優勝賞金3500万円を全額寄付したボートレーサー守田俊介〈5〉「普通の当たり前が幸せ」

スポーツ報知
優勝賞金3500万円を寄付する守田俊介(中央)は、日本財団・笹川陽平会長(左)と選手会・上滝和則(右)と記念撮影(写真提供日本財団)

 2015年11月13日、報知新聞で「優勝賞金3500万円全額寄付」が伝えられた。同日に競走会が、日本財団「ROADプロジェクト 東日本大震災支援基金」への全額寄付を発表した。選手会の上滝和則会長からすぐに電話があった。「ジョーさん(上滝)からは『ありがとう。有効に使わせてもらうから、無駄にはしないから』って。笹川陽平(日本財団)会長には、直接お礼をと言われて東京に呼ばれました」。寄付金は、主に『福島県立ふたば未来学園高の新校舎内地域協働スペースの整備』に活用された。寄付した当時、守田が発した言葉、守田を扱った記事はとても少ない。「経緯とかを聞かれるのが嫌で、その時は取材を受けなかった」と漏らした。

 昨年10月に2度目のSG優勝を果たし、ボートレース最高峰の大会「SGグランプリ」に出場したトップレーサーの守田は言う。「アルバイトも続かなかったヘタレ。社会に出てまともに仕事ができたかどうか。自信も根性もないし。たまたまボートと巡り合って、いろんな人の協力があって選手にしてもらえた。努力もあるだろうけど、たまたま能力があって、A1級でSGに出られて、こんな幸せな仕事に就かせてもらっている。大きいレースをたまたまでも何でも勝たせてもらって、経験させてもらったことだけで、十分宝くじが当たった以上の幸運だな、幸せだなと思う」

 競技者としては充実感がありながらも、震災発生後の行動が今でも負い目になっている。軽い気持ちで被災地に行ってしまった自分、何も出来ずに逃げ帰った自分を許せずにいる。「寄付をして自責の念を払拭できた感じはあるけど…、いまだに被災地での体験が僕の心の中に傷として残っている。今後は未定だけど、何かできるんだったら…、という思いはある」

 オフの日は好きなテレビを見て、ラジオを聴き、大好きな回転ずしに足を運ぶ日々を送っている。「刺激的な毎日ではなくとも、普通に生活できることが一番。おいしいモノを食べておいしい、テレビを見て楽しい、出掛けて楽しいって言える、普通の当たり前が幸せだと震災後にすごく実感した。仕事で悔しいこともいっぱいあるけど、楽しいこともある。元気に楽しく暮らせることに感謝しています」=おわり=(この項は佐々木伸、藤原邦充が担当しました)

 ◆ボートレースの売上金は ボートレースの平成30年次(1月1日~12月31日)の売り上げは1兆3236億5751万5600円。前年よりも9・7%増加した。売上金のうち、舟券の的中払戻金に75%が充てられる。レースを主催する全国の地方自治体(施行者)が残りの25%を分配し、日本財団への交付金約2・8%、日本モーターボート競走会への交付金約1・3%、地方公共団体金融機構への納付金約0・2%。開催経費(運営の管理費、人件費、施設費、選手への賞金など)は実費で、残額が施行者収益となる。

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