【スポーツを読む】「競輪文化『働く者のスポーツ』の社会史」

スポーツ報知
「競輪文化『働く者のスポーツ』の社会史」

 ◆「競輪文化『働く者のスポーツ』の社会史」(古川岳志・著、青弓社、2000円+税)

 「ケイリン」としてオリンピック種目にも採用されている日本発祥の自転車競技・競輪の歴史について、「力道山と日本人」(同社)の共著書があるスポーツ社会学を研究している大阪大学非常勤講師がまとめた。

 競輪は、戦後日本で公営ギャンブルとして誕生し、ファンの熱狂と度重なる廃止論のなか、独特な発展を遂げてきた。選手とファンの関係、公的な運営組織と選手、競輪場と地域社会、競輪界とスポーツ界、さまざまな切り口から、プロスポーツとして出発した競輪の戦後から現在までの歩みとドラマを活写している。

 序文で筆者は30年近く前の競輪との出会いについて書いている。阪急ブレーブスのホームグラウンドだった西宮球場内に仮説の競走路を組み立てて開催されていた特殊な競輪場だった。「そのスピード、ときに身体をぶつけ合う激しい攻防、位置取りをめぐる複雑な駆け引きなど、レースは面白い要素にあふれていた。観客の雰囲気は通常のスポーツ観戦のイメージとはかけ離れていたが、競技自体はスポーツそのものだった」という。

 「ギャンブルとスポーツの境界線上で」との章もある通り、「スポーツはプラス、ギャンブルはマイナス」という社会的評価についても深く斬り込んでいる。日韓対抗戦、ガールズケイリンの発展、そして東京五輪へと未来を占う競輪愛が詰まった一冊だ。

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