外食の時ぐらい。マイルをためているので、使える所は全部カード。“陸マイラー”です」と、笑う。ドライブにも出掛けるが、高級車には興味がない。2代前の車は約10年で15万キロを走破し、最後はバンパーが脱落して廃車。1代前の軽自動車は「高速でも普通に走るし、大きい荷物も載せられるし、寝られるし」と大のお気に入りで、3年間で10万キロも乗った。今は軽よりも一回り大きいコンパクトカーを愛車にしている。

 特技は散髪だ。鏡に向かって2本のはさみを使い分け、器用に自分のヘアスタイルを整える。「なかなか(理容師に)意思が伝わらないので、自分で切ってみたら、割とうまくできて。もう15年くらい。節約もできるし、一石二鳥。だんだん技術も上がってくる」と言う。

 唯一のぜいたく!? はすし店通い。とは言っても皿が回るタイプの店だ。「回転ずしに毎日、昼夕2回、休みの間は必ず行く。お茶を飲んで、ゆっくりと過ごす。喫茶店が好きな人っているでしょう、毎日同じ時間に行ってコーヒーを飲んで、新聞を読んで。それと似ている」と、まれな趣味を解説する。レーサーの体重には規定があり、男子の最低体重は51キロで軽い方が有利。減量が命題だけに1回で5皿も食べないが、大好物のガリは別腹だ。「箱ごとお代わりする。ガリの個人消費量は間違いなく世界一の自信があります!」。周囲には倹約家というキャラ設定にされているのだが、「我慢しているわけではないし。ネットでモノが安く買えた、100円の回転ずしでうまくて最高って喜べるから自分は幸せ。いい性格だなと思う」と屈託なく笑った。

 そんな守田は4年前、ボートレース最高格付けのSG競走、優勝賞金3500万円のダービーで予選1位の快進撃を見せた。優勝戦は優勝に最も近い1号艇で1番人気。「千載一遇のチャンス。生まれてから一番緊張した。しんどかった」と当時の心境を語ったが、重圧をはねのけてSG初優勝。東日本大震災の時、母にだけ伝えた『SGを勝ったら寄付する』という思いを実行する時が来た。(佐々木伸)

 ◆守田俊介(もりた・しゅんすけ)1975年8月12日生まれ、43歳。京都府宇治市出身。久御山高を中退し、94年5月、ボートレーサーとしてデビュー。G1は優勝4回。最高格付けのSGは、15年と18年のダービーで優勝している。昨年の獲得賞金は8625万4300円。171センチ、血液型A。

 ◆ボートレースのSGとは 競走全体の位置付けを体系化するため、レースの格付け(グレード制)を1988年より導入。上からSG、G1、G2、G3、一般競走の5段階に分かれており、上位のグレードほど賞金が高い。最高格付けのSGは1年に8大会あり、競馬のG1に相当する。SGは基本的に出場選手が52人。6日間の開催。予選4日間、5日目に準優勝戦、最終日に優勝戦が行われる。守田が優勝した「SGダービー」は優勝賞金3500万円。年間NO1を決める「SGグランプリ」は優勝賞金1億円。

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